国会質疑

民法改正案質疑

2016年5月31日(水)

  • 法務委員会2
  • 法務委員会1

法務委員会が開催され、民法の一部を改正する法律案について質疑を行いました。

まず、本改正案は、女性に係る再婚禁止期間を前婚の解消又は取消しの日から6か月と定める民法の規定、いわゆる再婚禁止規定のうち、100日を超える部分は憲法違反であるとの最高裁判決が昨年12月16日にあったことを受け、当該期間を100日に改める等の措置を講じようとするものであることを述べました。そして最高裁判決は、その判決理由の中で、我が国においては社会状況及び経済状況の変化に伴い婚姻及び家族の実態が変化し、特に平成期に入った後においては、晩婚化が進む一方で離婚件数及び再婚件数が増加するなど、再婚をすることについての制約をできる限り少なくするという要請が高まっているという実情を認めることができると指摘したことに触れつつ、厚生労働省の統計では、婚姻件数は昭和40年代をピークに減少傾向にあり、平成26年度は戦後最少の年間64万3749組でしたが、再婚件数は昭和40年代からはおおむね増加傾向にあり、全婚姻件数に占める夫婦とも再婚又はどちらか一方が再婚の場合は、昭和40年に11.2%であったのが、平成26年には26.4%まで増えたことを述べました。

その上で、女性に係る再婚禁止規定の違憲部分を可及的速やかに解消するために、今回の改正法案が提出されたわけですが、こうした状況に至った背景について、法務省としてどのように捉えているのかについて伺いました。

法務省からは、御指摘のとおり、最高裁判所は、昨年12月16日、女性について6か月の再婚禁止期間を定める民法第733条について、100日を超える部分については嫡出推定の重複を回避するために必要であるとは言えず、憲法第14条第1項及び第24条第2項に違反するとの判断を示しており、本改正法案は、この最高裁判所大法廷の違憲判決を受け、可及的速やかに違憲状態を解消するために女性の再婚禁止期間に関する民法の規定を改正し、その期間を100日に短縮することなどを内容とするものである。これまでの経緯については、再婚禁止期間の短縮に関し、法制審議会が平成8年2月に、本改正法案と同様に女性の再婚禁止期間を100日に短縮することのほか、選択的夫婦別氏制度を導入することなどを内容とした民法の一部を改正する法律案要綱を答申しており、法務省は、平成8年と平成22年に法案の提出に向け、法制審議会の答申を踏まえた改正法案を準備したものの、この答申の内容については国民の間に様々な意見があったことから、改正法案の提出までには至らなかった。このような経緯を経た上で、今回、最高裁判所の違憲判決が出されたことを受けて本法案の提出に至ったものであるとの御答弁をいただきました。

次に、再婚禁止規定が適用される場面は例外が多く、かつ、国連の女子差別撤廃委員会や自由権規約委員会から、再婚女性に対する差別規定があるとして再三、再婚禁止規定の廃止を求める勧告が出されていることに触れ、本法案によって実際に規定が適用される女性が限られるにもかかわらず、国連の各人権委員会から撤廃が求められている再婚禁止規定を残しておく必要性につき、どのようにお考えなのかについて伺いました。

岩城大臣からは、本法案に基づく改正が行われた場合には、再婚を禁止される場面が現行法よりも限定されること、また、我が国が国際人権諸条約に基づき国連に設置された女子差別撤廃委員会等から、再婚禁止期間そのものを廃止するよう勧告を受けていることは、いずれも御指摘のとおりであるが、民法が女性について再婚禁止期間を設けている趣旨は、嫡出推定の重複を回避することにより、法律上の父子関係、父と子の関係を早期に確定し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにある。再婚禁止期間の規定を削除した場合には嫡出推定の重複が生じ、DNA鑑定等の手段を取らない限り、法律上の父親が定まらず、父子関係を早期に確定することができない事態が生じ得ることとなり、子の利益を害するおそれがある。再婚禁止期間の規定の適用場面が現行法よりも少なくなるとしても、子の利益を第一に考える観点から、このような事態を避ける必要性はなお存するものと考えられる。また、本法案では、民法第733条第2項を改正し、同条第1項が適用されない場合を文理上も明確にすることとしており、女性の再婚の自由をできる限り尊重していることから、嫡出推定の重複を回避するために100日間の再婚禁止期間を設けることは合理的なものであると認識しており、国連の各委員会に対しては、今後も、このような我が国の立場や状況について十分な説明をし、理解が得られるよう適切に対応してまいりたいと考えているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、最高裁判決では、100日間の再婚禁止規定については合理性が認められると判示していますが、一方で、裁判官の個別意見の中には、実際に再婚禁止規定が適用される場面が極めて例外的であるのに、民法第733条第1項は前婚の解消等をした全ての女性に対して一律に再婚禁止期間を設けているようにも読め、実際には適用除外が認められる場合が多く存在するという、この規定の解釈等をめぐる状況を一般国民の皆さんが的確に知ることは困難であるとして、この再婚禁止規定が違憲であると主張するものがあったことについて触れました。そして 本改正案は、衆議院において、法施行後3年を目途として再婚禁止に係る制度の在り方について検討を加えるものとする規定を追加する修正がされていることから、法務省においては、男女平等の観点からも、制度の在り方に関する検討が今後行われることをお願い申し上げました。

次に、最高裁判決における裁判官の個別意見では、実際に再婚禁止規定が適用される場合が極めて限定されることとなっても、一般国民の皆さんがそれを的確に理解したりすることができずに、再婚を考えている方に混乱を生じさせるのではないか、また、婚姻届の提出の場面では、戸籍事務管掌者が形式的権限しか有していないため、適用除外事由の証明が不十分などの理由で、婚姻届が受理されない場合も起こり得るのではないかとの指摘がなされていることに触れ、本改正案の第733条第2項の再婚禁止規定の適用除外に係る規定について、国民に対しその趣旨を周知徹底する必要があると思われることから、これがどのように行われるのか、また、戸籍窓口事務における対応の準備状況は、現在どのようになっているのかについて伺いました。

法務省からは、今回の法改正で第733条第2項について新しい条項も含まれることになるので、この点については、日本医師会などの関係機関と協議し、民事局長通達によって、医師の証明書が必要となるので、その証明書について一定の様式及び戸籍窓口での取扱いを定めることを予定している。広報に関しては、今回の改正後の第733条第2項に関する戸籍事務の取扱いについて、改正法の施行時に法務省ホームページにより広く国民一般への周知を行うことを予定している。また、事前に法務局を通じて、戸籍の窓口である市区町村にも情報提供を行っているほか、医師の証明書が必要になるので、日本医師会などの関係機関に対しても情報提供及び各医師への周知の依頼を行っており、改正法施行後、直ちに混乱なく改正法に基づく取扱いが行われるように配意をしているところであるとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、本改正案は、特に再婚を考えている女性にとって大きな影響を及ぼすものであるので、その点をしっかりと踏まえながら、是非とも、広く国民の皆さんへの周知徹底を図るとともに、戸籍窓口で誤った対応がなされることがないよう、事務を担当される方への周知等も含めて適正に行っていただきたい旨を述べました。

次に、本改正案の第746条は、第733条の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して100日を経過し、又は女性が再婚後に出産したときは、その取消しを請求することができないことを規定していることに触れ、その前段は、再婚禁止期間を100日間に短縮する改正点に合わせ、再婚禁止規定に違反した婚姻の取消し権の消滅期間を100日間に短縮するものであると承知している旨を述べました。そこで、例えば、懐胎している又は懐胎している可能性がある女性が再婚禁止期間内に再婚し、100日が経過して婚姻の取消し権が消滅した後に出産し、その出産時期が嫡出推定の重複期間内であった場合、生まれた子の父性推定はどのようになるのかについて伺いました。

法務省からは、女性が再婚禁止期間内に婚姻の届出をし、これが誤って受理されてしまった場合には、女性が前婚の解消から300日以内で、かつ再婚後200日を経過した後に子を出産するということが生じ得るわけであるが、この場合、出産した子については嫡出推定が重複し、前の夫の子とも再婚後の夫の子とも推定がされて、子の父が当然には定まらないことになる。そこで、このように嫡出推定が重複する場合には、民法第773条が規定している父を定めることを目的とする訴えの手続、最終的には裁判の手続によって裁判所が子の父を確定するということになるとの御答弁をいただきました。

次に、本改正案が成立した場合、平成8年に法制審議会が答申した民法の一部を改正する法律案要綱にも掲げられていた、再婚禁止期間の100日間の短縮がようやく実現することとなりますが、離婚の増加等により母子家庭が増えると言われている中で、離婚した父親から養育費が払われていないことが多く、最近、子供の貧困の大きな原因の1つとなっているという指摘がなされており、また、離婚後の面会交流に関する調停申立て件数なども増加していることに触れました。そして平成23年には、協議上の離婚の際に面会交流や子の監護に要する費用の分担等の明記について、民法第766条関係の改正がなされておりますが、報道等によると、まだこの問題の解決には至っていないと思われること述べた上で、離婚後の養育費の支払や面会交流の取決めに実効性を持たせるような在り方について、どのような現状認識をお持ちでいらっしゃるのか、また、今後の法改正の必要性の有無を含めて伺いました。

岩城大臣からは、夫婦が離婚をする場合に、子を監護していない親が子の監護、教育に必要な養育費を継続的に支払うことや子との面会交流を行うことは、その子の利益を図る観点から大変重要なことであると認識している。離婚後における養育費の支払と面会交流を実現するためには、まずは夫婦間でその内容が適切に取り決められることが重要であるものと認識しており、また、子の利益を図る観点からは養育費の支払や面会交流に関する取決めが任意に履行されることが望ましいが、当事者がこれを任意に履行しない場合には強制執行によらざるを得ないため、強制執行制度が利用しやすいものであることも重要であると認識している。これまで法務省では、平成23年に民法の一部を改正し、離婚の際に父母が協議で定めるべき事項として養育費の分担等を明示し、これにより協議離婚の際に当事者間で養育費の分担の取決めがされるよう促すとともに、これらの事項を取り決める際には、子の利益を最も優先して考慮しなければならない旨を規定上明確にした。また、この改正の趣旨を周知する方法として、離婚届出書の様式改正を行い、届出書に養育費の分担等の取決めの有無をチェックする欄を加え、改正法が施行された平成24年4月からその使用を開始した。さらに、今後の取組について法務省としては、養育費の支払や面会交流の重要性を分かりやすく解説したパンフレット等を作成し、これらの書類を離婚届出書と一緒に当事者に交付すること等によって、養育費の支払や面会交流を任意に実施することを促すとともに、中期的な課題として、養育費に関するものも含め、債務名義を有する債権者等が強制執行の申立てをする準備として、債務者の財産に関する情報をより得やすくするために、財産開示制度等に係る所要の民事執行法の改正を検討することを予定しているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、離婚後の面会交流や養育費の支払をめぐる問題については、現在、超党派による議員連盟において新法作りに向けての検討が行われていることに触れながら、我が国における離婚の件数が増加していく中で、大人の都合で子供の利益が置き去りになり、貧困に追い込まれていくような状況は決してあってはならないと考えるので、法務省におかれても、我が国における家族をめぐる状況の変化に合わせた家族法の改正、また、特に子の最善の利益に資するという観点からの法の見直し等についても、是非とも検討いただきたい旨を述べ、質疑を終えました。


総合法律支援法改正案質疑

2016年5月26日(水)

  • 法務委員会2
  • 法務委員会1

法務委員会が開催され、総合法律支援法の一部を改正する法律案について質疑を行いました。

冒頭、熊本、大分を中心に発災した地震で犠牲となられました方々及び御遺族の皆様へ心よりお悔やみを申し上げるとともに、今もなお避難生活を余儀なくされている皆様方へ心よりお見舞いを申し上げました。

その後、質疑に入り、まず、総合法律支援法は平成16年6月に成立し、これに基づいて法務省所管の公的な法人として日本司法支援センター、法テラスが平成18年4月に設立され、これまでの間、民事、刑事を問わず、国民の皆様が全国において法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられる社会の実現を目指すことを基本理念として、経済的に余裕のない方が法的トラブルに遭った際に無料法律相談や、必要に応じて弁護士、司法書士費用などの立替えを行う民事法律扶助業務や、そのほかにも犯罪被害者支援業務や司法過疎対策業務等を推進してきたことに対し、心からの敬意を表しました。

その上で、今回の法改正の趣旨は、法的援助を要する方の多様化に、より的確に対応するため、法テラスの業務につき、認知機能が不十分な高齢者や障害者、そして大規模な災害の被災者の方々に対する法律相談援助の充実等を図る等の措置を講ずる必要性にあることに触れつつ、改正法案が提出された背景及び法案成立の際に、今般の熊本・大分での地震はその対象となるのかについて伺いました。

法務省からは、これまで想定していた、資力に乏しいという経済的な司法アクセス障害だけでは賄い切れない新たな障害を抱える方々の存在が認識されるようになり、それらの方々に対し、必要な法的支援を提供するための施策を講ずることが強く求められているということが本改正法案提出の背景である。大規模災害の被災者に対する法律相談援助制度については、東日本大震災の経験を踏まえ、来るべき大規模災害に備えるために新設するものであり、大規模災害の被災者は、多重的に法律問題を抱えてしまうにもかかわらず、被災者自身が資産を失い、しかも行政的な援助を受けることも難しいといった状況に置かれることから、こうした被災者の司法アクセスを確保することにより、被災者の被害回復や生活再建のより早期の実現を図る必要があるところ、現行の法テラスの民事法律扶助制度では、資力に乏しい方を対象としている関係で資力審査が必要になるが、避難所などで生活する被災者に対して資力を確認しようとすることは実際上極めて困難であり、被災者に対して大きな精神的負担を負わせることにもなりかねない。そこで、今回の改正法案では、大規模災害の被災者について、事前事後の資力審査をいずれも不要とし、無料で法律相談援助を実施できるようにしようとするものである。熊本地震については、この法案が対象としている災害が著しく異常かつ激甚な非常災害であって、その被災地において法律相談を円滑に実施することが特に必要と認められるものであるので、人的被害や物的被害の程度、範囲、そうした罹災状況が甚大で地域全体の日常生活が破壊された状態になるような災害という、この想定した災害に当たるかどうかを考えることになるが、熊本地震では、既に熊本県を中心に1700人を超える方が死傷し、1か月以上を経過した現時点においても、1万人近くの方が避難所での避難生活を継続しておられる上、7万棟を超える住宅が損壊したほか、依然として交通が広範囲にわたって途絶し、一部の自治体では庁舎外に機能を移転するような厳しい状況にあるものと認識しており、これらのことから、熊本地震はこの改正法案が規定する災害に該当し得るものと考えているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、本改正案が成立、施行される際においては、熊本地震で被災された方々にとって多くの法律問題が同時発生することが見込まれる中で、無料法律相談を受けるに当たっての事前の資力審査が困難となるであろうということを踏まえながら、復旧復興の迅速化のため、法律相談の窓口を広げることが強く求められていることからも、被災された方々に寄り添う形での、資力を問わない無料法律相談が着実に実施されていくことをお願いする旨を述べました。

次に、本改正案の施行日については、附則第1項において、「この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」とされており、施行までの準備期間を長く確保する形となっていますが、改正法施行までに準備期間を必要とした理由及び、被災された方々に対する支援の充実という観点からも、大規模災害の被災者に対する法的支援制度について、1日も早い施行が望まれると思われることから、今後の見通しについて、併せて岩城大臣に伺いました。

岩城大臣からは、改正法案の規定により新たな業務を実施するに当たっては、法テラスにおいて関係機関と調整、協議の上、担い手となる弁護士等の確保、業務システムの整備、職員の研修等の準備が必要となるため、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日を施行期日としている。もっとも、この法案のうち大規模災害の被災者に対する無料法律相談に関する部分については、他の部分に先行して施行することも可能と考えており、法案が成立した場合には、熊本地震の被災者を始めとする大規模災害の被災者が、可能な限り早く法テラスの無料法律相談を利用できるよう、その部分を先行して施行するための作業を、法テラスとともに早急に進めてまいりたいとの御答弁をいただきました。

次に、平成24年に実施された東日本大震災の被災者等への法的支援に関するニーズ調査におけるアンケート調査結果を見ると、法テラスの認知度は41%にとどまり、特に高齢者のみの世帯では27.6%であったことについて触れました。そして今般の熊本地震では、今後様々な法律問題に直面する方々が増えていくということが見込まれることから、熊本地震が法的支援制度の対象となる大規模災害に指定された場合、被災者に対する支援制度の存在をいかに周知していくのかが重要な課題となると考えられることから、東日本大震災の被災者の方々への法テラスの周知について、法務省としてどのように分析をされたのか、今後の具体的な取組と併せて伺いました。

法務省からは、熊本地震に本改正法案により創設される無料法律相談制度が適用されることとなった場合、その被災者の方々に対する周知、広報が重要な課題となると考えている。東日本大震災の際の取組については、被災者の方々への法テラスの広報、周知のために、テレビCMを東北6県において放送したり、また、大幅な紙面を取った新聞広告を全国紙に掲載するなどしたほか、ラジオ、インターネットなどの様々な媒体を利用した広告を行ったところである。また、法テラスの職員による仮設住宅へのチラシの配布、被災自治体の広報誌への記事やコラムの掲載、東日本大震災被災者支援シンポジウムの開催といった様々な取組を実施してきたものと承知しており、これらは被災者に対する法テラスの認知度の向上にも一定の成果を上げたものと考えている。熊本地震についても、改正法案による新制度が適用された場合には、その周知のために、東日本大震災の際における各取組も参考にしながら、各種の広告あるいはチラシの配布によって周知、広報していく取組を積極的に進めていくことになるものと考えているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、東日本大震災の教訓を生かしながら、いつどこで発生するか分からない大規模災害への備えの1つとして、平時から法テラスの存在やその業務内容を十分に周知していただき、今回の改正法により指定される大規模災害の被災者の方々が、必要とする法律相談を受けやすい体制を構築していただくようお願いしました。

次に、今回提案されている法改正がなされると、法テラスの業務の範囲が拡大され、その果たすべき役割はますます重要になってくることになることから、先ほどは大規模災害の被災者の方々に関して取り上げましたが、こうした方々を含め、法テラスを利用する側である国民の皆様の間において、法テラスに対する認知度は十分であるのかという問題が残っていることを指摘しました。そして法テラスでは、国民の法テラスの認知状況を把握し、今後の広報活動や各業務遂行上の参考とするために、認知状況等調査を実施していますが、平成26年度版の法テラス白書を見てみると、調査対象者全体における認知度、すなわち法テラスを全く知らない以外の回答をした人の割合は、平成22年度の調査では38.7%でしたが、平成26年度の調査では55.8%となっています。

そこで、平成25年11月5日の本委員会において法テラスに関する質疑が行われた際に、当時の谷垣法務大臣は、法テラスの認知度がまだ十分ではなく、これを更に上げていくよう努力していかなければならないと思っている旨の御答弁をされていらっしゃいましたが、このことに関して、岩城大臣はどのように認識されているのかについて伺いました。

岩城大臣からは、近年認知度が向上してきているとは思っているが、まだまだ十分ではないと考えており、法テラスの名前を御存じの方はある程度いらっしゃっても、そのサービスの内容までというと、これは御存じでない方が多いのではないかと思っている。法的な救済が必要な国民の方々に法テラスを積極的に利用していただくためには、引き続きその存在を広く周知するとともに、業務内容について理解を深めていただくような広報に努めるなど、認知度を上げる取組を更に進めていく必要があると考えているとの御答弁をいただきました。

次に、法テラスの業務内容についての認知度の状況を見てみると、平成26年度においては、法テラスがどのようなサービスを提供しているのか知っていると回答した方は8.1%にとどまっていることを指摘した上で、今回の法改正の機会を捉え、国民の法テラスの業務内容についての理解を更に深めていくということが必要であると考えることから、今後の具体的な取組について伺いました。

法務省からは、法テラスがその役割を十分に発揮するためには、法テラスそのものの存在を知っていただくだけではなく、利用者である国民の方々にその業務内容を理解していただく必要があり、今回の改正はそのための好機でもあろうと考えている。これまで法テラスでは、その業務内容について国民の方々に理解を深めていただくため、インターネットや広報誌、政府公報などを通じてその業務内容や法テラスを利用する際の流れを周知してきており、裁判所や地方公共団体といった関係機関、団体の職員の方に法テラスの業務を理解してもらい、そうした機関の窓口に訪れた方のうち、法的支援が必要な方には法テラスを紹介してもらうということを促すために、法テラスの各地方事務所において、関係機関、団体の職員の参集を得て地方協議会を実施するなどの取組を進めている。こうした、これまでの取組を着実に進めるとともに、それだけではなく業務内容について理解を深めていただくためには、広報に当たってどのような工夫をしていくことが考えられるか、どのようにしていくべきか、そうしたことについても、法テラスとともにしっかりと検討してまいりたいとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、年代別の認知度について見てみると、20代から50代までの認知度に比べ、60歳代以上の認知度が非常に低いという状況にあることから、性別、年代別の法テラスに対する認知度の違いを踏まえながら、その向上に向けてきめ細やかな対応を図っていっていただきたい旨を述べました。

次に、今回の改正案では、高齢者や障害者で認知機能が十分でないために自己の権利の実現が妨げられているおそれがあって、近隣に居住する親族がいないこと等の理由により、弁護士等のサービス提供を自発的に求めることが期待できない方に対し、資力を問わない、すなわち事前の資力審査を行わない形での法律相談を行う旨の規定が設けられており、これは、高齢者や障害者の方には、心身の状況等により従来の法律相談場所における相談を受けることが困難であったり、認知症や知的障害等により判断能力が十分でない等の事情から、自身が法的問題を抱えていることの認識が不十分であったり、法的問題を抱えているとの認識があっても法的サービスを受けなければならないとの認識が不十分であるなど、自ら法律専門家にアクセスしてくることが期待できないという場合が多いということから、これに対応するものであることに触れました。その上で、高齢者、障害者で認知機能が十分でない方が法テラスにおいて行われる法律相談を受けるに至るまでのプロセスについて、法務省としてどのようにイメージされているのかについて伺いました。

法務省からは、具体的な流れについて、法テラスと連携している福祉機関の関係者が、その担当する高齢者、障害者の中に法的問題を抱えていることをうかがわせる事情があるにもかかわらず、認知機能が十分でないために、それが問題であることにそもそも気付いていない、あるいはどうしたらよいか分からないでいるといった方がいる場合に、法テラスに連絡をしてもらい、これを端緒に弁護士の側が働きかけて法律相談を行うという流れを考えているところである。したがって、この新設制度について、福祉機関等の関係者にも十分御理解いただいた上で、援助が必要な方がいた場合には、直ちに法テラスに連絡をいただけるよう、福祉機関等との密接な連携を構築することが極めて重要であると考えているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、やはり福祉機関との連携が非常に重要であると思うので、そこをしっかりと推し進めていただきたいということをお願い申し上げ、他にも質問通告させていただいておりましたが、時間となったので、今回の質疑を終えました。


裁判所職員定員法改正案質疑

2016年5月24日(水)

  • 法務委員会2
  • 法務委員会1

法務委員会が開催され、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について質疑を行いました。

まず、今回の改正の背景について、最高裁が、民事訴訟事件が複雑困難化傾向にあり、それらの事件について合理的な期間内で説得力のある質の高い判断を安定的に示していくために、知識、経験の異なる3人の裁判官による多角的な検討により紛争の実態を把握したり、あるいは膨大な証拠、主張の分析や判例等の法的調査を実施することが必要となることから、裁判官を増員して合議体による審理の充実強化を図るということが求められていると説明していることについて触れました。

また、合議率の向上については、司法制度改革審議会における議論の頃から必要性が指摘されてきましたが、最高裁による、平成13年当時の司法制度改革審議会でのプレゼンテーションにおいて、合議率を10%程度に高める等の目標が示され、そのために必要な裁判官の増員の在り方についての報告がなされ、それに沿って、平成14年度から平成23年度の10年間に計約450人、加えて、裁判員制度の導入に際し、平成17年度からの5年間に計150人、合計約600人の裁判官の増員が行われ、さらに、平成24年度から平成27年度までの4年間で判事126人の増員が図られてきましたが、その間の地裁の民事及び家裁の第一審訴訟事件の合議率の推移を見ると、平成12年時点の4.3%から、平成22年は2.8%、平成27年は4.8%という現状にあることを申し上げました。

そこで、裁判所職員定員法を所管する法務省として、今回の法改正により、裁判所の人的体制整備について、どのように取り組んでいこうとお考えなのか、岩城大臣に伺いました。

岩城大臣からは、 裁判所の体制整備の在り方については、合議体による審理の充実・強化に向け、最高裁判所において適切に検討しているものと考えている。法の支配の下で自由かつ公正な社会を実現するためには、司法権を担うことになる裁判所が事件を適正、迅速に処理していくことが必要であり、そのために裁判官を含めた裁判所の人的体制が充実されることは重要であると認識している。これについては、法務省としても、最高裁判所による判断を踏まえ、政府において裁判所職員定員法を所管する立場から、引き続き適切に対応してまいりたいとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、最近では、科学技術の先端的知見を必要とする事件や複雑な金融商品に関する訴訟、国民の権利意識の高揚などを背景とした深刻な意見の対立をはらんだ事件など、民事訴訟事件が複雑困難化の傾向にあるので、それらの事件について適正、迅速な裁判の実現を図るためにも、今後とも合議体による審理の充実強化の必要性が求められると思う旨を述べさせていただきました。

次に、裁判の迅速化に関し、その趣旨、国の責務、その他の基本となる事項を定めることにより、第一審の訴訟手続を始めとする裁判所における手続全体の一層の迅速化を図り、司法制度の実現に資することを目的として、平成15年に裁判の迅速化に関する法律が制定され、最高裁判所は、裁判の迅速化を推進するため必要な事項を明らかにするため、裁判所における手続に要した期間の状況、その長期化の原因その他必要な事項についての調査及び分析を通じ、裁判の迅速化に関わる総合的、客観的かつ多角的な検証を行い、その結果を2年ごとに公表することを第8条1項で規定しており、これに基づき、平成27年7月に最高裁判所による6回目の検証結果が公表されたことに触れました。

そこで、公表された検証結果を受け、これまで進められてきた裁判の迅速化に向けての取組の進捗状況はどのようなものであったのか、また、それを踏まえて今後どのような取組をしていくのかについて、最高裁に伺いました。

最高裁からは、裁判の迅速化に係る検証を平成17年以降、2年ごとに、合計6回にわたり公表しており、平成25年の第5回までの検証では、統計データの分析のほか、民事事件、家事事件を中心に各種ヒアリング調査等の結果を活用した実証的な検証作業を行い、審理の長期化する要因を分析するとともに、長期化要因を解消し、裁判の一層の適正、充実、迅速化を推進するために必要な施策を総合的に検討したほか、紛争や事件の動向に影響を与える社会的要因の分析、検証などを行ってきた。 第6回以降の検証については、第5回までの検証の蓄積を踏まえ、更なる裁判の適正、充実、迅速化を実現するために、統計データの分析を中心としつつ、各地の裁判所及び弁護士会に対する実情調査も交えながら、これらの検証結果のフォローアップを実施することとしたい。第6回の検証結果の概要について、まず民事の関係では、新受事件数は過払い事件等の減少を受けて減少しているが、その過払い事件を除いた新受事件はほぼ横ばいであり、平均審理期間も平成24年の8.9か月から平成26年には9.2か月と若干延びているところである。実情調査の結果によると、民事訴訟事件については、科学技術面の先端的知見や新しい取引形態が問題となる事件を始めとして複雑困難な事件が増加しているという実感が多く聞かれている中で、争点整理手続において、裁判官と当事者双方の口頭での議論を活性化させ、争点整理を充実させつつ迅速に行うような取組、あるいは裁判官3人の合議体による審理を充実させるための取組進められているところである。

一方、家事事件については、主に成年後見等監督処分事件の増加の影響で全体的には増加傾向にあり、また、調停事件の平均審理期間も緩やかに長期化傾向にあるほか、遺産分割事件、婚姻関係事件で手続代理人が関与する事件が増加し、子の監護事件で面会交流など対立が深刻で、解決が容易でない事件が増加している中で、平成25年の家事事件手続法の施行を受け、家庭裁判所においては、法的観点を踏まえた裁判官の調停への関与を一層充実させるような取組が行われているところである。このように、現在は事件の複雑困難化もあって、平均審理期間の短縮という面では十分な成果は出ていないが、適正、迅速な裁判に向け、引き続き取り組んでまいりたいとの御答弁をいただきました。

次に、平成26年3月27日の本委員会における質疑の中で、当時の谷垣法務大臣に対し、裁判の迅速化法の施行状況に関する評価について質問した際、谷垣大臣からは、「裁判の迅速化という目標は大分進んできた、民事裁判の迅速化という目標は大分進んできたなと思っている」旨の御答弁をいただいたことに触れつつ、今回の最高裁による6回目の検証結果を見ましても、裁判の迅速化に関する法律の掲げる目標はおおむね達成したという見方もあるように思われますが、岩城大臣におかれましてはどのような評価をされていらっしゃるのか、また、今後も引き続き最高裁による検証報告が必要とお考えになるのかについて伺いました。

岩城大臣からは、昨年7月に最高裁判所により公表された裁判の迅速化に係る検証に関する報告書によると、民事訴訟事件については、平成26年度には、平均審理期間は8.5か月となっており、約60%の事件が6か月以内に、約94.2%の事件が2年以内に終局し、審理期間が2年を超える事件は約5%程度にとどまっている。また、刑事訴訟事件については、平均審理期間は近年おおむね3か月程度の横ばいで推移しており、平成26年度において、約99.8%の事件が2年以内に終局し、2年を超える事件は約0.2%程度にとどまっており、迅速化法が定める目標は、裁判所の努力によりおおむね達成されつつあるものの、一部の事件については終局までに2年を超える事件があるほか、2年以内に終局しているものの、より短い期間内に終局させるべき事件もあるものと考えている。最高裁判所による迅速化に係る検証は裁判の迅速化を推進するために必要な事項を明らかにするために行われるものであり、まず公正かつ適正で充実した手続の下で裁判がより迅速に行われることについての国民の要請、期待に応える司法制度を実現する上で大きな意義を有するほか、法務省を含む関係諸機関において、その検証結果を踏まえ、必要に応じて様々な検討や取組が行われ、裁判の適正、充実を前提としつつ、より一層の迅速化が図られていく上でも重要であると考えており、このような最高裁判所による迅速化に係る検証の存在意義に照らすと、迅速化法に基づく最高裁判所による検証は引き続き実施されることが有益であり、今後とも行われることが望まれるものと考えているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、今後とも、検証の適正な実施及び、その結果を裁判の迅速化の促進に向けて反映していただくことを心より期待する旨を申し上げ、質疑を終えました。


アフリカ開発の今日的課題、日本及びTICADプロセスに期待される役割に関する参考人質疑

2016年5月11日(月)

  • 政府開発援助等に関する特別委員会2
  • 政府開発援助等に関する特別委員会1

政府開発援助等に関する特別委員会が開催され、アフリカ開発の今日的課題、日本及びアフリカ開発会議(TICAD)プロセスに期待される役割に関し、公務御多忙のところ出席いただきました、駐日ケニア共和国特命全権大使のソロモン・カランジャ・マイナ閣下及び、駐日エリトリア国特命全権大使のエスティファノス・アフォワキ・ハイレ閣下に質問いたしました。

まず冒頭に両大使より、御意見をお述べいただきました。

マイナ大使からの御意見の概略は、次のとおりです。

アフリカに対する日本の援助は、無償資金協力、円借款、そして、技術協力という3つのカテゴリーによってなされており、アフリカにおける画期的なプロジェクトは、まさに日本のODAを通じて実現できている。その日本のODAの特徴であるが、成長を重視した開発コンセプトを使っており、まず要請があって、そのアプローチがされるということであり、援助と民間投資をリンクするモデルである。そして円借款を使い、インフラ、人的資源の開発に力を入れるとともに、自助努力を重要視しているという援助であると思う。

様々な分野における日本のプロジェクトの強み、長所は、受入れ国のリクエストを重視し、その国のオーナーシップを尊重し、ニーズに応えようというアプローチということであり、効率が高く、永続的であって、オペレーションもうまくいっているとともに、メンテナンスの能力をも備え、包摂的であるということである。そして、その地元の人々の福祉、経済を高めるべくされているということであり、農村部、都市部でのバランスが取れており、持続可能性ということで環境との調和がある。

そして、TICADは、1993年のスタート以来、アフリカに対するの日本の関与の主流となっており、パートナーシップを打ち立てるとともに、多角的で、非常にオープンで包摂的であり、アフリカの開発アジェンダに新しい側面をもたらしたということで重要であると考えており、インフラ、農業、人的資源の開発、医療、貧困の削減といった、様々な分野でアフリカの開発に資するものであり、大きな影響を与えている。それから、大事な点は、アフリカのオーナーシップ、国際社会のパートナーシップということが重要な点となっており、包括的な経済成長がTICADによってなされている。

ナイロビで初めてTICADⅥが開催されるが、これはまさにTICADプロセスの成功の証であり、TICADは、アフリカの開発のイニシアティブはアフリカの手で、オーナーシップを持って、そして世界は、グローバルなパートナーシップでそれを支えるという、TICADの精神の実現の証でもあると思っている。

アフリカの開発トレンドは変わってきている。そういった意味で3つの点を申し上げると、まず、堅牢な、持続可能な経済を目指し、そこでは民間の開発を中心にして、天然資源、人的資源の開発をしたいと思う。2つ目が、包摂的で、回復力のある力強い社会ということであり、経済主体としては農家がその主流であるということで、そこにおいて持続可能な力強い社会の成長を目指していきたいと思っており、包摂的な社会ということで、教育、ジェンダー、医療、水、衛生に力を入れていきたいと思う。それから、平和、安定、民主主義、優れたガバナンス、テロや海賊行為の撲滅というものが必要であるといった意味で、アフリカのイニシアティブを是非サポートしていただきたいと思う。

また、より戦略的なパートナーシップということで申し上げると、日本のODA、そしてTICADプロセスは、アフリカの経済展望を明るくすることに大きく役立っており、過去の成功の上に、更に様々な努力を構築していこうということで、まさにアフリカと日本のウイン・ウイン・パートナーシップを更に強化する必要があると思う。そして、対話によって新しい領域を協議し、台頭しつつある脅威にも取り組む必要がある。例えば、アフリカの過激主義、ボコ・ハラム、これは西アフリカ、あるいはアフリカの角のアルシャバーブの活動や、感染症のような健康に対する脅威、災害によるリスクについても取り組んでいく必要があろうと思う。

TICADの今後目指す方向は、アフリカの開発アジェンダ2063やSDGsアジェンダ2030と足並みをそろえ、整合性のあるものでなければならず、パートナーシッププログラムが必要になってくるものと思う。そして、工業化プロセスによって貧困を削減し、労働の生産性を高め、若き人口の力を生かして、彼らがちゃんと収入を得られるような雇用の機会を確保できるようにしていきたい。

そして今後、アフリカの工業発展のために強化されるべき領域ということで、まず第1に、地域の統合が大変重要であると思っている。それから、貿易投資の振興が大事であり、そのために、アフリカの企業が資金調達をできるようにアクセスを拡大するため、日本の企業とパートナーシップを組み、官民の共同をしたい。そして、JBICを中心として、日本とアフリカの、とりわけ中小企業とのパートナーシップが伸びていくことを期待している。また、輸出主導の工業化という環境を整備するため、バイの投資協定を始め、様々な国とそれぞれのニーズに合わせて、この努力を進めていきたい。 また、技術移転そして、人的な資源の開発ということで、改善プログラムや、日本の労働慣行や倫理を広めるとともに、ABEイニシアティブプログラムを拡大して、技術スキルのトレーニングプログラムを広めていきたい。

最後に、アジェンダ2063、SDGs2030にのっとって工業化を進めていきたいと思っており、日本には、他の開発援助委員会の国々が持っていないような強みがあるので、是非それを生かしていただき、必要な技術的協力等をこれからもお願いしたい。

エスティファノス大使からの御意見の概略は、次のとおりです。

日本の冷戦後のグローバルポリシーというのは全方位的なものであり、G7若しくはG8を通して、それからASEANを通して、中国を通し、それからテロとの闘いの展開もされており、日本のエネルギー供給の27%が原子力エネルギーであるということで、アフリカはエネルギー供給という点で、日本に対して重要な役割を果たすことになる。そして、海洋と領土の紛争、北朝鮮、核開発と拉致の問題、インド、韓国それから中央アジア、中東の石油、それから日米同盟、TICAD、それからカンボジア、モザンビーク、ゴラン高原、東ティモール、ハイチ、南スーダンなどにおける平和維持活動や、ジブチにおける海賊対策拠点、それからTPP、それから西アフリカにおけるエボラ大流行への対応などがあった。これらの様々な全方位的な方針、日本のグローバルな戦略に鑑み、アフリカと日本の指導者が意見交換をすることはとても重要だと考える。更に緊密な形で、相互の利益ということを考え、短期的、長期的な視点を持ち、現在の多極化する世界の中で新たに生じる問題に対して、どういった対応が可能なのかということを考えていかなければならない。全方位的な外交を通し、また、その国に特異的な政策を通して、何が対応として可能なのかということを考えなければならない。

TICADⅥがケニア・ナイロビで2016年8月27・28日に開催されることは、アフリカの短期、長期的な開発の戦略をしっかりとフォーカスされたTICADのプロセスに盛り込んでいくチャンスだと考えている。また、これから相互の取組をアフリカと日本の間で取組として続けていく中で、持続可能な、大変重要な制度的なつながりを、日本とアフリカの間で構築する環境づくりができ、それから、地域経済圏、そしてメンバー国がこのようなつながりの直接の便益を得ることができるものと考える。

アフリカは1つという言い方をするが、アフリカには54の国が存在しており、TICADに関して、どのような協力が必要なのかという政策の対話については、常にその国民、その国を中心に据えたものでなければならない。2国間の話合いを通して、経済的、社会的、文化的な日本の輸出の対象とするということが、それぞれの利益にかない、戦略的な利益を日本はアフリカの国から得ることができると考える。

また、日本からのアフリカへのツーリズムという意味でも戦略を考えることができる。スポーツ、音楽、アート、映画、メディア等、様々な領域で、日本の企業、アフリカの企業のビジネスの構築、NPO、NGO、それから市民社会、日本、アフリカの各国において協力関係を築いていくことができる。

日本のODAは、アフリカの国とその国民に手を差し伸べ、自助努力を通した地域の統合を手助けしていかなければならない。また、日本のODAはそれが頓挫するようなものであってはならず、日本のODAはピラミッド的な社会をつくることに寄与してはならない、すなわち、多くの人が取り残されてしまうような社会をつくることに寄与してはならないということである。より包括的な、より広い意味での協調関係がTICADⅥのプロセスを通して実現できると考えており、それによって平和を構築し、統合をすることが可能になる。そして日本は、正直な対話をTICADⅥを通して是非持っていただきたいと思っており、そうでなければ、アフリカが取り残される危険が高まるので、全てのステークホルダーが協力をすることが必要であって、アフリカの地域において競合してはならない。

その後、質疑に入り、次のとおり両大使に質問いたしました。

まず、スポーツの国際大会におけるアフリカ人選手の活躍は、日本人選手や、日本の国民の皆さんにも大変力強い印象を与えている一方で、アフリカの選手が自分の生まれ育った国・地域で競技を続けることが経済的に困難なケースが生じるなど、スポーツを取り巻く環境が依然として厳しいことを認識している旨を述べました。

そのうえで、スポーツは人づくり、国づくりに寄与し、開発を後押しする側面があると言われており、日本においても、1964年の東京オリンピック、そして第13回国際ストークマンデビル競技大会、現在のパラリンピック大会の開催に合わせ、国民の一体感を高めるとともに、高速道路、鉄道などの建設を進め、経済成長にもつなげてきた経験を持っていることについて触れました。

こうした中で、日本政府、外務省では、JICA、国際協力基金との協力の下に、ODAにより、2014年1月に、スポーツ・フォー・トゥモローの第1号案件として、我が国のNPO法人と協力をしながら、安倍総理からコートジボワールの柔道・武道連盟に柔道着100着を手渡すなど、様々な協力を行っていることを踏まえ、スポーツの振興が、国づくりにとって意義のあるとの考え方について、どのように考えていらっしゃるか、また、スポーツの振興を開発につなげていくに当たって、日本のODAはどういった役割を果たすことができるとお考えでおられるのかについて、両大使に伺いました。

マイナ大使からは、スポーツを振興するということは大変意義深いことであって、それが国づくりに資すると思っており、実際、ケニアのスポーツマン、ウーマン、世界のチャンピオンであって、日本に住んでスポーツ競技を行っているケニア人もおり、彼らの活躍がケニアのイメージを高めることになったということで、彼らはまさにケニアの善き親善使節でもあるわけであって、彼らがスポーツで成功すると、ケニアの一体感が強まってきている。そして、スポーツは健康意識を高めることにつながるということから、スポーツを振興することは、その国の健康を更に促進することにつながる。スポーツが振興されると、国がより健康になるということである。健康な国民がたくさんいれば、国の経済発展あるいは、国づくりにもつながると思っているとのお答えをいただきました。

次に、エスティファノス大使からは、国づくりにおいてスポーツは極めて重要な要素であると思っており、TICADのプロセスでも、スポーツが重要な要素であってほしいと思っている。また、せっかくの機会であるので、日本がアフリカのスポーツ、文化とのきずなを深めていただくことをお願いしたい。そして、2020年には東京でオリンピックが開催されるが、これに向かって共に手を握って、アフリカと日本がスポーツ、文化でも協力をし、結び付きを強めていきたいと思う。そして、様々なテクニカルプログラムや協力プログラムがJICAを通じてなされており、こうしたアフリカの国々への支援によって、アフリカの国々が、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで活躍できるようにと思っているとのお答えをいただきました。

両大使からの御意見を受け、これから何よりも、アフリカの子供たちの運動の場が、スポーツを志すきっかけとなる場であったり、スポーツを知る機会、スポーツをするという環境が、今後、アフリカにたくさん増えて、スポーツの開発、発展が進んでいくことを期待し、応援する旨及び、切磋琢磨して、スポーツの発展に両国と日本が深い大きなきずなを結び、より良いスポーツ環境をつくっていけるようにしっかりと頑張ってまいりたいということ、そして、両大使への感謝を申し上げ、質問を終えました。


刑事訴訟法等一部改正案に関する質疑

2016年4月28日(月)

  • 法務委員会4
  • 法務委員会3

法務委員会が開催され、刑事訴訟法等一部改正案に関して質疑を行いました。

まず、4月21日の本委員会における対政府質疑の際に、現状では、被疑者が取調べ室に入るときから録音、録画がされているという状況になるわけで、取調べ官はその運用状況等を把握されていますが、取調べを受ける被疑者は、取調べ室に入るときから録音、録画がされているということを知っているのかということについて触れた旨を述べました。そしてさらに、本法律案の301条の2第4項において、逮捕、勾留中の被疑者を対象事件について取り調べる場合に捜査機関に取調べの録音、録画を義務付けていますが、その際に被疑者に対する告知を義務付ける規定は設けられておらず、このことは、被疑者にその運用等を周知せず、勝手に録音、録画を始めるということにつながりかねないわけであり、その運用状況は被疑者に対して周知徹底すべきと考えられると思う旨を申し述べました。

そこで、取調べの録音、録画を行うことを被疑者に告知して取調べが行われるとすると、録音、録画されていることを被疑者が認識をすることによって、新たな冤罪や虚偽の自白等が減るということも考えられるわけですが、今回の改正法案において、取調べの録音、録画を行う際の、被疑者に対する告知の義務付けに関する規定が盛り込まれなかった理由について伺いました。

法務省からは、本法律案で、被疑者に告知することを義務付けていない理由については、そもそも被疑者の取調べの録音、録画をすることは、被疑者の重要な権利利益の制約を伴うものではなく、被疑者の同意を得なければできない、こういったものではないことから、被疑者の意思を確認する前提としての告知を義務付ける法的必要性に欠けると考えられるからである。

一方で、その義務を課さないとしても、本法律案の録音・録画制度においては、対象事件を明確に法律で定めているので、逮捕、勾留中の被疑者を対象事件について取り調べる場合は、原則として録音、録画が義務付けられているので、被疑者としても取調べが録音、録画されるということは十分想定されるし、また、この点について弁護人の助言というのを当然受けることができる。

一方で、捜査機関の側においても、実際の実務において、被疑者に対しては録音、録画を実施していることを告知しており、これは捜査機関においても録音、録画というのは、任意性等の立証に当たっても証拠となるので、当然、被疑者側が録音、録画がされているということが認識された上で、そのような供述をしているんだというようなことが必要であり、そういうことを立証することが必要となる場合もあるので、捜査機関の側としては適切にその録音、録画を告げるであろうし、また、被疑者の方からも尋ねられれば、当然適切に対応することとなるものと考えられる。

実際に、現在、検察庁においては取調べの録音、録画を実施する場合の要領というのを定めているが、これには、取調べの冒頭から録音、録画を行う場合には、その供述者が取調べ室に入室する時点から録音、録画を開始することとして、録音、録画した取調べの冒頭において、供述者に対して適宜の方法で、録音、録画を開始していることを告知することとするという形で、検察庁の録音、録画は行われているとの御答弁をいただきました。

次に、4月26日の本委員会での参考人質疑において、立命館大学特別招聘教授の浜田参考人より、録音、録画をしているということを被疑者が十分承知した上で取調べを受けることが大原則であり、その上で、全面可視化ではなく一部にとどまるということであれば、それ以前のところで既に犯人として振る舞わざるを得ないという状況に置かれている可能性があり、こうした中で録音、録画をするということは虚偽自白を防ぐという機能を果たさないことになるのではないかと懸念する御意見をいただいたところであり、さらに、浜田参考人からは、過去の事例について触れながら、被疑者が取調べの録音、録画について十分承知した上で取調べを受けるということと、全面可視化がセットになることによって取調べの録音・録画制度が初めて機能するということになるとの御意見もいただきましたし、今後新たな冤罪を生まないようにするためにも、被疑者に対する告知を義務付ける必要があるのではないかと考えますが、改めてこうした意見に対する御所見を伺いました。

岩城大臣からは、取調べの録音、録画を行うと、被疑者がそれを認識しているかどうかにかかわらず、被疑者の供述内容のみならず、その供述の状況、取調べ官の発問やその状況も含め、取調べの状況がありのままに記録される。したがって、仮に取調べ官が被疑者に虚偽の自白を誘発するような不適正な働きかけをし、被疑者がそれに応じて虚偽の自白をしたとすると、その状況も全て録音、録画されることになる。

そして、取調べの録音、録画は被疑者の同意を得なければ実施できないものではないため、被疑者の意思を確認する前提としての告知を行う法的必要性に欠けると考えられることから、告知義務を設けるまでの必要はないと考えている。いずれにしても、録音、録画には、被疑者の供述の任意性等の的確な立証に資する、取調べの適正な実施に資するという有用性があり、真犯人の適正、迅速な処罰とともに誤判の防止にも資するものと考えており、引き続き、これらの有用性を生かせるよう、適切に運用していくことが重要であると考えているとの御答弁をいただきました。

次に、通信傍受法の制定に際して、1998年の第142回国会に提出された法案を見ると、例えば政府を転覆するなど、日本国憲法に基づく基本秩序の破壊を目的として暴動を起こす罪である内乱罪や、外国から我が国に対する武力行使があった際にその国の軍に参加したり協力したりする罪である外患援助罪など、現行法よりはるかに多数の犯罪が対象とされており、また、通信傍受が新たに法制化される制度であったため、その活用に慎重を期して、特に当時、その捜査手法が必要不可欠と考えられた犯罪類型に限定するとの考え方や、通信傍受法の持つ強度の権利侵害性に対する強い批判を受け、1999年の第145回国会の衆議院法務委員会において、通信の傍受を必要最小限度の範囲のものとするために、当時の世の中で一番心配の多い順ということで、薬物犯罪、銃器犯罪、組織的な殺人及び集団密航に絞り込む修正等が行われ、1999年8月に成立し、2000年8月に施行されたという状況に触れました。

そして、今回の改正案では、通信傍受の対象犯罪を薬物犯罪、銃器犯罪、組織的な殺人及び集団密航という現行の通信傍受が規定する4つの犯罪類型から、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものに限るという要件を課した上で、殺傷犯関係、逮捕及び監禁、未成年者略取及び誘拐、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、児童ポルノ関係の罪を追加することとされているわけですが、現行の通信傍受法において、政府原案に対し、その対象となる犯罪を4つの犯罪類型に限定する修正が、当時の与党である、自民党、自由党、公明党によって行われた趣旨に関して、政府としてどのような認識を持っておられるのかについて伺いました。

法務省からは、現行の通信傍受法において、政府原案に対し、当時の与党修正によって対象犯罪が4罪種に限定されたわけであるが、その理由については、この法律案が、憲法の保障する通信の秘密を制約するものであるほか、我が国で初めて行われる通信傍受の法案であることに鑑み、対象犯罪については、平穏な社会生活を守るために通信傍受が捜査手法として必要不可欠と考えられる最小限度の組織的な犯罪に限定することとした、こういった形で当時の審議において説明されているものと承知しているとの御答弁をいただきました。

次に、通信傍受の対象犯罪の拡大については、振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺被害の増大や窃盗団の事件で検挙率が上がらないなどの事情があり、窃盗や詐欺事件は、軽微なものを含めると年間約100万件発生していると言われているわけであり、対象犯罪が拡大されることによって、今後、更に多くの国民が通信傍受の対象となり、捜査機関が犯罪捜査の手段として、携帯電話ですとか固定電話を傍受して会話を聞いたり、また電子メールやファクスなどを傍受することが認められていることから、犯罪と関係のない情報についても傍受されてしまうという心配もあるため、国民のプライバシーが侵害されるのではないかという国民の心配の声も聞かれているほか、特別部会においても、犯罪と無関係の会話まで聞かれて、プライバシーが侵されるといった意見も出ていたことに触れました。

そこで、通信傍受の対象を拡大することとされた経緯について、また、これにより、国民のプライバシーが侵害される危険性のあるということを、どのように理解してもらおうとお考えなのかについて伺いました。

岩城大臣からは、通信傍受法の改正は、取調べ及び供述調書への過度の依存から脱却を図るための証拠収集方法の適正化、多様化に資する方策の1つとして必要かつ有意義なものである。すなわち、組織的な犯罪等においては首謀者の関与状況等を含めた事案の解明が求められるが、現行法の下では客観的な証拠を収集する方法が十分ではない。そこで、その解明を図るため、末端の実行者など組織内部の者の取調べによって供述を得ようとすることとなり、そのことが取調べ及び供述調書に過度に依存せざるを得ない状況となっている要因の1つとなっている。

他方、近時、一般国民を標的とした暴力団員によると見られる殺傷事案が相次いでおり、また、特殊詐欺のような通信傍受法の施行後に新たに発生した犯罪事象による被害が深刻になっている。このように一般国民にとって脅威となる事犯が社会問題化しており、このような事案の解明の要請はより一層強くなっている。また、組織的な犯罪等においては、組織防衛の一環として、末端の実行者等が警察に検挙された場合には、徹底して供述を拒否するよう厳しく統制がなされるなど、事案の解明に資する供述を得ることが非常に困難になってきている。

そこで、通信傍受法施行後の犯罪情勢の変化等を踏まえ、通信傍受の対象犯罪を拡大することにより、組織的な犯罪等において事案の解明に資する客観的な証拠をより広範に収集することが可能となり、証拠収集に占める取調べの比重を低下させるものである。もとより、新たに対象犯罪に追加される罪についても、捜査機関が通信傍受を行うためには、裁判官が、他の捜査方法では犯人を特定することが著しく困難であることなど、通信傍受法が定める厳格な要件を満たしていると認めた場合に発付される傍受令状が必要であり、さらに、新たに追加される罪については、一定の組織性の要件を加え、それをも満たす場合でなければ傍受令状が発付されないこととしている。

したがって、実際にこれらの厳格な要件を満たす事案は、組織的な犯罪に限られることから、一般国民の通信の秘密やプライバシーが脅かされるおそれが高まるといった懸念は当たらないと考えているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、振り込め詐欺などのように、不特定の人に対して直接対面することなく電話、メールなどを通じて金銭等をだまし取る詐欺である特殊詐欺による、昨年の被害額は476億8千万円で、前年の565億5千万よりも前年比88億7千万円減となり、被害額が6年ぶりに減少しましたが、3年連続で400億円を突破しているという状況にあり、また、認知件数については1万3828件と前年比436件増となっており、依然として高水準で推移していること、及び、地域別で見ると、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県は被害額が前年比で約2、3割減っておりましたが、岡山県については前年比88%増の16億円、福岡は前年比50%増の19億円、大阪は前年比16%増の42億円と、西日本の被害拡大が非常に目立っていたという状況にあり、このことは、首都圏での取締りが強化され、現金の受取役らが新幹線で移動しやすい地域に集中しているためと見られているということについて触れました。

そして、警察の取締り強化により、特殊詐欺の被害額は減少傾向にありますが、被害者の年齢別では4分の3が65歳以上の高齢者であるなど、まさに悪質な犯罪であると考えられ、また、依然として事件の認知件数は増加しているという状況にあり、これは事件の首謀者の摘発が進んでいないということも理由なのではないかと考えられ、今回の改正法案により、窃盗や詐欺等が通信傍受の対象犯罪に追加されていますが、国民にとって極めて重大で脅威である振り込め詐欺等の特殊詐欺についても、首謀者等の背後関係を含む事案の解明が進むことにより、日々の生活、そして安全、安心を求める国民の声に是非応えていただきたいと思っている旨を述べました。

次に、今回の改正案に盛り込まれている、新たに、通信事業者が通信を暗号化した上で、捜査機関の施設に設置された特定電子計算機に伝送し、それを直ちに復号した上で捜査官がその内容の聴取をリアルタイムで行う方法と、捜査機関の施設において傍受を実施する際にも、伝送された通信を暗号化し一時的に保存した上で、事後的に復号し再生してその内容を聴取する方法、そして、通信事業者等の施設において傍受を実施する際に、捜査官が傍受の実施場所にいない間に行われる全ての通信を通信事業者が暗号化した上で一時的に保存しておき、事後的に通信事業者が復号して、その上で通信事業者の立会いの下、再生してその内容を聴取することを可能とするという、こうした新たな3つの傍受の方法に関し、今後どのような使い分けを考えておられるのかについて伺いました。

法務省からは、傍受の実施方法として、今回の新たな3つの手法、どういった場合にその一時的保存を命じて行う通信傍受の実施の手続あるいは特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続によるか、こういったことについては、個別具体的な事案ごとに、まず事件の内容、あるいは傍受の実施中に行われることが予想される犯罪に関連する通信の内容、また必要な電気通信回線の整備の状況、こういったことを考慮して個別に判断していくものとなると思う。例えば、一時的保存を命じて行う通信傍受の実施手続を例に取ると、これについては、リアルタイムではないということになるので、こういった手続を行う場合には、例えば、既に行われた殺人事件であって、これから重要な物的な証拠が隠滅される余地は少なくて、傍受の主たる狙いは被疑者らの関与や共謀の立証に不可欠な口裏合わせのための通信、こういったものを捉える、こういうことにその主たる狙いがあるような場合には、被疑者らがその事件に関連する内容の通信を行う回数も多くないと予想されるので、被疑者らの通信をリアルタイムで傍受で行うのではなくて、通信を一時的に保存しておく方法により、捜査の効率化を図ることが可能であろうかと思う。

他方で、リアルタイムで行うべき事案としては、薬物犯罪のように反復継続して行われているような事案であれば、やはりリアルタイムで傍受を行って、その結果を踏まえて更に必要な捜査をリアルタイムな形で行っていく必要性があるような事案もあるので、そういった場合については当然リアルタイムで行うということになろうかと思う。

また、特定電子計算機方式と立会人を置く方式との使い分けについては、特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続では、これを使う前提として、特定電子計算機の整備はもとより、送信装置等の機器を整備するほかに、通信事業者等の施設から特定電子計算機に通信を伝送するための必要なセキュリティーが確保された電気通信回線を整備する必要がある。そこで、必要な機器であるとか、電気通信回線が整備された場合には、この特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続によることができることとなるものと考えられるとの御答弁をいただきました。

次に、今回の改正案により、捜査機関の施設において特定電子計算機を用いる通信傍受の実施方法では、現行法の要求する通信事業者の立会いは不要となります。現行の通信傍受法の制定に際し、衆議院法務委員会において、傍受の実施の適正を確保するため、傍受を実施するときには立会人を常時立ち会わせなければならないものとするとともに、立会人は、検察官又は司法警察員に対し、当該傍受の実施に関して意見を述べることができるものと修正が行われ、これにより、現行法の下で求められる立会人の役割は、傍受実施の際の常時立会い、実施終了後に裁判所へ提出される傍受の原記録への署名、封印手続は、令状記載のとおりに傍受が実施されているのか適正性をチェックするとともに、データの改ざん、複写等の防止機能を担うものとされていることに触れながら、このような立会人を不要とすることにより、特定電子計算機に不正を加えられるおそれや、リアルタイムで人が監視するということで生じていた捜査機関に対する緊張、牽制機能も相当程度減じられてしまうことになるのではないかという指摘もありますが、立会人をなくすことの妥当性について伺いました。

法務省からは、現行通信傍受法で行う傍受の適正というのは、基本的には、捜査機関が傍受した通信は全て漏らさずその傍受の原記録に記録され、それが裁判官で保管されることによって事後検証が可能になることによって担保されている。それとの関連で現行傍受法において、立会人の役割というものがあるわけで、その求められている役割は、1つには、傍受のための機器に接続する通信手段が、傍受令状により許可されたものに間違いがないかどうか、あるいは許可されている期間が守られているかどうか、あるいは傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかどうか、こういった外形的な事項についてチェックすることのほかに、傍受の中断、終了の際に、裁判官に提出される、傍受をした通信を記録した記録媒体について改変を防止するための封印を行うこと、こういったことの役割を果たすものとされている。

今回の特定電子計算機方式によるものにおける手続では、まずは、通信事業者が傍受令状により許可された通信手段を用いた通信を許可された期間に即して特定電子計算機へ伝送するとされているので、このことから、立会人の役割として申し上げたもののうちの、傍受のために機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いがないかどうか、あるいは許可された期間が守られているかどうか、こういったことの適正は担保されるものと考えられる。

また、現行通信傍受法において、立会人が、傍受をした通信等について全て録音、録画等の記録がなされているかどうかをチェックして、また、裁判官に提出する記録媒体の封印を行うということとされているが、この点については、この特定電子計算機が傍受をした通信の全てと傍受の経過、これを自動的に、かつ改変できないように暗号化して記録すること、このことによって担保されると考える。

したがって、立会人を置かずに記録媒体の封印を行わないこととしても、こうした特定電子計算機の機能により、手続の適正は確保されるものと考える。また、現行法の中で立会人が行う外形的事項のチェックの1つとして、捜査官が該当性判断のための傍受の際の機器のスイッチのオン、オフというものを行っているかどうか、これを外形的にチェックするということが含まれている。

もっとも、仮に捜査官が傍受機器のスイッチのオン、オフを行っていないことを立会人が認識し指摘し得ることがあるとしても、捜査官が適正に該当性判断をして傍受を継続しているかどうかについては、最終的には通信の内容というものを踏まえなければ判断することは困難であり、やはり現行通信傍受法の該当性判断のための傍受の適正は、基本的には、傍受をした通信が全て傍受の原記録に記録されて事後検証が可能となることによって担保されているわけである。この点について、特定電子計算機を用いる手続においては、その該当性判断のために傍受したものも含め、傍受をした通信が全て改変できない形で自動的に記録媒体に記録され、事後的に検証され得ることとなるので、立会人がいる場合と同様に、傍受の実施の適正が確保されるものと考える。

したがって、本法案において特定電子計算機を用いる場合に、立会人を置かないこととしても、この該当性判断のための傍受等が適正に行われるということを十分に確保できるものと考えているとの御答弁をいただきました。

次に、通信傍受を実施する間、立会人がいなくなるということによる心配を払拭するために、新しい傍受方法が適正に運用されるための措置ももう少し必要なのではないかとの観点から、衆議院における質疑においては、捜査機関の施設である警察署内で特定電子計算機を用いて通信傍受を行う際には、改正案では不要とされている通信事業者の立会いについては、当該事件の捜査に従事していない警察官等が現場において必要な指導を行うことにより、傍受又は再生の実施状況について適正を確保するなどと御答弁のあったことについて、警察当局として、どのように受け止められているのかについて伺いました。

河野国家公安委員長からは、今度の新しい方式では、全ての傍受した結果を機械的に暗号化して記録をすることになるので、現行法で立会人が果たしている役割を漏れなく代替をすることができるということで、制度による適正化は担保されていると思うが、今度は、新しい高度な機械を使うことになるので、この機械がきちんと使われなければいけないわけである。傍受をしている捜査員に対し、専門性を持った警察の人間が、傍受を始める前、あるいは傍受中、あるいはその後、そうした機器が適正に使われているということを確認し、指導することは必要だと思うので、制度でまずきちんと担保をした上で、実務上もそうしたことが担保できるよう、警察としてしっかりできるように指導してまいりたいと思うとの御答弁をいただきました。

次に、こうした運用では、これまで第三者が立会いで果たしてきた外形的なチェックが身内の警察官による監督になるということで、これまでの運用体制よりも心配されるとの見方について、どのようにお考えになるのかについて伺いました。

警察庁からは、警察施設で通信傍受を行う場合には、特定電子計算機を用いるが、この機械は、全ての傍受結果を機械的かつ確実に暗号化処理をして記録する機能を有し、また当該機器自体にもセキュリティーチップが搭載され、プログラムは改ざん不可能なものとされているところである。こうした特定電子計算機の機能により、現行制度において立会人が果たす役割は漏れなく代替をされるというのが、まず基本的な認識である。もっとも、新たな方式による通信傍受では技術的に高度な機器を使用することなどから、その適正かつ効果的な実施を担保するため、専門的知見を有する警察官等が必要な指導を行う体制を整えることを検討している。体制や指導方法を含む、その具体的な運用の在り方については、今後検討することとなるが、例えば警察本部の適正捜査の指導を担当する警察官等で、通信傍受を実施する事件の捜査に従事していない者、また情報通信に関する専門的知見を有する警察庁の技官などを想定している。そして、こうした者に、必要に応じ、傍受の実施の現場等において法令手続や技術面の指導を行わせることなどを想定している。

また、こうした指導以前の問題として、警察としては、傍受令状の請求に際しては、逮捕状や捜索差押許可状の請求と比べても非常に重い内部手続を設けており、例えば請求権者を警視以上の者、逮捕状の場合には警部以上であるが、これに比べ警視以上とし、また、傍受令状の請求の際は、警察本部長の事前の承認を受けるということにしているところである。このように、通信傍受を他の捜査手法にも増して厳格に行うべきものと位置付け、組織的に慎重かつ適正な運用に努めているところであり、そのことは新しい制度の下でも全く変わるものではないとの御答弁をいただきました。

次に、新たな通信手段と通信傍受法の傍受対象通信との関係についてということで、今般、多くの方々がLINEやスカイプなどの、新たに出てきている通信手段により会話やメールなどメッセージのやり取りをしていますが、このような特定の事業者が提供しているプログラムないしアプリケーションを使った通信などについても、今後、通信傍受による傍受の対象になるのかについて伺いました。

法務省からは、これは現行通信傍受法の問題であるが、傍受の対象となる通信の種類について通信ということのみ規定していることから、例えばLINEのようないわゆるアプリを用いてインターネットを介するような方式による音声通信、こういったものであっても、通信傍受法が規定する通信に当たる限り、同法の規定による通信傍受を行うことは法的に可能である、対象となっているということであるとの御答弁をいただきました。


刑事訴訟法等一部改正案に関する参考人質疑

2016年4月28日(月)

  • 法務委員会2
  • 法務委員会1

法務委員会が開催され、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に関し、大変御多忙のところ御出席いただきました、中央大学法科大学院教授の小木曽綾氏、元北海道警察釧路方面本部長の原田宏二氏、そして、九州大学大学院法学研究所教授の豊崎七絵氏の3名の参考人の方々に質問いたしました。

まず冒頭に参考人の方々より、御意見をお述べいただきました。

小木曽参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

法案が提案する項目は非常に多岐にわたっているが、それらは適正な捜査や正しい事実認定、国民の期待に応える刑事司法の実現という目的のために、それぞれ果たす役割があるということ、そして、この法案がそれら多岐にわたる項目をパッケージとして提案しているということの意義について、まず申し上げたい。

法案中、恐らく最も長きにわたって学界でも議論され、また社会的な関心も高かったのは、取調べの録音、録画であろうと思われ、これがどのような効果を持つかについては様々な議論のあるところだが、言わば密室で行われる取調べ、その結果として得られる供述の任意性、信用性について、これを検証するすべがないことから、客観的な映像音声を残しておけばよいのではないかというのが元々の発想であったのだろうと思う。映像音声の残ることが分かっていれば、例えば法の禁ずる暴行、脅迫の有無が明らかになるわけであるし、その程度に至らなくとも、供述の任意性に影響するのではないかと思われる取調べの様子が事後に検証可能になるからであるが、他方で、事実認定者が被疑者、被告人の不利益供述の様子を見聞きすると、それが供述の任意性に関する証拠であるとしても、被告人の有罪の直接証拠、実質証拠として受け取られるということがあり得る。したがって、その供述がどのようなコンテクストで出てきたのかを判断するには,取調べの全過程が再生されなければならないという意見もあるわけだが、ある事件で何十時間にも及ぶ取調べの様子を全て公判期日で再生するということは、恐らく現実的でないと思うし、仮に全過程を見たとしても、それによって明らかになるのは取調べの様子や被疑者、被告人の供述態度であって、それによって被告人の有罪の証明が十分にされるというわけではない。もし、取調べの録音、録画が任意性の、あるいは実質証拠としてであれ、それが有罪認定の決定的な証拠になるということであれば、これは調書がビデオになっただけで、結局、供述に依存した事実認定ということになるのではないかと思う。つまり、録音、録画には事後の検証効果は期待できるが、それだけで取調べの適正さが保障されたり、正しい事実認定が実現できるわけではないと考える。

弁護人による援助の充実について、被疑者段階の弁護人は、取調べを受ける被疑者への助言や身柄拘束下にある被疑者と外部との連絡といった、被疑者の被る不利益を緩和する極めて重要な役割を担っており、この段階で接見を通じて適切な助力が得られれば、取調べの適正さの確保や正しい事実認定の実現に資するものと考える。本法案で国選弁護人の範囲が広がるということには重要な意義があると考えており、適正な取調べ、供述の任意性、信用性の確保のためにも、弁護人の役割に期待したいと思う。

日本の刑事裁判は、当事者主義を採用していると理解されており、とりわけ被告人には検察官の主張立証に反論する機会が与えられなければならないわけであるが、反論をするには、その主張の根拠を知って、これを吟味して自らの主張を準備することができなければならない。国側と被告人側の情報収集能力の差は歴然としており、この差を埋めて初めて被告人からの反論が可能になるわけであって、これを具体的に可能にするのが、公判前整理手続で行われる争点整理とそれに伴う証拠開示であり、これは、弁護権や反対尋問権と並んで、公正な刑事裁判を実現する極めて重要な方策であると考える。一覧表の交付や、公判前整理手続の請求権、類型証拠開示の対象拡大によって、被告人側の証拠へのアクセスが拡充され、公正な公判手続の実現、正しい事実認定に貢献するということが期待されると思う。

今回の法案の基本的な関心は、被害者や目撃証人等の不安や負担を軽減して、それらの者からの供述、捜査協力を得やすくするという点にある。ビデオリンクによる証人尋問は既に用いられているところであるが、これは、証人が審理が行われている法廷と同一の裁判所構内にいる場合に限定されていた。法案は、審理が行われている裁判所とは別の場所にいる証人についてもビデオリンクを用いるということを提案するもので、証人が被告人と同一構内に、例えば出廷するところを見られるということによって証言が困難になったり、あるいはその者の身体等の安全が危惧されるということが想定される場合に備えるものである。

また、証人の氏名、住居の開示に係る措置も提案されており、証人や被害者の保護について、配慮の対象は、被害者と被害者以外の証人であり、その内容としては、それらの者に関する情報を公の法廷で明らかにしないということと、被告人に知られないという2つの側面がある。この関心から従来の制度を見てみると、被害者特定事項の秘匿は、公開の法廷でこれを明らかにしないものであるとともに、被害者証人については、検察官がそれが被告人に知られないようにすることを弁護人に求めることができるというものであった。被害者以外の証人については、両当事者はその住居、氏名等が被告人を含む関係者に知られないような配慮を相手方に求めることができるけれども、証人特定事項、証人の住所、氏名等についてはそれを公開の法廷で秘匿する制度はなかった。法案は、この従来の配慮を条件とし、さらに、弁護人にも証人情報を知らせないことができる場合を設けた上で、そのような措置の適正さを裁判所が裁定するという仕組みを設けるとともに、公開の法廷での証人の氏名等の秘匿制度を新たに提案している。法案についての1番の争点は、弁護人にも証人の氏名、住居を知らせず、その代わりとなる呼称や連絡先を知る機会を与える代替措置をとるという提案の是非であろうかと思う。これは、例えば組織的な犯罪について、犯罪組織の元構成員が証人として出廷する場合に、その者が既に組織から脱退して、そして結婚等によって名字を変更しているというような場合、その現在の名字や住所を被告人側に必ず知らせなければならないとすると、その者が加害を受けるおそれがあるということが想定されるわけだが、他方で、証人の氏名等が知らされないことによって、例えば、その被告人その他の関係者との証人との利害関係を確かめることができなくなってしまうということも考えられるわけである。このように、被告人との間に証言の信用性に影響を及ぼす利害関係が存在する可能性があるものの、証人の氏名等を知ることができないために、そのような利害関係の有無を確かめられないというような場合には、この措置をとることはできないと解される。また、被告人側は、検察官の措置に不服があるときには、裁判所に取消しを求めることができるということとされている。法案は、証人保護の要請と被告人の防御権のバランスを図る工夫をしていると評価できると思う。

原田参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

取調べの問題については、可視化だけで冤罪とか誤認逮捕がなくなるということは多分ないだろうということで、部分可視化というのは余り意味がないと思う。

また、私はいろんな冤罪事件見ていると、大体、全ての冤罪事件は任意同行から始まる。任意同行という言葉は刑事訴訟法には書いておらず、実際のやり方は、要するに、朝早く容疑者の家へ行って、もしもし、ちょっと話聞きたいから来てくれませんかということで、数人の警察官が車に乗せて警察署へ連れてくる。行き先は取調べ室であって、もちろん、逮捕状を持っていない。では、この部分から録画できるのか、ということがあるが、その後、そこで、物すごい取調べが行われ、そこで自供する、逮捕状を取る、執行する、ことになり、その次の取調べ辺りからは、裁判員裁判であれば取調べ室の録画が始まるということになるのではないか。そういう事態をどうやって防ぐのかということである。警察内部である幹部が取調べ監督官という役職をつくって、それが、取調べ官が取調べ室で取調べをしているのをのぞき窓から見て監視するというようなことだろうが、取調べ監督官なんて数人しかいないのに、それを、毎日警察署でやっている取調べ室内をチェックできると思うこと自体がおかしい。

司法取引や刑事免責の問題についても、非常に危ないと思っている。これまでも、便宜供与みたいなこととか、あるいは、そのほかの利害誘導的な取調べの中で司法取引的な取調べをやっているわけである。確かに今度の刑訴法上の司法取引の中に直に警察は出てこないが、こういう規定ができたら、警察の現場はどんどんこれを使うことになると思う。

通信傍受について、警視以上が令状請求するとなっているが、逮捕状の請求は警部以上である。しかし、誤認逮捕とか冤罪事件が幾つもあることからも、階級が上の者になったから公正な請求が行われるなんてことは幻想である。また、傍受を警察施設で、しかも立会人なしでオーケーだということになるそうだが、それで本当に大丈夫なのか。警察の内部というのを知っていたら、警察官は組織の中で仕事をやっているわけだから、通信傍受の公正性を、ある警察官がほかの部署でやっている捜査についてチェックなんてできない。

豊崎参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

結論から申し上げると、この法案によって、取調べやその成果としての供述調書に依存した捜査、公判が改まるということはないし、人権侵害と冤罪の防止が図られるものでもない、その上、合意制度などによる冤罪の危険や盗聴拡大による人権侵害の危険が大きいと考えている。日本の刑事手続が取調べを中核的なものとして機能してきたということ、つまり取調べ中心主義だという現実については、およそ異論はないと思う。この度の法改正は、この刑事手続の中核たる取調べ、そしてその成果としての供述調書に依存した捜査、公判の在り方を見直すということで行われるはずのものであるから、まずはその前提作業として、このような取調べ中心主義をもたらしてきた原因は何かを究明しなければならないはずである。法制審議会特別部会の審議あるいは、その後の国会審議において、日本においてなぜこれほどまでに取調べが刑事手続において占めるウエートが大きいのかという立法事実に関する基本的な問題について、十分な時間を掛け、真摯に議論してきたのだろうか、大きな疑問を持っている。

日本においてなぜ取調べ中心主義になっているかといえば、それは、取調べのやり方全般が捜査機関の裁量に大きく委ねられているのはもちろん、特に被疑者取調べについては、捜査機関は被疑者が身体拘束されている状態を流用して、糾問的な取調べを行うことができるからである。その根幹的な制度ないし捜査実務は、ほとんどの被疑者が警察の留置施設に収容されているという現状をもたらす代用監獄制度、代用刑事施設制度であり、取調べ受忍義務を前提とした取調べ実務である。さらに、最大23日間にも及ぶ身体拘束期間が取調べを始め、捜査のためにフル活用されていること、起訴前保釈制度が欠如していること、被疑者取調べへの弁護人の立会いが捜査実務上認められていないことなどなども、取調べ中心主義を支えてきた構成要素である。このような取調べ中心主義は、被疑者を取調べの客体とし、黙秘権や弁護人の実効的な援助を受ける権利などを十分に保障されていない点で、それ自体問題があるばかりか、被疑者に大きな精神的、肉体的ダメージを与えることにより、虚偽の自白、ひいては冤罪を生み出す。

ここで改めて御確認いただきたいと切実に思うのは、取調べで明らかな暴行なり脅迫が行われたり、冤罪であることが氷山の一角として、辛うじて幸いにも発覚したりした、そういう事件の表面だけを見て、日本の刑事手続においては、ごく一部の例外的な病理があって、それを解決すれば足りる、そのような考え方で、この法改正に臨むべきではないということである。被疑者が最大23日間も警察の留置施設で処遇されていること自体、あるいは、弁護人の立会いも取調べ拒否も許されず、取調官の見込みに合わない被疑者の言い分は全く取り合われず、延々と取り調べられていること自体、人権侵害であるということが改めて確認されるべきであるところ、法案がその問題にいささかも改革のメスを入れていないというのは、本当に驚くべきことである。

逮捕、勾留中の被疑者は、警察の留置施設においては、その日常生活を四六時中支配されることで心理的圧力を受けるのはもちろん、取調官によって随意の追及にさらされ続けることで、更に心理的圧力を加えられており、そのような身体拘束や取調べの現状は、黙秘権、そしてその基礎にある人間の尊厳をないがしろにしているのではないだろうか。取調べだけを可視化しても、このような人権侵害の構造や、これを発生源とする冤罪の防止を図ることはできない。そもそも、可視化というのは取り調べることを前提に行われるわけだから、これによって取調べ中心主義が直接的に改革されるという筋合いのものではない。実際、法案の例外事由も、取調べによる供述獲得機能、より率直に言えば、自白獲得機能は維持するという理由で設けられているわけである。ここには、取調べにおいてこそ真実を追求することができるという考え方があるように見える。しかし、そもそも、近代刑事司法の原則である公判中心主義を前提としたとき、取調べの真相解明機能や刑事政策機能なるものを肯定的、積極的に評価し得るのであろうか。また、真相解明機能といっても、実際には取調べ官の有罪仮説に沿った供述調書獲得機能と言わざるを得ず、真の意味での事実解明が果たされているとは言えないのではないだろうか。そうであるからこそ、冤罪は生み出されてきたわけである。

それでも、可視化によって取調べの密室化が解消された分、誰が見てもひどい取調べは減り、取調べの適正化が進むように思われるかもしれないが、被疑者が被っている精神的、肉体的ダメージが、全て映像や音声として記録されたり簡単に見抜けたりするわけではない。留置施設での身体拘束や弁護人の取調べでの不在などが被疑者に与えるダメージに思い至らないまま、被疑者による自白場面の録音、録画を漫然と視聴し、自白の任意性を判断することは、かえって誤りの危険がある。いわゆる取調べの全面可視化が果たされたとしても、それだけでは、およそ捜査機関は捜査の秘密というものを重視する、そこでの裁量的なやり方というものを重視する、そういうカルチャーを持つ組織である限り、単に可視化が広がっていくだけでは、かえって問題は潜伏化すらしていく、そういう危険があるということである。

取調べの全過程の可視化が果たされたとしても、今度は取調べ以外のところの問題、例えば留置施設での人権侵害や不当な扱いが見過ごされることになる。たとえ可視化がなされたところでも、被疑者の置かれた苦しい状況に対する洞察力が働かなければ、問題は見過ごされることになる。必要なのは、可視化の範囲は広げつつも、しかし、根本的には、捜査機関の裁量的やり方そのものを直接抑制することによって、究極的には可視化自体が不要になることを目指すというような、そういう抜本的な法改正であると考える。例えば、留置施設での人権侵害や不当な扱いができない、およそそんなことは問題として発生しないよう、代用監獄制度を廃止するということではないか。また、録音、録画を視聴するだけでは、被疑者の被っている精神的、身体的ダメージが気付かれにくいという問題に対しては、そのようなダメージ自体を解消する法改正が必要であると思う。例えば、長期拘禁で被疑者が参ってしまうという問題がおよそ発生しないよう、起訴前保釈を導入すべきではないだろうか。

合意制度について言えば、それ自体引込みの冤罪の危険があるばかりか、日本の遅れた刑事手続の問題と結び付くことによって見えない圧力が被疑者に掛けられるという問題が懸念される。また、証拠収集手段が多様化したからといって、捜査機関がその分、取調べをあえて差し控えるようになるような誘因は何も用意されておらず、かえって、例えば傍受した会話を取調べで自白を取るために使うなど、取調べもほかの証拠収集手段も相乗的に活用するという問題も懸念される。あるべき法改正は、公判中心主義にかなう刑事手続に向けた抜本的な改革であり、端的に捜査、取調べを抑制することである。捜査、取調べの可視化は、この抜本的な改革と併せて行うべきであり、今回の法案には反対である。

その後、質疑に入り、次のとおり参考人の方々に質問いたしました。

今回の改正法案にあります取調べの録音、録画については、現状では被疑者が取調べ室に入るときから録音、録画されているという状況になるわけですが、この状況で、取調べ官、実際に取調べをする側はその運用状況を、取調べ室に入るときから録音、録画されているということを把握されて取調べを行われますが、実際にその取調べを受ける被疑者の方は、録音、録画がこれからされるということを取調べ室に入る前から周知されているのかということにつきまして、先日の対政府質疑でお尋ねしましたが、被疑者には伝えられていないということでした。

そのときの政府答弁は、今回の改正法案には、被疑者に対し取調べの録音、録画を行うことに際してその告知を義務付ける規定は設けられていないが、その理由については、被疑者取調べの録音、録画が被疑者の重要な権利利益の制約を伴うものではないことから、被疑者の同意を得なければ実施できないものではなく、したがって、録音、録画に際して被疑者に録音、録画を行う旨を告知する必要まではないと考えられたことによるものであるというものでした。

しかし、やはり被疑者に対して、今から録音、録画を取調べの中でやっていきますよということを伝えることによって、新たな冤罪ですとか、さらには虚偽の自白等が減っていくことにつながるのではないかという一方で、実際にその被疑者が犯罪を犯していたとしても、録音、録画がなされているということを認識していることによって、本当のことを言っていくということにつながっていくのではないかと考えていることから、被疑者に対して録音、録画を行うということを周知する、告知を徹底すべきであり、そのことによって犯罪の解決につながっていくと思いますが、その点について、今回、録音、録画が被疑者に対して周知徹底されていないという件について、どのようにお考えになるか、小木曽参考人、原田参考人及び、豊崎参考人に伺いました。

小木曽参考人からは、録音、録画をされる権利ではないというので周知する必要はないというようなことなのかもしれないが、運用上は、やはりこれは周知というか告知した方がいいと思うとのお答えをいただきました。

原田参考人からは、そのように思うところであるが、取調べというのは取調べ室以外で、留置場の中等、幾らでもやっているという現状認識が必要であるとのお答えをいただきました。

豊崎参考人からは、告知を徹底することは必要であると思うが、やはり取調べというものが全体としてどうなっているのかというところにまず関心を向けていただきたいと思うとのお答えをいただきました。

次に、特定電子計算機を用いて捜査機関の施設である警察署内で通信傍受を行う場合には、当該事件の捜査に従事していない警察官又は警察職員のうち、各都道府県においては、適正捜査の指導を行う部署の警察官が、傍受又は再生の実施状況について適正性を確保するため、現場において必要な指導をする体制を整える運用を行うなどの答弁が、衆議院における質疑の中で警察側から行われたことに触れた上で、原田参考人に、このような運用では、これまで第三者が立会いで果たしてきた外形的なチェックが、身内の警察官が監督になるということで、これまでの運用体制よりも非常に心配だという点について、御所見を伺いました。

原田参考人からは、警察の仕事を内部でチェックするということは基本的に難しいということであり、警察組織の特質から、これまでもいろんな場面で、本来であれば外部の目を入れなければならない部分に、絶対に外部の目は入れないという姿勢で一貫している。今回のように、内部でやれば公正を担保できますよというのは無理だろうと思う。なぜならば、こういう方針で捜査するというのを、関係のない警察官が、おかしいじゃないですかとは言えないはずであり、これは警察というのは、組織の方針に反することのできない組織であることによるとのお答えをいただきました。

次に、小木曽参考人、原田参考人、豊崎参考人に、今回の改正法案では、対象犯罪に追加されようとしている窃盗、詐欺、恐喝等については、当初国会に提出された通信傍受法案においては対象犯罪となっていなかった犯罪類型であると承知しており、組織的な窃盗事件が依然として後を絶たない状況の中で、これが強盗あるいは強盗致死傷罪に容易に発展し得るものであるということや、振り込め詐欺などのように、不特定の人に対して直接対面することなく、電話やメールなどを通じて金銭等をだまし取る詐欺である特殊詐欺による被害額が、3年連続で400億円を上回っているという現状を踏まえ、今回、新たに通信傍受の対象犯罪にしようということになっている旨を述べた上で、今回の改正法案で新たに窃盗、詐欺、恐喝等の犯罪を通信傍受の対象とすることによって、多くの国民が通信傍受の対象になるということで、そのプライバシーが侵害されるのではないかという心配の声が多く聞かれるわけですが、こうした心配の声があるということについて、どのようにお考えでいらっしゃるのか、伺いました。

小木曽参考人からは、現行の通信傍受法の要件は極めて厳格に定められており、対象が広がるということでこの要件が変わるわけではないので、その点の懸念はないのではないかと思うとのお答えをいただきました。

原田参考人からは、先ほど委員から、国民の個人情報の観点から問題じゃないかというお話があって、全くそのとおりだと思っている。少し付け加えると、監視カメラの捜査への利用とか、あるいはDNAのデータベースの構築とか、それから最近問題になっているGPSを使って尾行するというような捜査が頻繁に行われており、これには法的な根拠はないのであって、警察の捜査というのは、法律に従って法手続をきちっとやるということであるのに、全然根拠のない捜査手法が公然と行われており、通信傍受の問題も含めると、事実上の権限を警察はどんどん広げようとしているので、これはどこかで歯止めを掛けないといけないと思うとのお答えをいただきました。

豊崎参考人からは、元々盗聴は憲法35条に反するものでありながら、しかし、現行の通信傍受法はそういった批判も受けて辛うじて成立してきたものであると思うので、まして対象犯罪の拡大ということは論外と言わざるを得ないし、更に付け加えれば、いわゆる結合体要件というものもあるが、それでは、何らかの緩やかな人的つながりさえあれば要件が認められるということで、十分な歯止めになるかは甚だ疑わしいのではないかと考えているとのお答えをいただきました。


刑事訴訟法等一部改正案に関する参考人質疑

2016年4月26日(月)

  • 法務委員会3
  • 法務委員会2

法務委員会が開催され、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に関し、大変御多忙のところ御出席いただきました、東京大学大学院法学政治学研究科教授の川出敏裕氏、弁護士の西村幸三氏、立命館大学特別招聘教授・奈良女子大学名誉教授の浜田寿美男氏、そして、立命館大学大学院法務研究科教授の渕野貴生氏の4名の参考人の方々に質問いたしました。

まず冒頭に参考人の方々より、御意見をお述べいただきました。

川出参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

今回の法案の基となった答申を決議した法制審議会の新時代の刑事司法制度特別部会に幹事として参加したので、特別部会の議論を踏まえ、法案に賛成の立場から、通信傍受法の改正案に絞ってお話をしたい。

今回の改正案の主たる内容は、通信傍受の対象犯罪の拡大と、通信傍受の手続の合理化、効率化であり、まず、対象犯罪の拡大の点について、この当否については、それが憲法上許されるのかという観点と、仮に合憲であるとして、その拡大に合理性があるのかという2つの観点から考えてみる必要がある。まず第1の点は、通信傍受が通信の秘密やプライバシーを侵害するものであることから、それが憲法13条及び21条2項に反しないと言えるためには、それに見合うだけの重大な犯罪でなければならないという観点から問題とされるものである。通信傍受法の制定前に、検証許可状によって電話傍受したことの合憲性が問題とされた事件において、最高裁は、電話傍受は一定の要件の下では、捜査の手段として憲法上全く許されないものではないと解すべきであるとした上で、それが憲法上許容されるための要素の1つとして、重大な犯罪に係る被疑事件についてなされたものであるということを挙げていた。この決定は、覚醒剤の営利目的譲渡事件を対象としたものであったので、判例上は、覚醒剤の営利目的譲渡は、電話傍受の合憲性を認め得る重大な犯罪であるという立場が取られていることになる。そして、通信傍受法は、判例上合憲性を認め得るとされた覚醒剤の営利目的譲渡を含む現在の4種類の犯罪は、この意味での犯罪の重大性を満たすものだという前提で制定されたものであるので、少なくとも、これらの罪に匹敵するような重大性を持った犯罪に対象を拡大したとしても合憲と言い得ることになる。そして、この意味での犯罪の重大性は、通信の秘密やプライバシーの権利を制約しても、その事実を解明し、犯人を処罰すべき必要性が認められるかどうかによって決まるので、重大な犯罪に当たるか否かは罪名や法定刑だけで判断されるものではなく、その犯罪が国民の権利利益を侵害する程度が大きいかどうかという観点から、その社会的有害性や危険性をも考慮して判断されるべきものだと言える。その観点から見ると、今回、対象犯罪として加えることが予定されている罪は、いずれもそれに見合ったものであると言えると思う。これは、暴力団によって意に沿わない行動を取る一般市民を標的にその生命、身体に対して危害を加えられる事案はもちろんのこと、多数の国民の老後の蓄えを奪うような振り込め詐欺の事案、さらには、児童の心身に計り知れない危害を及ぼす児童ポルノの組織的な製造、提供事案などが、侵害される権利利益の性質やその侵害の程度から見て、薬物の密売事案と比べて重大性に劣るということは到底言えないと思う。もっとも、例えば窃盗や詐欺などについては、その罪名だけからは、この意味での重大性を持たない軽微な事案が対象に含まれる可能性があることから、改正法案では、重大な犯罪が対象であることを明確にするため、新たに対象犯罪に加えられる罪については、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものという組織性の要件を付加している。

他方で、これだけでは組織犯罪に限定するには不十分であり、例えば組織的犯罪処罰法でいう組織や団体の定義を適用すべきだという意見もあったが、組織的に行われる犯罪の中には、ここでいう組織や団体の定義には当てはまらない形態もあり、また、改正案の組織性の要件というのは、捜査機関として傍受令状を請求する時点で疎明ができる、ぎりぎりの線を規定したものであるので、これ以上のことを要求すると、傍受制度自体が機能しなくなるおそれがある。

以上のように、今回の対象犯罪の拡大は憲法に適合したものであると言えると思うが、その上で、次の問題は、現行法が4種類の罪に限定していることとの関係で、対象犯罪を拡大することに合理性があるのかということである。現行法上、対象犯罪が4種類の罪に限定された経緯を見ると、政府提出法案では、一定の重罪と組織的に敢行されることが多い犯罪を広く通信傍受の対象としていたが、その時点では通信傍受制度を導入することへの反対論が強かったということもあり、国会審議において、その当時の犯罪情勢に照らして、この捜査手法が必要不可欠と考えられる最小限度の範囲に限定されたという経緯をたどっており、4種類の罪の中に、その当時深刻な問題とされていた集団密航が含まれている点によく表れている。そうであるとすると、その後の犯罪現象の変化を踏まえて、既存の対象犯罪に匹敵するだけの必要性が認められる犯罪を通信傍受の対象に加えることは、十分に合理性が認められるはずであり、振り込め詐欺事案を典型として、今回対象犯罪に加えるものとされている罪については、現時点において、この意味での必要性が認められると言えると思う。

次に、通信傍受の手続の合理化、効率化について、現在の通信傍受は、通信事業者の施設で事業者の立会いの下にリアルタイムで行う形になっているが、このことが捜査機関、事業者双方にとって大きな負担となっているということが特別部会のヒアリング等でも紹介された。そして、負担が大きいということだけならまだしも、それが通信傍受に対する事実上の障害となっているとの指摘もなされている。例えば、深夜に傍受を行うということは、立会人の確保という観点から困難であることは容易に想像が付くところであるし、ましてや、24時間体制で傍受を行うのは事実上不可能である。また、傍受を行う場所の準備や立会人の確保のためには、捜査機関と通信事業者との間での協議と通信事業者側の準備期間が必要となるので、緊急に傍受を行う必要が生じたとしてもそれには対応できないということになることから、これまでは、本来傍受できたはずの犯罪関連通話が傍受できないままに終わっていた例が少なからずあったものと推測される。

そこで、今回の改正法案では、大きく3つの点で新たな傍受の仕組みを設けるものとしており、第1に、一時的保存による傍受の仕組みをつくり、捜査機関がリアルタイムではなく、一旦保存された通信を事後的に再生していくことができる形も取れるようにしている。それから第2に、通信事業者の施設で傍受をするのではなく、通信事業者から通信を送信させ、捜査機関の施設でそれを傍受することができる形を取り入れている。第3に、特定電子計算機を用いた捜査機関の施設での傍受については、立会いなしで行うことができるものとしている。

そして、新たな仕組みの下では、立会いをなくすことが不適正な傍受につながることはないという理解の下に、特別部会でも合意が得られている。もちろん、それは暗号化や特定電子計算機が想定どおりに機能するということを前提とするものであるので、そこが担保される必要があるが、特定電子計算機については仕様書が公開されると伺っており、さらに、改正法の下では、こうした新たな仕組みを使った傍受を行うかどうかも裁判官の審査対象になりますので、それを通じて装置等の適正さが担保されるということになると思う。

西村参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

今回の改正で傍受の対象となる殺傷犯、窃盗、詐欺などの新たな罪種については、現行法上も規定されている厳格な要件に加え、更に組織要件が課されることとなっており、組織犯罪に焦点を絞った改正と理解している。弁護士の中には、今回の通信傍受の拡大について反対意見を主張される方も多く、その内容もおおむね承知しており、もちろん、制度の運用においては、今後も引き続き、その運用の適正性に関する検証を続けることは大切だと思う。とはいえ、倉庫荒らし、商店荒らし、事務所荒らしといった侵入盗の被害のすさまじさは大変なものがあるし、そういった組織窃盗団の犯行の組織性、隠蔽性に照らせば、通信傍受の対象罰条に組織的な窃盗を加えることには十分な根拠があると思う。

通信傍受に対する批判の中に、通信傍受は犯罪検挙の役には立たないから反対だという批判もあるが、これは批判としては当たらないのではないかと感じる。法制審議会においても諸外国との比較調査があったと承知しており、例えば、アメリカでは、対象犯罪も100以上、組織要件は設けられておらず、年間実施件数も約3600件に上るということで、通信傍受が捜査手法としての有用性も認められ、高く評価されており、米国以外の諸外国と比較しても、日本での今回の改正は、慎重と評しこそすれ、安易な拡大という批判は当たらないと考える。さらに、新制度における通信傍受では、暗号技術を活用し、記録の改変等ができない機器を用いるなどの技術的措置が講じられ、これを通じて通信傍受の合理化が図られているものと理解している。十分な強度を有する暗号技術は、近年の国際商取引などの基盤ともなる信頼性の高いものであり、通信事業者の立会人がなくなることについて懸念を示す意見も承知しているが、暗号などの技術は十分に信頼に足りるものとして既に広く実用化されているし、機械的なシステムにより人為的な管理ミスが防止され、事後検証の客観性も含め、少なくとも、現行制度の立会いと同等の手続の適正性が担保されると考えている。

また、通信傍受の合理化は、現状の通信事業者や遠隔地の捜査機関の過大な負担を軽減し、機動的、効果的な通信傍受捜査の実施につながるものであり、貴重な国民の税金を限られた資源として使う上で、合理化できるところは合理化し、信頼できる技術は活用すべきである。犯罪集団の側が高度に発展した通信手段を利用して犯罪を遂行している現実がある以上、摘発する側の法執行機関もまた、時代に即した法制度を整備していかなければ、立法のサボタージュとなってしまう。

そして、自身の弁護士としての活動を通じて、振り込め詐欺や暴力団犯罪の被害に遭わない平穏な生活の実現を国民が切に願っていることを実感するとともに、組織犯罪捜査に通信傍受をより積極的に活用していく必要性も高まっているのではないかと感じており、諸外国の状況も踏まえ、自白に過度に頼らない捜査の在り方を目指す一連の改正の中で、今回の通信傍受法の改正は時宜を得たものと考えている。

浜田参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

今回の刑訴法の改正による可視化問題については、可視化によって取調べ室の中で行われている供述についての任意性をチェックするという点で、可視化が全面的になされなければ、それが機能するのかどうかということを懸念している。刑事訴訟法の中には、強制、拷問又は脅迫による自白、あるいは不当に長く勾留された後の自白は任意性がないということになっているが、私が出会ってきた事件の多くは、形の上だけ見ると、刑訴法の上での任意性チェックをクリアしているというふうに見えるものが多い。つまり、拷問とか暴力によってやむなく自白してしまうのではないかというふうに思っている方が多く、実際には、もちろん言わせられるという点では一緒だが、自ら犯人として語らざるを得ない状況に心理的に追い込まれるという現実があり、一見自発的に自分からしゃべっているように見える。したがって、録音テープでその外形だけ捉えたときに、果たして一般の方たち、あるいは裁判官も含めて、これを任意性がないという形でチェックできるかどうかということについて、強い懸念を持っている。

無実の人が虚偽自白をするということは、任意性が一見あるかのように見えるような取調べ状況でも起こる。簡単に言うと、今の日本の刑事取調べの基本的な形は謝罪追求型になっており、ある事件が起こって、とんでもない事件だ、ひどいやつだということで、一定の容疑があって取調べ室にやってきたときに、謝れというところから始まるケースが非常に多いように見える。世間の常識でも、とんでもない事件を起こした犯人に対しては、当然ながら憎しみが湧いてくるし、許されないという思いが付きまとうので、謝れという気持ち、捜査官の気持ちもよく分かるが、謝罪追求型ということは実は有罪を前提にしている。有罪が前提だから謝罪追求ができるわけで、捜査官が分かっていて無実の人間を自白に追い込んでいるわけではなくて、ある意味、職務上の熱意、あるいは善意でもって本人に謝罪を求めている。有罪前提で迫るとどういうことが起こるかというと、被疑者が幾ら弁明しても、有罪が前提なので聞いてくれない、ほとんど聞く耳持たないという形で対応されることになる。それぐらいで落ちるのかと思われるかもしれないが、朝から晩まで、やっただろう、やっていません、が続いたときに、どれだけの無力感を味わうことになるのかということ、これは想像ではなかなか考えることが難しいが、実際にそれを体験した人は、体験した者にしか分からないということをしばしば述べられる。その中で、そういう無力感で落ちるというのは、普通の根性を持っている者だったら、そんなことはないだろうと思われるかもしれないが、多くの冤罪事件でその無力感の中で落ちているということを知ってほしい。しかも、私がやりましたと認めてしまった後は、当然、捜査官はますます犯人としての確信を深めるので、それではどうやったんだというふうに犯行のストーリーを語ることを求めることになる。もちろん、やっていない人間は分からないわけなので、分からないから分かりませんと言えるかというと、分かりませんと言うと、また否認するのかということに戻るので、分かりませんでは通らないということになる。そこでどうするかというと、結局、自分が犯人として振る舞う以外にないということになる。その中で、突き付けられた事件について、自分だったらどうしただろうかということを、自分の側から想像して語るということが起こるわけである。一般に虚偽自白というのは、捜査官がストーリーを考えておいて、でっち上げてのみ込ませるみたいなイメージが強いので、犯行筋書を語らされてしまうというふうに思われるかもしれないが、実は、犯行を自分から考えて、自分がやったとしたらどうなっただろうかということを想像して、自分の側から語るという側面があるということを知っていなければ、録音テープを聞いても、任意性でチェックすることはできないと思う。

その意味で、録音テープを取るということで一定程度、捜査の外部から見て何が起こっているかということを見ることができるようになる第一歩だという考え方はあるが、一方で非常に危険だという部分を感じる。少なくとも、身柄を取られて以降、つまり逮捕以降の取調べを可視化するということになっているが、現実の事件を見ると、かなりが任意の段階で自白に落ちて、それから逮捕されているケースが多い。そうなると、捜査官と被疑者との間で、おまえが犯人だ、私たちはおまえを今後の更生も含めて関係をつくって面倒を見てやるんだという中で、人間関係ができ上がってしまったところで録音テープが取られてしまったときに、それを誰が見抜くことができるのかということになる。したがって、それは逮捕以前の任意の段階も含めて、あるいは別件で逮捕、起訴されて以降の、形の上で任意になった段階も含めて可視化をしておかないと虚偽自白は防げないと思う。

私自身は、虚偽自白を40年近く具体的な例を通して学ぶ中で、虚偽自白が一体どういうものかということについて一般の方たちが本当に知らない、そのことをしっかり認識してもらわないと、部分的な可視化は怖い、例外を設けるような形のものは非常に怖いと思っている。これは言わば、編集された形で目の前に登場するわけであって、その編集されたもので実態を見抜けるかどうかということを、私たちは慎重に判断しなければならないと思うし、是非とも、この可視化の問題に関しては、虚偽自白が一体どういう形で起こるのかを認識した上で決定していただきたいと思う。

渕野参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

通信傍受に関し、法案の第1の問題点は、通信傍受対象犯罪が大幅に拡大されている点である。現行の通信傍受法では、通信傍受の対象犯罪は、薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人の4つのカテゴリーに一応限定されている。もちろん、現行法でも、この4つのカテゴリーを合わせると対象犯罪は40種類にも及び、ごく限定された範囲にとどまっているとは言い難いところもあるが、対象犯罪は辛うじて組織的犯罪及びその周辺の犯罪の範囲に枠付けられているという説明を許容し得る範囲になっている。ところが、法案では、現住建造物放火、殺人、傷害、逮捕監禁、略取誘拐関連犯罪、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、爆発物取締罰則関係、児童ポルノ関連犯罪にまで対象犯罪が拡大されており、一般刑法犯のかなりの領域が侵食されたと言っても過言ではない。これに対しては、例えば詐欺罪とか窃盗罪について、行為態様を限定せずに通信傍受の対象とすると、余りにも傍受の範囲が広がり過ぎるという批判がなされてきた。そこで、法案では、この批判に応えて、当該犯罪があらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものに限るという要件を付加しているが、この要件は、指揮命令系統の存在及び結合体の継続性を求めていないなどの点で、適用を限定する効果をほとんど持たないと言わざるを得ない。

このように、法案では対象犯罪の範囲が一気に拡大しており、それだけプライバシー侵害の範囲が拡大することになる。しかも、対象となる犯罪には、詐欺や窃盗など必ずしも組織犯罪とは関わりのない、通常の市民が日常生活を送る中でうっかり関わってしまう可能性のある犯罪が含まれており、現行の通信傍受法と比べて飛躍的にプライバシー侵害の可能性が高まる。この法案の下では、捜査機関から窃盗や詐欺の嫌疑が自分あるいは自分の知り合いに掛けられたら、自分の通信が傍受される可能性があるわけで、仮に、私たち市民が、自分は窃盗や詐欺などの犯罪には絶対に関わらない、そういう犯罪は絶対に行わないと断言できたとしても、自分は窃盗や詐欺の嫌疑を絶対に掛けられないとは断言できないはずであるし、ましてや、自分の電話の相手方である友人、知人が窃盗や詐欺の嫌疑を掛けられないとは絶対に言えないわけである。そして、更に問題であるのは、市民の日常のプライバシーが深刻に侵害されるにもかかわらず、法案では、犯罪に関連しない会話を傍受された人に対しては、傍受した旨の通知がなされないことになっている点である。つまり、犯罪に関連しない会話を聞かれてしまった一般市民に対して、不服申立て等の救済手段が全く整備されていない点が問題であると考える。

このように、通信傍受という捜査手法は、元々市民のプライバシーを広く侵害する危険が大きい上に、さらに、傍受対象通信の特定が困難であるため、令状主義によるコントロールが本来的に難しいという難点を抱えている。捜索、差押えに当たって、場所及び対象物を特定した令状の発付を受けなければならないことは憲法35条が要求するところであり、通信傍受においては、犯罪関連通信が差押対象物に当たるので、傍受令状を発付する際には犯罪関連通信を特定しなければならない。しかし、通信傍受の場合は、対象となる犯罪は令状審査の段階ではまだ行われていないので、その審査は、将来、犯罪関連通信がなされる見込みがあるか否かという判断にならざるを得ない。その結果、必然的に特定性の審査は甘いものにならざるを得ないことになる。このような問題点が明らかになっているにもかかわらず、そのことに対する検証を行うことなく対象犯罪を拡大するとすれば、それは市民の日常生活の隅々まで捜査機関が入り込んでいってもよいのだと居直ることにほかならないように思う。

法案のさらなる問題点は、通信傍受の合理化として、通信事業者の常時立会いを不要とした点であり、立会いを不要とすることで、通信傍受の運用が爆発的に拡大することが懸念される。確かに、現行の通信傍受法では、傍受期間中、捜査官が通信事業者の施設に常駐しなければならず、立会人もその期間中、常時立ち会うことが要求されるために、通信事業者が立会人を捻出することにも困難が伴い、結果的に、実体的要件がそろっても実務運用上、傍受の実施までこぎ着ける数が少数にとどまらざるを得ないことは指摘されるとおりである。しかし、まさにそうだからこそ、捜査機関による濫用的使用を効果的に防止することができてきたと言える。現行通信傍受法は、常時立会いを要求することによって、物理的な障壁を設けたことで、通信傍受が有する性質上の弱点を補い、辛うじて捜査機関の暴走に歯止めを掛けることに成功してきたというふうに言えるかと思う。立会い要件を外すことは、このような微妙なバランスの上に成り立っている現行の通信傍受の在り方を根本的に変容させることになる。傍受令状請求に向けたハードルは一気に下がり、傍受の日常化ともいうべき雪崩現象が起こることが強く危惧される。

そして最後に、今回の法案全体を通じた問題点を2点指摘したい。

第1に、今回の法案では、協議・合意制度や証人保護なども提案されているが、そうすると、例えば、通信傍受を行って被疑者を特定し、傍受内容を示しながら他人の犯罪について情報提供することの協力を求め、そして他人の犯罪について供述をさせ、これを使って別の人物を裁判にかける。しかし、その際、協力者には証人保護の措置がとられるので、売られた他人は協力者の身元も分からないというようなことが起こり得る。このような手続の積み重なりは、無実の第三者を巻き込み、法廷での反対尋問権の行使を深刻に侵害し、冤罪を生み出す危険が極めて大きいと言わなければならない。個々の制度を単独で評価するのではなく、法案全体の危険な性格をトータルに把握する必要があることを強調したい。

第2に、今回の法案では、例えば取調べの可視化の例外事由を始め、捜査機関の裁量に委ねられるところが非常に多いことの問題性を指摘したい。通信傍受の点でも、要件を満たす結合体の行う全ての窃盗に対して通信傍受を実施するわけではない、日常的な窃盗に適用されるわけではないと説明されているが、刑事手続においては、捜査、訴追という国家の最もむき出しの暴力装置の発動を認めざるを得ないがゆえに、刑事手続法が行政当局による恣意的、濫用的な権限行使を招かないように、市民に対する不当な権限行使にならないように、立法府が法律によって権限行使を許す条件を厳格に限定し、かつ明確な枠付けをすることが求めらるということが、適正手続保障の要請の真の意味であると言える。適正に運用されるはずだという期待を掛けて、捜査・訴追機関の裁量に任せるという考え方は、刑事手続法の立法の在り方として根本的に間違っていると言わなければならない。

捜査機関は、権限を与えられれば、それを最大限使いたい集団であり、組織の属性としてむしろ当然の行動パターンである。通信傍受について、法律で拡大するけれども、運用は厳格に行われることを期待するというのは、一般化して言えば、捜査機関が濫用したくても濫用することができない制度にしなければ決して守られないと考えるべきかと思う。

その後、質疑に入り、次のとおり参考人の方々に質問いたしました。

浜田参考人に、取調べの録音・録画を行うことを被疑者に周知して取調べが行われるとすると、録音・録画されていることを被疑者が認識することによって、本当のことを言うということにつながっていくものと思いますし、また、虚偽の自白をしてしまう、またさせられてしまうということ、それぞれ両方の観点から、これをなくすことができるのではないかと考えられ旨を述べた上で、今後、取調べにどのような影響を及ぼすとお考えになられるのかについて伺いました。

浜田参考人からは、録音・録画をしているということを被疑者が十分承知した上で取調べを受けるということは大原則だと思う。その上で、全面可視化をせず、一部のみということであれば、それ以前のところで、既にもう犯人として振る舞わざるを得ないという状況の中に置かれている可能性があるので、それで録音を取りますよということで取られたとしても、虚偽自白を防ぐという機能を果たさないことになるのではないかと思うとのお答えをいただきました。

次に、西村参考人に、報道によると、振り込め詐欺などの特殊詐欺の平成27年度の被害額は476億8千万円で、3年連続で400億円を突破しているという状況で、警察の取締り強化により、被害額は減少していると言われていますが、特殊詐欺の被害者の年齢別では4分の3が65歳以上の高齢者であるという現状に触れつつ、今回の改正案により、振り込め詐欺等が通信傍受の対象犯罪に追加されましたが、多くの国民にとって極めて重大な犯罪である特殊詐欺については、首謀者等の背後関係を含む事案の解明が進むことを心から期待したいと思っていることを述べた上で、現行の通信傍受法が規定する4つの犯罪類型から、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものに限るとの要件を課して、殺傷犯関係、逮捕及び監禁、未成年者略取及び誘拐、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、児童ポルノ関係の罪を追加することとされていますが、このように対象犯罪が追加されることについて、今後課題とされる点等について伺いました。

西村参考人からは、対象犯罪が日本の現行法のように4種類に限定されているという国は、少なくともOECDの主要国を対象にした調査においては皆無で、今回の改正法で増設される罰条以外にも、広範に適用罰条は記載されており、捜査機関の施設において実施され、立会いの要件もない。令状発付件数は、日本は年間では42件で、年によって変わるが、イギリスで2800件、アメリカで3600件、ドイツで2万3千件、フランスで2万6千件、イタリアで13万件となっている。こうしたことからも、たった42件しか日本において重大犯罪として通信傍受になじむ事案がないとは思っておらず、国民の被害の声、数百億円の被害額を思い起こしただけでも、ようやく前進したと考えている。

課題については、通信傍受が適切に行われることをきちんと検証していくことであり、毎年の国会報告とともに、個々の刑事弁護士が通信傍受が適法であったかどうか、違法収集証拠の主張などを含めて適正にチェックしていき、裁判所もそれを注視していくことにより、具体的な裁判の事案の中で、違法な通信傍受の抑止効果につながることを期待したいとのお答えをいただきました。

次に、川出参考人及び渕野参考人に、捜査機関の施設における特定電子計算機を用いる通信傍受の実施に際し、立会人をなくし、捜査に従事していない警察官等による適正な捜査の指導体制を導入することにつき、通信事業者の負担を軽減し、各都道府県警察において、適正捜査の指導を行う部署の警察官による通信傍受の際の適正な指導確保に期待する声がある一方、通信の秘密という憲法に関わる事項であるのに、外部のチェックが働かないまま傍受を認めていくということは、国際的に見ても問題であり、警察官の立会いは実効的な監視にはならないという声もありますが、今後行われようとしている運用についての評価を伺いました。

川出参考人からは、立会人を置かないということについては、今回の新たな仕組みによって代替されていると考えるので、その上で、より慎重な措置をとるという意味で、警察の方で捜査に従事していない警察官が指導等に当たるのは望ましいことではないかと思う。それから、国際的な話ということで言えば、立会いを置くというのは必ずしも国際的にスタンダードになっている話ではないので、その点は特に問題はないものと思うとのお答えをいただきました。

渕野参考人からは、立会いについては、特定電子計算機によって完全には代替できないと考える。現在の立会いで、例えば該当性判断のための傍受、いわゆるスポット傍受をしているときに、犯罪に関連しないところの会話について、捜査官がこっそりとメモを脇で取っているというようなことはできないが、特定電子計算機で行うと、そこは誰も見ていないので、メモを取るというようなことがあり得るのではないかと考えている。それから、そういった違法なことを抑止するという手段として、違法収集証拠で排除するということが何回か議論で出ているが、その抑止というのは機能しないと考えており、現在の通信傍受法の運用でも、実際にこの通信傍受記録が証拠請求されることはほとんどなく、実際にどういう使われ方をしているかというと、これは特別部会の中で、警察関係者の委員自らが言っていることであるが、普通は証拠として使うのではなくて、傍受した会話を取調べで自白を取るために使うんだと、それが普通の使い方である言っていたことからも明らかである。したがって、そもそも証拠請求されないものを排除するとか排除しないとかいう問題にはならないので、排除法則による抑止というのは期待できないと考えているとのお答えをいただきました。


刑事訴訟法等一部改正案に関する質疑

2016年4月21日(木)

  • 法務委員会5
  • 法務委員会3

法務委員会が開催され、刑事訴訟法等一部改正案に関して質疑を行いました。

まず、今回の改正法案で規定されている取調べの録音・録画制度の導入について、対象事件としては裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件に限定されているものの、仮に本改正法案が成立し、また施行された場合、法施行後3年経過後に録音・録画の実施状況について検討を加え、必要があると認めるときには所要の措置を講ずることとされており、この検討については、制度の対象事件における施行状況だけではなく、それ以外の事件における録音・録画の実施状況をも踏まえて行うこととされていることから、取調べの全面可視化に向けて大きな第一歩が踏み出されるものであると考えている旨を述べました。

しかしながら、その一方で、被疑者の取調べの現場において取調べ官により自白を強要され、それが虚偽のものであったとしても、そのとおりに自白せざるを得ない状況となるようなケースの生じる可能性は今後もあるのではないかとの意見もあることから、このようなケースについて、取調べの録音・録画の際に取調べ官による自白の誘導部分についてはこれを行わず、自白部分の音声と映像が証拠として残るということになると、新たな冤罪を生じさせかねないのではないかという懸念に対し、どのようにお考えになるのかについて伺いました。

法務省からは、本法律案においては、裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件を対象として、一定の例外事由に該当する場合を除いて逮捕、勾留中の被疑者取調べの全過程の録音・録画を義務付けている。そのために、逮捕後に行われる弁解録取という手続があるが、その段階から被疑者が否認をしているのか、あるいは自白をしているのかを問わず、またその変遷経過も含め、対象事件について全ての取調べが録音・録画されることになるので、仮に例えば自白を強要する場面があれば、それも全て記録されることとなる。また、法律案では一定の例外事由を設けることとしているものの、この例外事由が公判でその存否が問題になったときには裁判所による審査の対象となり、捜査機関側の責任でこの例外事由を立証する必要があるので、捜査機関としては、例外事由を十分に立証できる見込みがない限り、例外事由に当たると判断して録音・録画をしないということはできない。したがって、自白を強要するなどのために、例外事由を恣意的に運用されるという余地はないと考えている。なお、仮にある取調べにおいて例外事由に該当したとしても、これは法律的にはその録音・録画義務が解除されるにとどまり、あくまでも自白の任意性がそれによって認められるわけではない。したがって、録音・録画されていない取調べで自白の強要があって、その影響でその後の取調べでも自白を維持したというような事情が主張された場合には、任意性があることの立証責任を検察官において、そのような事情がなかったことを立証できなければ、やはり任意性に疑いがあるとして、この自白調書などは却下されることになるので、そうした御指摘、御懸念は当たらないものと考えるとの御答弁をいただきました。

次に、今回の改正法案における取調べの録音・録画制度の例外規定について例えば、被疑者が録音を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときという場合について、その理由、内容が曖昧であるとの意見もあり、しかも、その判断権者は取調べ官とされているので、捜査機関が恣意的に取調べの録音・録画義務から免れる余地が残されているのではないかという意見もあることに触れつつ、検察や警察において行われている取調べの録音・録画の例外事由に当たるかどうかの判断を取調べ官の裁量に委ねることをどのように決定されたのかについて伺いました。

法務省からは、本法律案では取調べで録音・録画をするがゆえに、その取調べで供述が得られなくなって真犯人の検挙、処罰ができなくなることがないようにするという観点も一方で重要であるので、一定の例外事由を設けたところであり、取調べの録音・録画義務の例外事由の有無は、第1次的にはその取調べの時点を基準として判断されるべきものであるので、取調べを行う捜査機関が、それまでに収集した証拠や把握した事実関係、さらには当該取調べにおける被疑者の供述態度などを含む状況等に基づいて判断することとなる。しかしながら、捜査機関がこの例外事由に当たると判断して録音、録画をしなかった場合、公判で例外事由が実際にあったかないかということが問題となるので、その場合は、裁判所による審査の対象となる。したがって、捜査機関としては例外事由に当たると考えて録音・録画をしなかった場合でも、後の公判において、例外事由はなかったと判断されれば、その段階での録音・録画記録媒体がないということが、当該取調べでの供述調書の証拠調べ請求について、それが却下されるという結果を招くことになる。そうであれば捜査機関としては、この例外事由を公判で立証できる見込みがない限り、これを適用することはしないということになろうかと思われる。その上で、例えば、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときというのが非常に曖昧な要件であるという指摘がなされることがあるわけだが、この点については、この記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときというものは、それだけがこの要件になっているわけではなく、被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動によりという限定が掛かっている。これは、被疑者が記録を拒否した、あるいはその他外部に表れた被疑者の言動によって、記録をしたならば十分供述ができないと認められるときが例外事由となっているので、当然、捜査機関としては、この例外事由を適用するために、そのような外部に表れた被疑者の言動というものをきちんと証拠化しておいて、それをもって初めて例外事由が存在することを立証できるということになることから、取調べ官の裁量によって、この例外事由が恣意的に適用されるということはないと考えているとの御答弁をいただきました。

次に、4月19日の参考人質疑において、小池参考人からは、改正法案に規定されている取調べの録音、録画の例外事由に当たるかどうかは、取調べ官の裁量によって決まることについての懸念を示されましたが、このことに対する御所見について伺いました。

法務省からは、確かに、この例外事由というものが捜査機関の自由な裁量であったとすれば、基本的に全過程の録音・録画を定めているとしても、実質的には部分録画の義務付けであると評価されることになろうかと思う。そういったことからの意見も出されていたが、この例外事由については、一定の外部的な言動等を材料に客観的に、被疑者が十分な供述ができないと認めるときというものが例外事由とされているので、そのことについては、公判において審査を受けるということなので、取調べ官の全くの裁量であると、それゆえに部分録画にすぎないといった意見については入れられないところだろうと考えているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、捜査機関が例外事由に当たると判断して録音・録画をしなかった場合に、公判で例外事由の存否が問題となった場合、裁判所による審査の対象となり、捜査機関側の責任として、例外事由を立証する必要があるということで、これが恣意的に運用される余地はないとのことでしたが、一方で、19日の参考人質疑においては、例外規定に当たるかどうかは非常に抽象的、曖昧であり、被疑者の言動により、録画すれば自白しそうにないと捜査官が判断すれば録画しなくてもよくなるなど、取調べ官の裁量によって録音・録画をすることが決まることから、何も変わらないのではないかという懸念の声のあったことに触れつつ、録音・録画が有効なものとしてその機能を十分に発揮するためには、新たな冤罪が生まれないよう、捜査機関による安易な判断を許さず、適正かつ客観的な制度の運用を行っていただきたい旨を述べました。

次に、今回の改正法案の柱の1つとして、他人の犯罪事実の捜査又は訴追のため、必要なときに検察官と弁護人との間での協議を通じ、被疑者又は被告人側において他人の犯罪事実を明らかにするための重要な供述等の協力をすることと引換えに、検察官が特定の刑事事件を不訴追とすることや、特定の求刑をすることで合意できるとする制度、いわゆる司法取引が設けられていますが、現行の刑事訴訟法には、取引による事件処理について定めた規定はなく、これまでは、例えば検察官が被疑者の弁護士に対し、被害者との示談が成立すれば起訴猶予にすることを暗黙のうちに示唆し、弁護人がそれに応じるといった運用などを捉えて、実質的に取引による事件処理は、手続の各場面で既にかなり広範に行われているという指摘もなされたということに触れつつ、今回の改正法案に盛り込まれた合意制度は、そのような運用とは異なり、捜査、訴追及び公判を含む刑事事件の処理への被疑者、被告人による協力と、それに対する国家機関側からの一定の恩典の付与につき被疑者、被告人と検察官が協議を行い、それに基づいて合意をする仕組みを正式に導入しようとするものであり、具体的には、例えば首謀者の関与を明らかにするなどして捜査に協力し、見返りに刑事処分を軽くしてもらうといった取引的な要素を伴う証拠収集手段であるということを述べました。さらに、このような合意制度は捜査・公判協力型と言われており、アメリカなどでも導入されているものですが、被疑者が自らの罪を認めて刑の軽減を求める自己負罪型の導入は見送られたものと承知しており、対象となる犯罪は、租税に関する法律、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律又は金融商品取引法の罪など一定の財政経済犯罪や、薬物・銃器犯罪などの特定犯罪に限定されたことに触れつつ、今回の改正法案で導入しようとしている合意制度については、法制審議会の特別部会において、捜査・公判協力型と自己負罪型の両方が検討対象になっていたものの、最終的に捜査・公判協力型のみを創設することとなった経緯について伺いました。

法務省からは、捜査・公判協力型というものは、主として組織的な犯罪等の解明を目的とした制度であり、他方で、自己負罪型については、これは米国の例が顕著かと思うが、主として事件処理の効率化を目的としていると考えられている。法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会では、当初この2つの類型の合意制度を併せて検討していたが、我が国の刑事司法制度にこういった協議、合意という要素を有する手法を取り入れるのは今回が初めてであったということに鑑みると、まずは証拠収集方法として特に必要性が高いと考えられる捜査・公判協力型の制度を導入するのが相当であろうと考え、一方で自己負罪型の制度については、この捜査・公判協力型の制度を導入した上で、その運用状況等も踏まえながら必要に応じて、自己負罪型の制度が、我が国の刑事司法制度にどういった影響を与え得るのかということも見極めながら検討を行っていくのが適当であろうと考え、今回、捜査・公判協力型の制度をまず導入するということになった経緯であるとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、仮に自己負罪型の合意制度が導入されたとしたならば、少なくとも弁護人が選任されている事件においては、弁護士、弁護人が被疑者、被告人が自白をすることを取引材料にして、検察官から有利な条件を引き出すというやり方を行うのはあり得ることであると言われていますし、そのことを前提としても、供述の獲得という観点からは、このような制度が意味を持つのは、自白なしで有罪になるかどうかが微妙であり、かつ自白を得ることが難しい事件ということになるのではないかとも言われていますが、そのような事件が必ずしも多くない我が国の現状を考えますと、この自己負罪型の導入については、制度として定着するのかどうかという懸念もあり、今回、自己負罪型が見送られたのは、理解できるところであると思う旨を述べたうえで、まずは捜査・公判協力型の制度を導入し、制度としてしっかりと定着させた上で、自己負罪型については、事件処理の効率化を図るものということで、必要であれば今後検討していくということが適切ではないかと述べました。

次に、合意制度については、協議、合意といった要素を有する証拠収集方法の導入という点で初めてのものであり、対象犯罪は、この制度の対象とすべき必要性が高く、その利用に適しており、かつ被害者を始めとする国民の理解も得られるものと考えられる一定の類型の犯罪に限定することが相当とのことから、今回の改正法案では財政経済犯罪や薬物・銃器犯罪が対象犯罪とされ、殺人罪などの人命に関わる犯罪については合意制度の対象にはなっていないことに触れ、財政経済犯罪や薬物・銃器犯罪などより、殺人などの人命に関わる犯罪の方が、真相解明の必要性はより高いという考え方もあると思いますが、対象犯罪を財政経済犯罪や薬物・銃器犯罪などの特定犯罪に限定した趣旨、そして殺人などの重大犯罪を合意制度の対象としなかった経緯について伺いました。

法務省からは、合意制度の対象犯罪については、一定の類型の犯罪に政策的に限定することとしたが、その際の1つの考え方としては、合意制度の対象とすべき必要性が高く、その利用に適していて、かつ、特に被害者を始めとする国民の理解も得られやすいといったことがあり、具体的に、こういった観点から見た場合に、まず一定の財政経済犯罪については、1つには、組織的な背景を伴って行うことが少なくない上に、その密行性や正当な経済活動との区別を含めた事案解明の困難性から、この制度の対象とする必要性が高いこと、また、多数の者が関与し得るために、罪を犯した者から、他の者についての証拠を得るという合意制度の仕組みになじみやすいと考えられたので、これを対象犯罪とした。また、一定の薬物・銃器犯罪については、通常、犯罪組織が関与する密行性の高い犯罪類型であり、その全容解明には困難を伴うために制度の対象とする必要性が高いこと、また、多数の者が関与し得ることや、複数の者の間における禁制品の流通を伴うといった性格を持っているので、その罪を犯した者から他人の犯罪についての証拠を得るという合意制度の仕組みになじみやすいと考えられることから対象犯罪としたものである。加えて、財政経済犯罪と薬物・銃器犯罪は、このいずれについても直接的な被害者がいないか、あるいはいたとしても、被害が基本的に財産的、経済的なものにとどまるといった性格があるので、こういった制度について、合意制度の対象とすることについては国民の理解が得られやすいと考えたものである。他方で、例えば殺人犯罪を始めとする人の生命、身体を保護法益とするような重大な犯罪については、今申し上げた基本的な考え方に照らして、今回は対象犯罪としていないわけであり、例えば、他人の刑事事件の捜査、公判に協力したことを殺人罪等の人の生命、身体を保護法益とする重大な罪を犯した被疑者、被告人の処分等を軽減していくといったことの理由について、国民の理解が得られるかどうかについては、なお慎重な検討が要すると考えられたため、こういったものについては対象犯罪としていないとの御答弁をいただきました。

次に、合意制度の対象犯罪として改正法案に挙げられているのは、財政経済犯罪及び薬物・銃器犯罪に限定されたことについて、そのいずれについても、直接的な被害者がいないか、あるいはいたとしても、その被害が基本的には財政的、経済的なものにとどまることから、制度の対象とすることについての国民の理解を得られやすいとの考えからということでしたが、こうした特定犯罪を対象として、合意制度の運用が開始された場合、その状況等を踏まえ、重大犯罪をも今後対象とするような制度拡充を行うということを視野に入れておられるのかについて、現時点での所見を伺いました。

岩城大臣からは、合意制度について、現時点では、殺人罪等の人の生命、身体を保護法益とする重大な犯罪、これを対象犯罪とすることを検討しているわけではない。衆議院における修正により追加された、本法律案の附則第9条第2項において、合意制度を含め、取調べの録音・録画制度以外の本法律案全体につき、この法律の施行後3年を経過した場合において、それらの施行状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされている。法律成立後の施行状況等によるところであるが、合意制度の対象犯罪の在り方についても、必要に応じて検討がなされることはあり得るものと考えいるとの御答弁をいただきました。

次に、今回の改正法案による合意制度では、被疑者や被告人が、検察官に他人の犯罪情報を提供し、その見返りに起訴の見送りや軽い求刑などを求めることとしていますが、検察官が合意し得る行為としては、起訴を見送る不起訴処分のほか、略式命令請求、即決裁判手続の申立てや求刑に関する合意などが挙げられていることに触れ、これらの類型の合意が裁判所を拘束するものではないとしても、略式命令請求や即決裁判手続は、検察官の申立て等がなければ手続が取られることのないものであり、求刑も協力の動機付けになり得るので、これらの合意類型をも認めるべきである旨の意見が法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会に設けられた作業分科会における検討会の中で示されたことを述べました。そして、略式命令請求や即決裁判手続は検察官の申立て等がなければ、手続が取られることのないものですが、これらの当否は、最終的には裁判所による判断であり、求刑も裁判所を拘束するものではないと思われることから、これらを合意を内容とすることについて問題はないのかについて伺いました。

法務省からは、確かに、即決裁判手続の申立てや略式命令請求については、裁判所の判断を拘束するものではなく、検察官の求刑についても、これは量刑についての意見であるので、裁判所の量刑判断を拘束するものではないが、即決裁判手続と略式命令の手続については、検察官から申立てがあって初めて利用することが可能になるものである上に、その場合に、裁判所がそれらの手続によることを不相当であると判断することはまれである。また、求刑についても、実務上、裁判所の量刑判断において、検察官の求刑というものが重要な判断資料の1つとなっており、実際にも、例えば求刑よりも重い刑が言い渡されることというのはまれである。こういった実情があるので、裁判所を最終的に、法的に拘束するものではないとはいっても、いずれも、こういったことについては、被疑者に他人の刑事事件の捜査、公判に協力することの動機付けを与えるものとしては十分に実効性を有するものと考えている。もとより、当事者においては、裁判所の判断を最終的に法的に拘束しないということに重きを置いて、その合意はしないという判断に至る当事者も当然おられるかと思う。一方で、被疑者としても、これで最終的に合意するかどうかについては、この辺りの判断を拘束するものではないが、事実上はそのような効果を持っているということをどのように考慮して、最終的に合意をするかどうかを判断するわけであり、こういった不確実な合意を望まない者も存在するということをもって、この制度一般が機能しないということにはならないと思うので、こういった制度としては十分に、実効的に機能するケースが出てくるものと思っているとの御答弁をいただきました。

次に、捜査・公判協力型の合意制度の創設について、捜査関係者からは供述を得る手段が多様化するとの声も出ているようですが、その一方で、自らに科せられる刑罰を軽くするためにうそをついて無関係の人を引き込み、新たな冤罪の温床になりかねないとの指摘もあるということを承知している旨を述べたうえで、自らに科せられる刑罰を軽くするために、うそをついてまで無関係の人を引き込もうとすることが行われる可能性について、合意制度に係る制度設計の過程で、特に共犯者による供述等に代表されるように、これが他人を巻き込む危険性があるということを出発点として制度設計がなされてきたものと思いますが、今回の改正法案において、こうした危険性を除去するための制度上の措置をどのように講じられているのかについて伺いました。

岩城大臣からは、合意制度については、いわゆる巻き込みが生じないよう、制度上、次のような手当てをしており、まず、協議の開始から合意の成立に至るまで、常に弁護人が関与する仕組み及び、合意に基づく供述が他人の公判で使われるときは、合意内容が記載された書面が、当該他人にも裁判所にもオープンにされ、供述の信用性が厳しく吟味される仕組みを設けている。そのため、合意に基づく供述については、裏付け証拠が十分に存在するなど、積極的に信用性を認めるべき事情が十分にある場合でない限り、信用性は肯定されず、その結果、検察官としても、十分な裏付け証拠があるなど、裁判でも十分に信用される場合でない限り、合意に基づく供述を証拠として使うことはできないこととなる。さらに、合意をした者が捜査機関に対して虚偽の供述等をした場合には、新設の罰則による処罰の対象となることから、合意制度は虚偽の供述により第三者を巻き込むおそれに適切に対処できるものになっているものと考えているとの御答弁をいただきました。

次に、虚偽供述を防ぐため、衆議院の法務委員会において、与野党間の協議により、検察官が合意をするか否かを判断するに当たって考慮すべき事情として、合意に関係する犯罪の関連性の程度を明記することとし、合意のための協議の過程に弁護人が常時関与することとする内容の法案修正が行われたと承知しておりますが、弁護人にとって依頼者である被疑者、被告人の供述が、真実かどうかを確認する手段は乏しいのではないかとの意見もあり、その上、弁護人は依頼者の利益実現を目指さなければならない立場にあるので、自身の依頼者の虚偽供述を防止することは期待できないという意見もある旨を述べたうえで、衆議院における修正点の実効性について、どのように受け止めるのかについて伺いました。

法務省からは、政府案においては、合意の対象となる事件に関し、被疑者、被告人の犯罪と他人の犯罪との間に共犯関係など、何らかの関連性があることは、法文上は必要としていなかった。これに対し、何ら関連性もない場合にも合意することができるとすると、例えば、検察官が勾留中の被疑者との間で合意をして、留置場の同房者から犯行告白を聞いた旨の供述を得るといったようなことも可能となって、いわゆる巻き込みの危険が高くなるのではないかといった懸念が示されていたところである。そして、衆議院における修正では、こういった巻き込みの危険に対する懸念も踏まえながら、被疑者、被告人の犯罪と他人の犯罪との間に、どの程度の関連性があるかは、信用性のある証拠が得られる見込みの程度と関連し得ることなどから、これを考慮事情として明記するものとなったと理解している。これにより、合意制度が利用される場合として基本的に想定されるのは、共犯事件など両犯罪の間に関連性が認められる場合であるということが示されることになったものと理解している。もう1つ、政府案においては、合意をするための必要な協議について、基本的には検察官、被疑者、被告人及び弁護人、この三者で行うこととしながらも、被疑者、被告人及び弁護人の双方に異議がない場合には、検察官はいずれか一方のみとの間で協議の一部を行うことができるとしていた。弁護人が協議に関与することとしている趣旨は、被疑者、被告人の利益を保護しようとするところにあるわけだが、弁護人が関与することはいわゆる巻き込みの危険の防止にも資するものと考えている。したがって、衆議院における修正は、いわゆる巻き込みの危険の防止についてより一層の確実を期するという観点から、協議には弁護人が常に関与しなければならないこととしたものと理解しているとの御答弁をいただきました。


刑事訴訟法等一部改正案に関する参考人質疑

2016年04月19日(火)

  • 法務委員会2
  • 法務委員会1

法務委員会が開催され、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に関し、大変御多忙のところ御出席いただきました、日本弁護士連合会司法改革調査室副室長の河津博史氏、東京大学大学院教授の大澤裕氏、弁護士の小池振一郎氏、そして、布川事件冤罪被害者の桜井昌司氏の4名の参考人の方々に質問いたしました。

まず冒頭に参考人の方々より、御意見をお述べいただきました。

河津参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

今回の刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について、日本弁護士連合会は、全体として刑事司法改革を確実に一歩前進させるものと評価し、本法律案が充実した審議の上、早期に成立することを強く希望している。

日本弁護士連合会では、かねてより、警察や検察の捜査において不適正な取調べが行われることがあり、公判においても供述の任意性や信用性が必ずしも的確に判断されておらず、それらの結果、冤罪がつくられていることを我が国の刑事司法制度が抱える深刻な問題として認識していた。

不適正な取調べを防止し、冤罪を防ぐ必要性は一部の事件に限られるものではなく、また、不適正な取調べは、被疑者が逮捕又は勾留されている間に行われるとも限らないことから、日本弁護士連合会は、基本的に全ての事件の全ての取調べの可視化を求めてきたし、これからも求め続けていく。

過去の冤罪事例の多くは、不適正な取調べを原因とするものであり、それらの冤罪事例には、冤罪被害者本人が虚偽の自白を強要された類型の事例のほか、共犯者とされた人物が犯行に関与したとする虚偽の供述を強要され、又はそのような供述に誘導された類型の事例がある。

いずれの類型からも共通して導かれる教訓は、供述証拠は後から作り上げることができるものであるということ、特に取調べで圧力が加えられたとき、捜査機関の筋書に沿う内容の供述証拠が作られやすいこと、それゆえ、供述証拠に基づく犯罪事実の認定は、相当慎重に行わなければ、冤罪をつくる危険が大きいということである。

証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度は、検察官が不起訴処分や特定の求刑をすることと引換えに、被疑者、被告人が他人の刑事事件についての供述等をする旨の合意をすることを認めるものである。このように、不起訴処分や軽い求刑という恩典と引換えになされた供述は捜査機関の筋書に沿ってなされる可能性が一段と大きいものであり、供述証拠の中でも特に厳重な警戒を要する。

検察官が、訴追裁量又は保釈意見や求刑意見を利用して、共犯者とされる者に恩典を与え、それと引換えに他人の刑事事件についての供述等を求めるという事実上の取引は、これまでも行われていたのが実情であり、取引の結果として供述がなされたという事実は、標的とされた被告人やその弁護人には知らされず、通常、知ろうとしても知ることができない。その場合、裁判所は、取引の結果としてなされた供述について、そうであることを認識しないまま信用性判断をすることになり、これは事実認定を誤らせる危険が非常に大きいと言わなければならない。

このような、検察官が恩典を約束ないし示唆して他人の刑事事件についての供述を求める事実上の取引について、これまで実務の現場では必ずしもその違法性が明確にされてこなかったように思われる。しかし、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度が創設されるのであれば、その要件を満たさない事実上の取引は違法であると解するべきで、そうでなければ、本法律案が条件を限定し、合意内容書面によって、合意をした事実を明らかにする義務を検察官が負うことを前提として、合意を認めた意味が乏しくなってしまうからである。

また、合意に基づく供述は、その信用性を特に慎重に吟味しなければならないことに異論はなく、供述の信用性判断に当たっては、初期供述が重要であることが従前から指摘されている。供述者が最初はどのように供述していたのか、合意の結果、供述内容がどのように変わったのか、ほかの証拠と整合するように供述を修正した場面があるか等を事後的に検証できるようにするためにも、取調べの可視化を徹底して、供述経過を客観的に記録するべきである。

今回の刑事訴訟法改正案は、取調べの録音・録画の義務付けの対象を一部の身柄事件に限定し、また複数の例外事由を設けているなどの点で不十分と言わざるを得ない。しかし、取調べの録音・録画義務を、対象事件については全過程を原則とする形で刑事訴訟法に規定することは、踏み出すべき第一歩であると考える。

日本弁護士連合会は、本法律案が成立した際には、改正法の内容や弁護活動上の留意点を会員に周知し、十分な弁護が提供されるよう研修等に努める。また、施行3年後の見直しを見据えて、義務化対象事件以外の取調べが、どの程度可視化されるか、例外規定がどのように運用されるか、可視化されなかったときにどのような取調べが行われるか、可視化された取調べ、可視化されなかった取調べ、それぞれにおける供述の任意性等について裁判所がどのような判断をするか、合意に基づく供述の信用性について、裁判所がどのような判断をするか等について、継続的に情報を収集し、注視していく。

大澤参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

今回の刑事訴訟法等の一部を改正する法律案は、取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査、公判の在り方の見直しを基本的な課題とするものである。これまでの我が国の刑事司法には、長年の実務の積み重ねを通じて形成されてきた運用上の特色として、取調べ及び供述調書に多くを依存する傾向が認められた。そのような日本型とでも言うべき刑事司法の在り方に対し、一定の見直しが必要であるということについては、刑事訴訟法を研究する者の間で共通認識が存在していたように思う。

今回の法律案については、とりわけその核となる取調べの録音・録画制度について、それが十分であるかどうか評価が分かれているが、我が国の実務に深く根を下ろしてきた日本型の刑事司法の在り方を、刑事司法の機能を大きく損なわないという前提の下で、一朝一夕に大転換するということは、直ちに現実性があるとも言い難いところもあり、今回の法律案は、それを大きいと見るか小さいと見るかは別として、あるべき見直しの方向に一歩を踏み出すものとして評価できるものであると思われる。

取調べの録音・録画制度は、取調べの適正を確保しつつ、被疑者の供述の任意性等が争われた場合にその的確な立証ができるようにすることを目的としており、これに照らせば、できる限り広く録音、録画を義務付けるということが目的にかない、法律案の録音・録画制度は余りに限定的であるとの見方も生じ得るが、次の2つの点にも留意が必要であるように思われる。

第1に、録音・録画は、取調べの適正を確保し、供述の任意性等の的確な立証ができるための極めて有力な手段であるが、唯一絶対の手段であるというわけではない。また、取調べも、適正に行われる限り、捜査手段としてその機能を否定されるべき理由はない。したがって、録音・録画義務の範囲は、その有用性とともに、録音、録画に伴う人的、物的なコストのほか、録音・録画が取調べの機能に与える影響をも考慮し、最終的には政策的に定められるべきこととなる。

そのような観点から見たとき、録音・録画義務の対象犯罪を、類型的にその必要が特に高く、外延が明確な一定の犯罪に限定するということも一概に不合理とは言えないと思われる。また、そのように類型的に必要性が高い犯罪を対象犯罪とした場合、その取調べについては全過程を録音・録画することが原則となる、これが筋であるはずであるが、録音・録画が取調べの機能を特に損なうような場合について、一定の例外を設けるということも、先ほどの考え方からすれば直ちに否定されることではないということになる。

第2に、録音・録画の義務が及ばない取調べであっても、取調べ自体は適正でなければならず、供述の任意性を損なうものであってはならない、そして供述の任意性が争いとなったときには任意性は訴追側が立証しなければならない、この点は録音・録画義務が及ぶ場合であろうが、そうでない場合であろうが同じだという点である。

録音・録画の記録媒体は、現在、任意性の立証を的確に行う最良の手段と言え、他方、被疑者段階の刑事弁護の拡大、充実が進む中、捜査機関による不適正な取調べが認められた場合、弁護側において効果的に任意性を争い得るよう、そのための手掛かりを残す工夫が様々に試みられるようになっている。そのような中、訴追側にとっては、録音・録画義務が及ばない取調べについても、任意性が争われた場合に備えて録音・録画することを積極的に考えざるを得ない、そのような状況が生まれてきつつあるように思われる。実際、検察においては、近時の実務において、取調べの状況の立証のために最も適した証拠は、取調べを録音・録画した記録媒体であると認識をし、捜査段階における供述の任意性、信用性等をめぐって争いが生じた場合に、同記録媒体による立証が求められているとの認識に基づき、裁判員制度対象事件と検察官独自捜査事件以外の事件でも、必要と認める場合について録音・録画の試行が進められている。

改正案が対象事件とする裁判員制度対象事件と検察官独自捜査事件は、経験的に取調べ状況をめぐる争いが比較的生じやすい事件である一方、前者は取調べ状況について裁判員にも分かりやすい立証が求められるという点で、また後者は、被疑者が異なる捜査機関の取調べを受ける機会がなく、取調べ状況について異なる捜査機関に対する供述状況を踏まえた判断ができないという点で、録音・録画を義務付ける必要が類型的に特に高く認められる。

しかし、そのような犯罪にとどまらず、新時代の刑事司法制度特別部会あるいは衆議院法務委員会の附帯決議が述べるように、録音・録画がより広く積極的に行われる運用が期待できる状況にあることも踏まえれば、法律案のような対象事件で制度化を図りつつ、さらに全体的な運用を踏まえた見直しを加えていくというのが、現時点においては最も現実的な選択肢ではないかと思う。

次に、協議・合意制度は、いわゆる捜査・公判協力型の司法取引の性格を持つ制度であり、このような制度について最も問題とされているのは、合意をした被疑者、被告人によって、他人の刑事事件についてなされる供述の信用性です。協議、合意をした被疑者、被告人が供述するのは、多くの場合、共犯関係にある他人の刑事事件についてであると考えられるが、共犯者の供述は、一般に、自己の刑事責任を軽減するため他人を引き込んだり、他人に責任転嫁する危険があるということが認められている。また、合意した被疑者、被告人による供述は、自己の刑事事件に対する有利な扱いを求めて行われた供述であるが、一般に、約束や利益誘導による自白は、類型的に虚偽のおそれが大きく、任意性に欠けるとされている。そこで、その趣旨に照らすと、同じ供述を他人の刑事事件について用いるという場合にも虚偽のおそれが大きく、証拠として用いることが許されないのではないかという問題が生じてくることになる。

しかし、既に指摘されているように、合意制度には、合意によって虚偽の供述が誘発されることを抑制する一定の仕組みと、他人の刑事事件において虚偽供述による誤った事実認定が生じないようチェックするための一定の仕組みが用意されていると言ってよいと思われる。

その第1は、協議、合意の過程において、被疑者、被告人の弁護人の関与が必要的とされている点である。もとより、被疑者、被告人の弁護人は、合意によって得られた供述により刑事責任を追及されることになる他人を保護すべき立場にあるわけではないが、被疑者、被告人の代理人、保護者としての立場だけでなく、裁判の公正及び適正手続の実現に努めるべき客観的な立場も併有しているはずである。そのような弁護士が関与するということは、その関与がない場合に比べて、虚偽供述の誘発に抑止的な役割を果たし得ると思われる。

第2に、公判廷での虚偽供述には偽証罪が、また、公判廷外での虚偽供述には新設される罰則規定が適用されることにより、虚偽供述は一定程度抑制されるはずである。

第3に、合意が基づく供述が他人の公判で用いられる場合には、同時に合意内容が記載された書面が取調べ請求され、刑事責任を追及されることとなる他人にも、またその事件を審理する裁判所にも、合意に基づく供述であることが明らかにされ、その下で反対尋問による信用性の吟味がなされる。また、合意に基づく供述は、利害関係ある者による供述として、信用性に危険があるものとして扱われるので、裁判所においても意識的に信用性の厳格な評価の行われることが期待される。検察官においても、そのことを自覚すれば、裏付け証拠の十分な収集に努め、それが得られない場合には合意に基づく供述を用いることは控えるのが通常であろうかと思われる。また、約束、利益誘導による自白との関係では、そのような自白が不任意自白として排除されるのは、約束、利益誘導によって不当な心理的圧迫、影響を受けた結果、虚偽の供述を行うおそれが認められるような場合だと言え、その点に鑑みると、法律に定められた手続に従い、弁護人も関与した下で行われる協議、合意は、そのような不当な心理的圧迫、影響をもたらす場合とは区別が可能であると思われる。

これらのことを考慮すれば、合意による供述も裁判所の自由心証による信用性評価に委ねてよい程度の信用性の手続的な担保は備えていると見ることが可能であると思われる。

小池参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

法案では、全過程可視化の例外規定を幾つも設けており、可視化すれば自白が得られそうにないと取調官が認めた場合には録音・録画しなくていいという例外規定で、これが活用されると、要するに、自白しそうにないときは取調べしない、録画しない、自白しそうなときは録画するという、単に仕分するだけであって、例外規定でも何でもないと思う。

このような形で取調官が例外規定に当たるという形で録画しなかったとなれば、今度は、そのときの自白調書を証拠申請しても、録画がなくてもオーケーということになるわけであり、法案は部分可視化を容認する役割を果たしている。

法案は、自白調書を証拠申請する以上、その任意性が争われれば、そのときの録音・録画を証拠申請しなければならないとされているので、一応義務として録音・録画が証拠申請されることになる。ビデオ録画の恐ろしさというものは、自白調書の任意性判断という名の下で、義務としてビデオ録画が堂々と証拠採用される、これがどんどん増えていくということになれば、事実上、これで裁判員たち、裁判官も含めて心証を取ることになるので、実質的証拠として機能するだろうと思う。

捜査段階ではなくて、公判廷で心証を取る近代刑事司法にしようということで裁判員裁判が始まったはずなのに、法案は、ビデオ録画を法廷に次々と証拠提出することによって、公判中心主義の破壊に道を開くものであり、捜査段階の取調べに依存する方向への逆戻りになるわけである。

ビデオ録画が裁判員裁判で、任意性立証のためだけでなく実質証拠としても使えるという方向がどんどん進んでいけば、本当に刑事司法というものはどうなるかということで、大変なことになるだろうと思う。恐らく、この法案を推進してきた人たちも、ビデオ録画がこのような形で使用されるとは想定していなかったのではないか。全過程可視化が現実に実現することが前提で、この法案を推進してきたと思うが、実際には抜け穴だらけのこの法案が成立しても、むしろ悪くなるだけだと思う。一歩前進どころか、むしろ改悪になると言わざるを得ない。

次に、司法取引についてであるが、これまでも司法取引は事実上あった。司法取引が合法化されれば、不起訴になるという確実な保証が得られるので、他人について捜査官の期待に沿うように供述しようというインセンティブがより強く働き、冤罪が格段に増えると思う。

弁護人の同意が必要だとされているが、弁護人は依頼者の利益のために取引に応じざるを得ず、その依頼者が言っていることはどうかなと思っても、不本意ながら冤罪に加担するおそれが出てくる。

自らが有利な取扱いを受けるために他人を罪に陥れる危険が、司法取引制度には内在していると言わざるを得ない。法案で司法取引を合法化することになると、事実上、今まで行われていた裏取引というものも、無感覚になってますます増えるということになると思う。

桜井参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

警察に全面可視化を義務付けるのではなくて、捜査官の裁量によって録画しなくてもよいというような可視化法案を与えて、まともな可視化をするとは思えない。

可視化の問題というのは、検察庁ではなくて警察が問題である。警察が殴ったり蹴ったり脅したりうそを言ったり、身体的、精神的に苦痛を与えて、うその自白をさせるわけであるが、その苦痛を映像にしないで、なぜ犯人として自白できるのか、あるいは犯人として語れるのかは明らかにできないと思う。検察庁の可視化というのは、あまり問題にしておらず、警察が全てを可視化すれば、冤罪は格段に防げるだろうと思っている。

冤罪の苦痛と困難、苦難というのは、罪の重さではない。僅かな微罪でも人生が狂ったり家庭が崩壊したり、本当に人生そのものを失ったりするのである。

また、一部可視化の引換えのようにして、他人を冤罪に引き込む司法取引には全く反対である。

冤罪被害者として、残念ながら、警察の悪辣さを知ってしまったために、警察を信用するという気持ちになれない。警察官の立会いで盗聴を防ぐなどというような修正ができ上がること自体信じられない。

そして、合意のための協議の際に弁護人が常時関与することとしたということが一定の歯止めになるとおっしゃった方がいたが、取調べそのものに立ち会えるのか、弁護士のいないところで、検察官と調べられる者が一定の合意の話をして、その後、弁護士さんが来てくださいといって、果たして冤罪を防ぐことができるのであろうか。

どれだけ国民が冤罪に苦しんだら、立法府は民主主義の最高の立場として冤罪を防ぐ法律を作ってくれるのか。冤罪被害者は、ただ冤罪をなくしてほしいと願っているだけである。

その後、質疑に入り、次のとおり参考人の方々に質問いたしました。

河津参考人及び桜井参考人に、取調べの録音・録画の試行により、捜査機関が自白を強要できなくなったことで、被疑者が黙秘がしやすくなったという指摘があることについて触れ、録音・録画の義務化により黙秘が増加するおそれがあるということであれば、捜査機関としては、自白頼りの捜査手法から脱却し、物証などの客観的な証拠に基づいて捜査をすることが求められるのではないかと思われる旨を述べたうえで、今回の改正法案により導入される取調べの録音・録画制度によって、取調べに与える影響と、今後懸念される事項について伺いました。

河津参考人からは、取調べの録音。・録画がなされるようになれば、黙秘権を行使することができる場面というのは確かに増えるだろうと思われるが、これは、これまで被疑者が黙秘権を行使した場合に、それに対して脅迫的な言動が行われたり、弁護人に対する非難が行われたりするということがあったのが現実であることによる。録音・録画された取調べの下では、そういった不適正な行為というのは相当程度減るのではないかと思われ、黙秘権の行使が増えて、供述証拠によって有罪を立証することが困難になった場合、捜査機関としては、御指摘のとおり、当然、より客観証拠を重視する方向に移行するのではないかと考えている。

懸念するべき点としては、取調べの録音・録画や、あるいは弁護活動の充実化によって自白を獲得することが困難になった代わりとして、関係者、共犯者の供述によって人を処罰するという傾向が強まるのではないかということであり、そういった関係者が、もちろん対象事件の身柄拘束された被疑者であれば、それも録音・録画されるということによって、不適正な取調べは一定程度抑止することができると思われるが、これが在宅被疑者であって、録音・録画の義務化の対象でないという下においては、そういった取調べによる冤罪の危険というのは残るのではないかと考えている。そういった意味でも、在宅被疑者を含めた取調べの可視化の徹底が行われるべきであると考えているとのお答えをいただきました。

桜井参考人からは、確かに、可視化されれば黙秘しやすくなると思うが、そもそもこの考えが逆転していると思っており、なぜ犯罪捜査を自白によって解明しようとするのかということが不思議で、捕まえて、殴って蹴って、やったと言わせて、はい、それで一件落着、それで有罪だというのなら裁判所なんか要らない。そもそも、警察が逮捕した時点で持っている証拠で、犯人と断定できないようだったら逮捕しては駄目ではないのか。

懸念というか、警察を信じたいが信じられない立場にあるので、彼らに抜け道を与えるような法律である限りは、どんどん抜け道で同じような冤罪がつくられるだろうという感じがする。そして、中途半端な可視化というのは賛成できないものと思っているとのお答えをいただきました。

次に、大澤参考人及び小池参考人に、今回の法案の可視化の例外規定については、十分な供述が得られそうにないと取調官が判断したときは録音・録画をしなくてもよいとされており、取調官の裁量に任されているというところがありますが、この点で、取調官はどのような役割を果たすとお考えかについて伺いました。

大澤参考人からは、例外の中の、被疑者が十分な供述をすることができないと認めるかどうかというのは、取調べをしている段階では、取調官だということになろうかと思うが、それが自由な判断なのかといえば、これは義務を免れるための理由であり、後に争いが生じた場合には、例外事由に当たったということは、今度は裁判所の目で判断されることになるので、例外事由に当たるということが、単に主観的に捜査官の判断としてできるということではなく、客観的な裏付けを持ったものとして、後に争いになれば、それを裁判所に対して立証できるようなものとして行っていくということが求められることになるはずである。その意味で、決して主観的、恣意的な運用ということではなく、それなりに客観的な運用がされるはずだと考えているとのお答えをいただきました。

小池参考人からは、捜査官の裁量によって、例外規定に当たるかどうかが決まるわけだが、それを認定するのは裁判所、検察側が例外に当たるかどうかを立証する責任があると言われている。取調べ室の最初にビデオが回っていて、それから例外規定に当たるかどうかという判断がされるというのは、確かに一般的かもしれないが、結局、例外規定に当たるかどうかというのは非常に抽象的、曖昧であるから、被疑者の言動により、録画すれば自白しそうにないと取調官が判断すれば録画しなくていいわけで、言動というのはしぐさでもよく、ちらっとビデオを見て嫌そうな顔をすれば、これはビデオがあるから自白しそうにないんだなと捜査官が思ったので、それから後は録画しなかったということが通用するのかについては、裁判所の判断であるが、裁判所はそんなに頼りになるかということである。

これまでの冤罪事件の例を見ても、どうしても有罪にしたいと思えば、物的証拠が薄い事件は、もう自白調書しかないわけであり、それを採用しない限り有罪にできないという場合には、裁判所が例外規定に当たらないかもしれないなと思っても、その自白調書をどうしても採用したいと思えば、これは例外規定に当たるので録画しなくてもいいということで、自白調書を採用することになるだろうと思う。そういう裁判所の実態、冤罪がつくられた実態というものを見れば、例外規定に当たるかどうかは明白ではないので、必ず問題になって、抜け道になるだろうと思うとのお答えをいただきました。

次に、河津参考人、大澤参考人、そして小池参考人に、合意制度の手続適正化を図るため、協議に至る過程の記録を行い、保管することなどについては、法制審議会、の特別部会においても議論となっており、そこでは、その運用は検察官に任されることになっており、記録がどこまで詳細なものになるのか、また、協議の内容が逐一記録されるのかについては、必ずしも明らかではないとの声もあるとともに、虚偽の供述を防ぐため、協議に至るまでの取調べ及び協議の合意に至る過程、そしてその録音・録画を行い、保管をすることが必要であるという意見もあったことに触れ、このような意見についてのお考えを伺いました。

河津参考人からは、合意に基づく供述によって人を有罪にすることについては相当慎重である必要があると思う。そして、この合意に基づく供述の信用性について、本当に慎重な判断をするためには、やはり取調べの可視化を徹底するべきだと思う。取調べの可視化を徹底することによって、初期供述から合意後の供述、その供述がどのように変わったのかということを吟味できるようにすることが重要なのではないかと考えているとのお答えをいただきました。

大澤参考人からは、協議の過程で合意によって得られる供述に虚偽が含まれるようになることを防ぐという観点から、きちっとその過程を記録しようということについて、問題意識としては非常に分かるところもあるが、そこで、具体的にどういう形で虚偽が生まれてくるのかというところが1つの問題かと思われる。検察官の働きかけによって何か強引な誘導等がなされるのではないかとか、あるいは利益を求める余り、被告人の側から、何か虚偽を言ってもいいような取引を持ちかけるのではないかということが問題であるとすると、協議の過程には、全て弁護人の立会いが必要的となっており、本当にこの人がしゃべっていることが本当かどうかということを、弁護人が逐一確認するというのは、非常に難しいのかもしれないが、その協議の過程でおかしなことがされるかどうか、そこの部分を担保するという意味では、弁護人が関与している意味というのは、それなりに大きいと思うので、それによる検察官の方からの不当な働きかけということは恐らく排除されるであろう。

あとは、どの程度の記録を残しておくのかということで、現在は、書面では記録を残す、保管するということが言われているということかと思うが、それはそれで結構なことなのかと思っているとのお答えをいただきました。

小池参考人からは、司法取引の協議にどの段階から入るかというのは、非常に曖昧であり、被疑者の取調べの多分どこかから、何かきっかけがあってということになるのであろうが、どこから協議なのかということは明確ではないので、弁護人がどこから同席するのかということもはっきりしないという問題点がある。

それから、記録といっても完全に録画しているわけではないので、どこまでどの程度記録されるかということについても非常に疑わしいと思う。また、この司法取引は、ターゲットとされる事件との関係は、共犯関係を想定しているという政府答弁があったが、法案上は共犯関係に全く限定されていない。共犯関係を想定しているのであれば、共犯に限定するというふうに法案を修正しなければならないと思うとのお答えをいただきました。


刑事訴訟法等一部改正案に関する質疑

2016年4月14日(火)

  • 法務委員会2
  • 法務委員会1

法務委員会が開催され、継続審議となっている刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について質疑を行いました。

まず、本改正案は、刑事手続における証拠の収集方法の適正化及び多様化並びに公判審理の充実化を図るために、取調べの録音・録画制度、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度、証人等の氏名等の情報を保護するための制度等を創設するとともに、犯罪捜査のための通信傍受の対象事件の範囲の拡大、被疑者国選弁護制度の対象範囲の拡大等を講じようとするなど、多岐にわたる内容を含んでいることについて触れました。

また同時に、良好な治安を確保し、国民の生命、身体及び財産を守ることは国の基本的な責務であり、政府の最も優先すべき取組の1つであり、そして、「世界一安全な日本」創造戦略の施策の1つとして刑事訴訟法等の改正内容が盛り込まれていますが、刑事司法の目的は、現行の刑事訴訟法第1条に規定されているとおり、適正手続の保障を堅持しながら個々の事実、事案の真実そして真相を明らかにして適切な処罰を実現することにあります。その過程において、人権への保障につき十分に配慮されること、そして国民の理解、納得が得られるような刑事司法手続にしていくことが大切であると考えます。創造戦略における様々な施策を推進していくことはもちろんですが、今回の法改正により、適正な刑事司法の確立を図っていくということが今後求められていくことではないかとの指摘をいたしました。

そこで、今回の法改正の目的とするものとして、誤判を防止する改革が挙げられると思いますが、誤判を生みやすい、任意性のない自白を防止するために、取調べへの弁護人の立会いや、捜査段階での弁護側への証拠資料開示も必要との議論は法制審議会、そして新時代の刑事司法制度特別部会の方でも行われておりましたけれども、結局、制度化は見送られている状況であるとの旨を述べたうえで、今回の法改正により、誤判を防止するということに関しては、どこまで進展させていくことができるのか、できるとお考えなのか、岩城大臣に伺いました。

岩城大臣からは、法制審議会における審議の出発点というべき検察の在り方検討会議の提言や法制審議会の諮問でも指摘されているとおり、現在の捜査、公判は取調べ及び供述調書に過度に依存した状況にあり、このような状況は取調べにおける手続の適正確保が不十分となったり、事実認定を誤らせるおそれがあると考えられる。本法律案は、そのような状況を改めるため、証拠の収集方法の適正化、多様化と公判審理の充実化を図り、より適正で機能的な刑事司法制度を構築しようとするものであり、誤判防止に十分に資するものと考えている。本法律案が成立した場合には、刑事司法はより適切な証拠によって、より適正に事実認定がなされる方向、すなわち誤判を生まない方向に進んでいくことになると考えている。もとより、そのためには刑事司法に関係するものに、本法の改正の趣旨を踏まえた適正な運用を着実に行っていくことが求められるし、今後の社会情勢の変化や運用状況を踏まえつつ、更なる改善を行っていく必要もあるものと考えているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、今回の法改正によりまして公判審理の充実が図られ、誤判が繰り返されることのないように求められるものであると考えること、そして、2011年3月31日に出された、検察の在り方検討会議の提言である「検察の再生に向けて」の中で、今後、国民の安全、安心を守りつつ、冤罪を生まない捜査、公判を行っていくためには抜本的な、また構造的な改革として、追及的な取調べなどによらずに供述や客観的証拠を収集できる仕組みを早急に整備し、取調べや供述調書に過度に依存した捜査、公判から脱却するよう、その在り方を改めていかなければならないものと考えるとの指摘がされておりましたが、今後は適正な事実認定を追求していくということによって、今後の誤判防止に資するものになると考えているとの旨を述べさせていただきました。

次に、本改正案では、施行後3年を経過した場合において、取調べの録音・録画等の実施状況を勘案し、取調べの録音、録画等に関する制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるときには、その結果に基づく見直し規定が置かれているということからも、対象事件の範囲拡大ということを今後、考えておられるのかについて伺いました。

法務省からは、御指摘のとおり、本法律案の附則の第9条において、取調べの録音・録画制度について、施行後3年が経過した後に必要な見直しを行う旨の、いわゆる検討条項を設けている。これの趣旨であるが、法律案の録音・録画制度は、対象事件について、捜査機関に対して原則として取調べの全過程の録音・録画を義務付けることを内容とする、これまでにない新しい制度であり、その効果であるとか、課題については、実際に制度を運用してみなければ分からないという点も少なくないわけである。そこで、対象事件の範囲の在り方ということも含め、この見直しの規定があるが、現段階で見直しの方向性についてまで定めることとしてはいない。いずれにしても、捜査機関の運用によるものも含め、取調べの録音・録画の実施状況等を十分に勘案しつつ、録音・録画制度導入の趣旨を十分に踏まえて検討を行うことが重要であると考えており、これまでの経緯等も踏まえると、この取調べの録音・録画についての取組が後退するようなことはないものと考えているとの御答弁をいただきました。

次に、検察における録音・録画制度の機器配備状況についてということで、検察における、平成27年度の4月から9月までの6か月間の裁判員裁判対象事件については、1555件のうち1426件と、92.1%の割合で全過程の取調べの録音、録画が実施されていることに触れたうえで、検察における取調べの録音、録画に対応した機器の平成26年、27年、28年、それぞれの1台当たりの価格、また平成26年、27年、28年、それぞれ何台ずつ購入し、現在何台ずつ設置されておられるのかについて伺いました。

法務省からは、平成26年度においては120台で、この単価が約175万7千円であり、27年度には673台を購入している。このときの単価はずっと下がって、約51万7千円となっている。なお、平成28年度予算で措置された録音・録画機器の台数は130台で、単価は約84万6千円となっているとの御答弁をいただきました。

次に、機器の更新や、新たな配備などのために関係予算の確保、充実が必要になると思われますが、検察での取調べの録音・録画機器配備に関する平成26年、27年の予算執行額及び、28年度の予算額について伺いました。

法務省からは、平成26年度が執行額約2億1100万円で、平成二十七年度は約3億4800万円である。なお、平成二十八年度の録音・録画機器の予算額は約1億4100万円となっているとの御答弁をいただきました。

次に、検察の機器配備は平成21年度から始まったものであり、台数、執行額共に充実している時期というのは平成24年度から27年度で、約2億円から約6億円の執行額でした。また、平成22年度は執行額が1400万円で、年間配備台数は約11台と少量であったことに触れたうえで、検察における取調べの録音・録画機器の全国の検察組織における配備状況について伺いました。

法務省からは、検察においては、取調べに従事する検察官の数というものがあるが、これについては日々、事件の発生状況等によって変化しているものであり、具体的な数字としてお答えすることは困難であるが、現時点での平均的な体制で考えた場合には、おおむね既に1人につき1台の録音・録画機器を割り当てられるだけの台数は整備できているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、取調べを担当する検察官の方が全国に約1500から1600人いらっしゃるというようなことも伺っており、年間配備台数につきましては、平成21年度から28年度までの8年間で、過去一番多かったのが平成27年度の673台であり、予算執行額は約3億4800万円、そして平成24年度は約倍近くの6億1900万円の予算執行額でしたが、年間配備台数は484台でした。取調べ担当の検察官1人につき、御答弁いただいた内容によりますと、検察官1人につき機器1台が配備されているということであり、今後の取組に向けて必要な措置を講じていっていただきたいと思いますとの旨を述べさせていただきました。

次に、その必要な措置という意味では、検察における取調べの録音・録画について、これは何らかの理由によって録音・録画ができていなかったというような場合、どのような対応をされるのかについて伺いました。

法務省からは、現在の制度下において、例えば録音・録画機器の故障などの理由によって録音ができなかった場合にどのような対応をするかということであるが、こういった場合については、検察官としては、一般的にこの事案に応じ、公判において例えば被告人質問の実施を求めたり、あるいは逮捕、勾留中に行われた被疑者取調べの際に作成された供述調書等の証拠調べ請求、こういったものを求めるなどしていると考えられる。また、この証拠調べ請求した供述調書などにおいて、公判で任意性が争われた場合、検察官としては、事案に応じて、やはり被告人質問の実施を求めたり、あるいは実際の取調べ官を証人尋問で請求したり、あるいは取調べが行われているところの取調べ状況報告書の証拠調べ請求、こういったものをすることにより、録音・録画ができなかった場合の任意性の立証を行うこととなろうかと思うとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、これまでは録音・録画ができていなかった場合、供述調書で立証することとされており、供述調書を取っていなかった場合、被告人から法廷で回答してもらう被告人質問ですとか、調査官の証人尋問を行って、そのときの取調べの様子を確認することとされているということですが、今回の改正法案が成立したとすると、これは例外事由に当たらない限り、取調べの録音・録画を行わなければならないということになりますので、録音・録画ができていなかった場合、まずその取調べを録音・録画しないとの例外事由に当たるかどうかを確認、そして立証されるということであると思います。そして、例外事由に当たる場合、捜査段階の供述の任意性等の立証判断などを確認し、例外事由に当たらない場合、供述調書を使うことができないということで、調書の証拠調べ請求が却下されることになるとの旨を述べさせていただきました。また、現況、取調べを担当する検察官1人について1台が配備されるということですが、録音・録画していると思っていても、何らかの理由で録音・録画ができていなかった場合も想定されていらっしゃると思いますし、今後は持ち運び可能な小型機器の導入もなされていくと伺っておりますので、適切な対応が今後なされていくことを望む旨も述べさせていただきました。

次に、警察においては、平成27年度の4月から9月までの6か月間を見てみますと、裁判員制度対象事件のうち、取調べの過程を録音・録画したのは1567件中1395件と、89%の割合で取組が進められてきたことを指摘し、全国の警察署や都道府県警本部などの施設に録音・録画機器が配備されていますが、これは原則として、都道府県警察の予算で購入することとなっており、国費から半額の補助金が支給されるものと伺っている旨を述べたうえで、警察における取調べの録音・録画に対応した機器の平成26年、27年、28年度における、1台当たりの価格、また、平成26年、27年、28年度に何台ずつ購入し、何台現在設置されているのかについて伺いました。

警察庁からは、警察の場合には、取調べの録音・録画の機器の整備は各都道府県警察において進めており、年度ごとの詳細な価格については、都道府県ごとに個別に調達を行っていることから、詳細な把握はしていないが、現行の機器の1台当たりの価格はおおむね100万円である。また、取調べの録音・録画制度のための機器の整備状況は、都道府県警察からの報告によると、平成24年度末で約440台、25年度末で約730台、26年度末で約800台、27年度末で約1850台となっている。なお、先日、警視庁の原宿警察署を視察いただき、委員にも機器を御覧いただいたところであるが、警察庁としても、新型機器の開発を進めているところであり、この新型機器の導入については、狭い取調べ室でも支障が生じないよう小型化を図るとともに、録音・録画の実施の都度、必要となっている設置作業の負担を軽減するため、固定式のシステムを導入するものであり、具体的には、新型機器は取調べ室の天井に埋め込まれたカメラ、マイクにより録画・録音をして、別室に設置された機器によって、複数の記録媒体への記録を行うこととしている。今後、都道府県警察において、当該仕様のものを中心として、更に機器の整備が進められる見込みである。また、この新型機器については、財源は平成26年度の補正予算9.5億円で、国費によって措置しており、これによって850台の新型カメラを導入をしたところであり、この数は、27年度末の1850台に含まれているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、今後は、仮に本法案が成立した場合、取調べの録音・録画は原則として3年以内に裁判員制度対象事件については、全過程で義務付けられていくということになりますが、仮に警察の全施設において1台ずつ配備することができたとしても、本法案施行前の試行の状況を前提とした対応であり、成立後の法案が実際に施行されて、取調べの全過程を録音・録画することとなった場合、対応し切れないということもあり得るのではないかとの旨を述べたうえで、警察にしても機器の整備というものは進んでいるようですが、全国で約1200の警察署、そして取調べ室は約1万を超えるとのことであり、平成27年3月31日現在で、機器については、先ほどお話があったように、1850台の配備となっていることを述べました。

そこで次に、警察において、今後、取調べの全過程の録音・録画の義務化に対応するためにどのように配備を進めていかれるのか、また、今後どのような取組を進めていこうとお考えなのかについて伺いました。

警察庁からは、機器の整備については、平成27年度末の時点で、全国において約1850台ということであるが、取調べ室は、御指摘のとおり、全国で1万室以上あり、全ての裁判員裁判対象事件に対応していくためには、まだまだ不足しており、今後、更に相当数の機材を整備する必要がある。なお、平成27年度上半期における、裁判員制度対象事件1567件中1395件と、89%の実施率になるが、これはあくまで一事件の中で最低1回の調べについて録音・録画を実施した事件の比率であり、全過程の録音・録画を実施したというものは、大体5割程度にとどまっているところであり、これを施行後3年以内には若干の例外はあるとしても、原則100%に近づけていかなければならないということで、まだ、道半ばというように認識をしているところであり、それに相当する機器の整備についても、今後、引き続き都道府県警察において整備が進められていくということになるわけであるが、国としてもこの録音・録画の制度化、にきちんと対応できるように、都道府県警察に対する必要な支援を継続してまいりたいとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、今回の改正案の1つの柱である、取調べの録音・録画制度の創設は、捜査の透明性を高め、冤罪をなくす上で意義が大きいという意見や、取調べを通じて作成した詳細な供述調書を過度に重視する状況を改め、証拠収集手段の適正化と公判審理の充実化を図ることができる、また、今回の改正により、他人を巻き込む冤罪が発生する可能性を低減することができるなど、前向きに評価する意見のあることに触れつつ、その一方で、改正案の内容が多岐にわたるため、一括審議ではなく、制度ごとに審議すべきであるとの意見や、さらには、取調べの録音・録画制度の対象事件が、殺人、放火などの裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件であり、全刑事事件の3%程度であるということから、対象事件が少ないという意見もあることを述べました。また、司法取引制度については、虚偽の供述によって関係のない方を犯罪に巻き込んでしまう可能性があり、また、捜査機関による通信傍受の対象事件が拡大されるために、国民の通信秘密やプライバシーが侵害される可能性があるとして、反対の意見もあるという実情等、賛否両方の意見があり、本改正案が多岐にわたる内容が盛り込まれていることを踏まえ、今後とも慎重な審議を求め、質疑を終えました。


G7伊勢志摩サミットにおいて取り組むべき開発協力の課題及び我が国に期待される役割に関する参考人質疑

2016年4月13日(火)

  • 政府開発援助等に関する特別委員会2
  • 政府開発援助等に関する特別委員会1

政府開発援助等に関する特別委員会が開催され、5月26、27日に8年ぶりに我が国で開催されることになっている、G7伊勢志摩サミットにおいて取り組むべき開発協力の課題及び我が国に期待される役割に関し、大変御多忙のところ出席いただきました、NGOネットワーク「動く→動かす」代表である今田克司氏、子供の権利確立に向けての活動を展開されている「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」で活動されている大野容子氏、そして、名古屋大学大学院国際開発研究科教授の山田肖子氏の3名の参考人の方々に質問いたしました。

まず冒頭に参考人の方々より、御意見をお述べいただきました。

今田参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

ミレニアム開発目標から2030アジェンダへの転換の背景には、市民社会側の主張として4つのキーワードで言い表せる新たな開発合意があると理解している。その4つとは、説明責任、透明性、参加、包摂であるが、市民社会は、これらについて、かなり強力なメッセージを国際社会に送ってきた。

今田参考人が代表を務める国際協力のNGOの連合体である「動く→動かす」は、国会議員の方々への働きかけということで議員勉強会等を既に開催しており、その中で、SDGsの包括的な目標であるという認識、つまり、今までのような海外協力にとどまらないものだという認識から、各省庁を束ねる司令塔が必要という認識は共有されており、また、本日、日本NPOセンターという立場でも出席しているが、そういった国内のNPOの人たちとも協力して、SDGsに関する理解を広めていこう、さらに、国会議員の方々との対話も続けていこうという姿勢を示している。

また、私たちは、国が直轄するわけではない、民間で主導的な立場を取る人々を束ねて、2030アジェンダ推進会議というのをつくろうじゃないかというようなことを考えており、例えば消費者グループ、NGO、若者、高齢者、障害者、ジェンダー、労働組合、民間企業、科学者、農業者等といった方々のネットワークをつくって、それが国側、政府側と連携、協働しながら、日本としてこのSDGsの実施に対してどのように取り組んでいくかということを話し合い、実際に実施のプロセスに乗せていこうということを考えている。そのためには、法整備、国家計画、政策、施策の策定、実施、モニタリング、評価等をしっかりやっていくことが必要であるという認識に至っている。

SDGsのゴールのうち、貧困削減という目標は、あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせるというのが、SDGsの第1の目標になっているが、そのターゲットを見てみると、2030年までに各国定義による、あらゆる次元の貧困状態にある全ての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させるというのがうたわれている。これは、昨今、日本でも話題になっている相対的貧困率等、国内の貧困問題にも当てはまるターゲットになっている。

今年のG7サミットは、SDGs採択後の最初のサミットであり、日本がグローバル社会に向けて持続可能な世界に向けての強力なメッセージを発信する大きなチャンスであると、市民社会としては考えている。既に伊勢志摩サミット2016のウエブサイトにもそういったことが書かれているし、民間、市民社会を含むあらゆるステークホルダーが参加するグローバルパートナーシップというような言い方もそこでなされている。

それを進めるために、私どもの方で、2016年G7サミット市民社会プラットフォームを既に立ち上げており、3月にはシビルG7ということで、5月26、27日のサミット本番前には市民サミットを開催する、こういった動きもやっているところである。

大野参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

セーブ・ザ・チルドレンは、第一次世界大戦のときに創設され、90年以上活動をしている国際NGOであり、子供たちの権利、子供たちの生きる、育つ、守られる、参加するという権利を守り、推進していくために、世界の120か国で活動している。

また、世界各地で具体的な事業をするだけではなく、様々な政策、グローバルなレベルでもリージョナルなレベルでも、国家、ナショナルなレベルでも政策というものは、子供たちの置かれた状況に影響を与えるということで、政策提言の活動の方にも力を入れているところである。

G7サミット、TICADでも保健は主要アジェンダの一つとなっており、G7サミットでは、2000年の九州・沖縄サミット、2008年の洞爺湖サミットにおいても、様々な保健課題を日本政府として積極的に取り上げ、様々な行動計画やグローバルファンドの創設など、様々なイニシアチブを取ってきていただいている。

今回の伊勢志摩サミットにおいても、保健が重要な課題、優先アジェンダの1つとして取り上げられており、市民社会としては、このことを非常に歓迎している。そして、TICADでも今回特に重視すべき取組として、保健システム、保健制度の構築ということが挙げられている。

SDGsに関しては、あらゆる年齢の全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進するということが目標の1つに掲げられており、ターゲットとして、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成するということが明確にされている。

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの定義は、誰もが、どこであっても、お金に困ることなく、自分に必要な質の良い保健医療サービスを受けられる状態を指し、日本には国民皆保険制度があり、UHC先進国と言われているが、そこから漏れ落ちる人たちが存在しており、なかなかUHCと国民皆保険制度というのは同義ではない、UHCの状態がやっぱり達成されていないという現実もあるということを申し上げさせていただきたい。

そもそも健康、保健は人権であるという考え方があり、日本の今までのODA政策では、人間の安全保障というものが柱に据えてこられていると思うが、人権を達成する、基本的な健康の権利を確保するというUHCの達成こそが人権の観点、日本の進めている人間の安全保障の考え方に非常に沿ったものであると理解している。

そこで、具体的にUHC、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの状態を達成するために様々なことが求められているわけだが、例えば、水、トイレなどの衛生設備の整備や、子供の死亡率の原因の約半数が栄養不良からきているということもあることから、母子栄養不良の解決というものも、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジには必要な問題である。

その上で、保健制度、保健システムを強化した上で、UHCの状態を達成していくということが求められているわけだが、そのためには様々な技術、人材、情報に加え、資金というものが非常に必要になる。

今、実際にG7でどういう議論が行われているかというと、UHCを達成しようという、平時の対応と、エボラ出血熱やジカ熱のような、いわゆる保健の危機が起こったときにどのように国際的に対応するかという枠組みの議論という、2つが進められている。

その観点で、現在のG7の議論では、危機対応のシステムの方の議論に重きが置かれているという現状にあるが、市民社会としては危機発生後の対応よりも、平時のUHCに比重をしっかり置いて支援をしていただきたいということを強調したい。対応よりも予防が効果的という、この市民社会の要望は、日本の市民社会だけではなくて、G7各国全ての市民社会の共通した要望でもある。

市民社会の要望の2点目は、誰一人取り残さない保健システムを構築していただきたいということである。公平な形でUHCが達成されることを日本の援助の柱としていただき、最も貧しい層、最も取り残された層に焦点を当て、やはり、保健医療サービスを受ける側、権利を保有している側が参加してボトムアップで制度をつくっていく必要性があると考える。

また、こうした保健システムの構築については、様々な形でお金が必要になるということで、保健システムの強化、UHCの達成には、主要な各国がどのように資金を動員できるかということが議論の中心になっている。そして、公平さを確保するためには、事前に公平に広く保険料を前払で徴収したり、税金を投入するといった形で、大規模な財源プールがどうしても必要になるものと考えている。

山田参考人からの御意見の概略は、次のとおりです。

アフリカにおいては、国民総所得に占める援助の割合が非常に高いという、援助に依存している経済だということが言える。そのことは、いろいろな基本的サービスがまだまだ充実していないという側面があるということで、例えば、平均寿命については、アフリカは58.1歳と、ほかの地域に比べてかなり低くなっており、かなり若いうちに亡くなってしまう人が多いという一方で、人口増加率はほかの地域より高くなっている。つまり、非常に多くの人が亡くなるけれども生まれる人も多い、その結果、若い人が多いという大陸である。

総人口に占める15歳以下の割合が43%というのは、つまり中学生ぐらいまでの人口が4割を占めていることになるので、日本の高齢化社会と比べると真反対な社会だということが言える。それと同時に、保健の指標も教育の修了率という数字もとても低くなっている。

アフリカ経済の方は、資源の国際市況がちょっと不安定なので、ここ2、3年は成長が鈍ってはいるが、まだ好調で、雇用も拡大している、にもかかわらず技術力が低いという、資源に依存した社会だということであり、人々が技術力を身に付けて自分たちで生きていける安定した雇用と経済につながっていくためには、まず人づくりが大事だということを指摘したい。

労働生産性は低いものの、雇用が拡大している社会であるが、その中でも若い人の失業率が大人の失業率より高いという問題がある。中学生以下が4割もいるような国で若い人が失業しているということは、大きな人口の部分が、より少ない大人の人口より仕事のない場合が多いという問題を抱えていると言える。

技術力や指導力のある人材をどうやって育てるのかについて、2015年まではミレニアム開発目標の中で、貧困を削減するための1つの方策として、ユニバーサル・プライマリー・エデュケーション、全ての人を小学校にという政策があったが、その結果、もちろん学校に行く人は増えた。しかし、準備もなく大勢学校に行ってしまったので、教室に100人も子供がいて先生1人とか、教科書が足りない、教室が真っ暗でぎゅう詰めといった状態が起きて教育の質が落ちてしまい、学校に行っても、学ぶべきことを学んでいないという状況が生まれた。

そこで、SDGsの中で新しい課題として言われていることは、学校に行くとかサービスを提供するということは手段であって目的ではないから、大事なのは、何を学んで、学んだことが社会や本人の向上に役立つかどうか、そちらに視点を移しましょう、人の方に視点を移しましょうということである。

同時に、学校にいる間だけが教育じゃない、仕事の場所でも、大人になってから社会の中でも人というのは学び続けるんですよということで、教育というのは非常に裾野が広い、貧困を削減するためにも社会が進歩するためにも必要なものであるし、学校の中だけじゃない、学校の外、例えば親方に弟子入りして徒弟をやるみたいなことも人づくりの1つだと考えて、包括的に捉えるというような方向に行っている。

アフリカ支援の視点として幾つか提示させていただくと、まず第1点は、もちろん人道的な支援は不可欠である。何といっても、やはり貧しい地域であるので、教育、衛生、保健といったようなことは絶対に必要であるが、同時に、ただサービスを提供すればいいと考えるのではなくて、SDGsでも一人一人の本当に役に立つ人間になれたかどうか、能力を身に付けることができたかということに焦点を当てるような基礎的社会サービスというのを考えたいと思う。

それから、日本にとってアフリカが遠くて関係ない国だというふうに思わないでいただきたい。貿易パートナーとしても、支援することで日本が関わりやすくなる。彼らがいい人材、安定した生活をする、安定した政治を行う、インフラも整備された社会になってくれて、日本にとっても非常に助かるんだというふうに思っていただきたい。

それから、最後に、日本の支援の強みということで、ODA総額が減っている中で、何でもやるということよりも、日本は何が強い、日本はどこが魅力だということを我々自身がもう一度考えてみるいい機会かなと思う。そういう意味で、日本の援助の良さというのは、受益者の視点に立っている、一番末端の人たちのところに降りていってその人たちの視点で考える援助であるということ。それから、単に技術移転といって技術だけ渡すのではなくて、一緒に働いて態度とか考え方も伝えるというのが非常に日本的かと思う。

その後、質疑に入り、次のとおり参考人の方々に質問いたしました。

今田参考人には、あらゆる形態の貧困の撲滅や飢餓撲滅、食料安全保障、そしてさらには栄養の改善、持続可能な農業の促進など、非常に多様な目標を含む2030アジェンダのうち、市民社会のお立場から、日本を始めG7諸国の政府に対してどのような点を特に強く求めていきたいとお考えかについて、及び、貧困削減に焦点を当てたミレニアム開発目標と比べ、広範な目標を含む2030アジェンダは、開発途上国や市民社会の方々とも十分な対話が行われた上で決定されたものと伺っておりますが、市民社会の方々において、更に今後関心を高めていただくためにどのような取組が必要であるとお考えかについて伺いました。

今田参考人からは、まず、最初の点であるが、本当にSDGsが多種多様なテーマを含んでいるのと同様に、市民社会の要望ももちろん多種多様なものを含んでおり、その中からこれということはなかなか申し上げにくいのが現状であるが、ただ、申し上げたいのは、市民社会として求めていくことは仕組みづくりである。つまり、透明性が担保され、市民参加が確保されるようなやり方をつくる、その器をつくることによって、市民が何か意見があったときにそれが持っていける場所があり、それが対話を進める機会となり、ひいては政策に反映させていく、そういった仕組みを構想している。

2つ目の点は、変革ということで、かなり野心的な目標にSDGsがなっており、そこで誰一人取り残さないというのは、市民社会として強く主張してきたことである。これが更に進むためには、やはりその点、最も支援が届きにくい人々に支援の手を差し伸べるというのがこの国際社会の約束であるので、それは、例えば紛争や移住の問題等々でなかなかふだん支援が受けられない人々、これは実は国外だけではなくて国内にも多く存在しているというのが私どもの認識である。そういったところにしっかり光を当てて、支援をいかに拡充していくかということが国際社会の願いではないかなというふうに考えているとのお答えをいただきました。

次に、大野参考人には、ミレニアム開発目標の中で保健衛生や女性、子供などに対する支援が遅れている理由は、援助の量が不足しているということなのか、それとも援助を進めていく上で何か妨げとなるようなことがあるのか、そうした点を踏まえて、今後日本やG7諸国が特にどういった点に力を入れたらよいのかについてのお考えを伺いました。

大野参考人からは、ミレニアム開発目標で掲げられた目標のうち、5歳未満児の子供たちと妊産婦の死亡率というものは目標が達成されておらず、なぜかという点については、量の不足の部分ももちろんあるかと思うが、やはり手が届き切れなかったということではないか。特に貧困の半減に関しては目標が達成されているが、それは主に中国の経済発展によるものと言われているので、ある程度の経済発展が中国等で行われた結果、貧困層は結果としては数字としてはなくなったけれども、様々な社会経済的な構造の側面から、支援の手が届かなかった人々が一定程度いるということであり、届かなかった中心的な層に女性、子供の層があると考えている。その観点から、量というよりは、その援助のやり方、仕組み、プロセス、その辺をもう少しきっちりレビューしていく必要性があるのではないかと思う。その妨げとなっている女性、最も貧しい子供たちやお母さんたち、特に都市部においても、例えば本当にスラム街に住むような貧困層に対して、今までは構造的な様々な要因があって、社会的な差別だったり偏見だったり様々な要因があるわけだが、そういう社会経済的な構造をきっちり分析して、どこに問題があるのか、その構造的な障壁を取り除くためにはどうしたらいいのかという、SDGsの時代は更にきめ細やかな支援のために、そもそもの社会的な分析というものが必要になると考えているとのお答えをいただきました。

次に、山田参考人には、現在、日本政府は、ODAも活用しつつ質の高いインフラの輸出を進めており、政府は、日本のインフラは高品質であり、ランニングコストも考えれば決して高価ではないとして相手国の理解を得ようと努めておりますが、初期投資の高さなどから現在思うように進んでいないという声もあります。そこで、政府は、円借款の運用改善などを行いつつ、質の高いインフラの輸出を現在進めておりますが、山田参考人からの御説明で、モザンビークから内陸国のマラウイ、ザンビアまでの道路を造るということで、今後、物流等の大きな基盤を整備していくという意味では非常に大きなインフラ整備だと思われますが、その辺の現況について伺いました。

山田参考人からは、質の高いインフラということで、質が高いにこしたことはないわけであるが、円借款の批判されがちな点というのは、相手側政府にお金を貸しているけれども、日本が求めている水準の仕事をできる企業に契約を出してくださいと言うと、日本企業が取ってしまうようになる。そうすると、日本企業が潤うんじゃないですかという、そういう批判がやはりセットで起きてくるということなので、同時に、その値段を払うんだったら、もっと安くて、いずれ壊れてしまうとしても、あっちにもこっちにもニーズがあるのに、その道路だけぴかぴかにしてほかに使わせてくれないのはどうなんですかという批判がやっぱり出てきてしまうということなので、質の高さと多様なニーズにどのぐらい応えるかということのバランス、それから、もちろん日本のODAなので、日本の企業が取ってくれるのがうれしいわけであるが、そこをひも付きという批判にならない形で、競争で取っていけるという、そういう形になることが望ましいのではないかと思っているとのお答えをいただきました。


平成28年度裁判所及び法務省関係予算に係る委嘱審査

2016年3月23日(火)

  • 法務委員会2
  • 法務委員会1

法務委員会が開催され、平成28年度予算の委嘱審査ということで、岩城大臣等に対して質疑を行いました。

昨年の第189回国会において、3月26日に開会された本委員会において、私は、我が国の空港における入国審査時に入国審査料等を徴収されてはいかがでしょうかという問題提起をさせていただき、現在、日本の空港における入国審査時に審査料等を徴収しているのかについてお尋ねしたところ、法務省からは、現在のところ、我が国においては入国審査に関する手数料等は徴収していないとの御答弁をいただきました。

そこで、日本の出国時はどうなのか調べてみますと、現在、日本では出国時のみにおいて旅客施設使用料と空港によっては旅客保安サービス料が徴収されていますが、使途については、航空管理会社が徴収し、空港における様々な施設の維持管理に充てるために、利用者、すなわち出国していかれる方たちが負担する料金ですので、現在、日本では入国・出国のどちらの審査時も諸税や審査料等は発生せず、徴収されていないということになり、諸外国に比べると立ち遅れの感が否めないところである旨を述べました。

そして、これから日本が観光立国の推進、また2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催、そして安倍総理がおっしゃられている世界一安心、安全な国日本を目指していく中で、厳正で万全な出入国審査管理体制を構築していく必要があり法務省独自の財源を生み出していくことを考えていかなければいけないと思っており、それは現在、日本の多省庁にわたる訪日者の審査、検査、管理等が国民の皆様の税金によって賄われているという現状を鑑みると、このまま税負担を今後も国民の皆様に強いるわけにはいかないと思っているからである旨を述べました。

こうした観点から、入国審査料等を徴収し、それを日本国内における国際テロに対する水際対策やテロ行為の未然防止対応策に資するよう設備整備を進めることにより、国際テロに対する抑止力として、安心、安全、そしてさらには信頼できる国としての日本を世界に向けて発信していくことができるようになるという提案をさせていただいたところです。

そこで、本委員会の質疑で提案させていただいた、我が国における入国審査料等の徴収について、法務省としてどのようにお考えになられているのかについて伺いました。

法務省からは、我が国では入国、出入国の審査に関して税や手数料は徴収していないが、国際民間航空条約という世界的に標準的な条約があり、出入国の円滑化や簡易化について定める第9附属書の中に、出入国審査に関し、各締約国はその当局によって設定された勤務時間の間、関係当局、行政当局の十分なサービスを料金なしで提供しなければならないという規定があって、その意味においては、我が国の取扱いは国際的な標準に沿ったものになっているものと考える。委員の御提案の様々な施策を進めることは常に念頭に置いているが、まずは同条約の規定も勘案しつつ、所与の予算の中でいかに充実した行政運営を行うかということについて検討を重ねているというところであるとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、国際民間航空条約で入国審査料が徴収できない状況であるということですが、昨年の委員会において、入国時に入国税や入国審査料が発生し徴収されている国はアメリカとペルーの2か国であることをお示しし、アメリカは入国審査料として840円、ペルーは入国税として1790円が徴収されていることを述べました。

また、アメリカの場合は入国時に、諸税そして審査料等の合計で4190円が徴収されている現状であり、先ほどの御答弁では国際民間航空条約の附属書の内容において入国審査料を徴収できないとのことでしたが、先日、外務省の担当者に問合せをしましたところ、一般的に、条約は国家間の合意ですので、一度締約すると条約自体を変更することはできないけれども、航空機の要件や出入国審査等について、国際民間航空における詳細事項を記した附属書については、相違通告があった場合、書き換えされることがあるとのことでした。

また、国際民間航空条約の第38条は、国際標準及び手続からの乖離について、国際標準に完全に一致させることが不可能と認める国は、相違を直ちに国際民間航空機関に通告しなければならないという規定になっており、この条文からすると、入国審査料を徴収することができないと規定されている附属書の内容を変更し、国際民間航空機関に相違通告を行えば、入国審査料を徴収できるようになるのではないかとのことでした。

さらに、アメリカ、ペルーが入国審査料等を徴収できているということは、国内においてこの附属書の内容を変更し、国際民間航空機関に相違通告を行っているのではないかとも思われますし、また、こうした条約に締約する前にアメリカが入国審査料を既に徴収していたかもしれないということも考えられますので、いつからアメリカが入国審査料を徴収するようになったのかということを法務省にお尋ねさせていただいております。その状況が分かりましたら、是非御教示いただきたいとの旨を述べさせていただきました。

そして次に、3月10日の委員会質疑で、2015年の訪日外国人旅行者数が1973万人を超え、2020年の政府目標である2000万人に迫る勢いとなっているとともに、外国人が旅行中に日本国内で使ったお金が前年よりも約1兆4493億円増加し、過去最高の3兆4771億円となり、訪日外国人旅行者のもたらす日本での経済効果が非常に大きなものとなっていることについて触れた旨を述べました。

そこで仮に、昨年の訪日外国人旅行者約1973万人から1人当たり1000円の入国審査料を徴収したとすると197億3000万円徴収することができるということを述べたうえで、法務省としては、訪日外国人旅行者の入国を許可するわけですから、こうした方々の日本での滞在中や、国民の皆さんの安心、安全を守る責務があるということは十分にお考えになられていると思いますが、そのための財源を生み出し、また施策を充実させていくという意味での入国審査料等の徴収について、法務省としての考えを伺いました。

岩城大臣からは、訪日外国人旅行者の急増に伴い、入管のみならずその他の政府機関、さらには地方公共団体等に生ずる様々な経費や負担の増大につき、受益者負担の観点から外国人に負担いただくことは一つの考え方であると認識しているが、そのような意味での料金は、観光立国の推進等の中に位置付けて、政府全体で検討すべき課題であろうと考えているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、こうした現状を鑑みますと、法務省独自の財源というものをきっちりと確保していくということが施策の充実につながっていくものと思いますので、是非大臣にも御検討いただきたいとの旨を述べさせていただきました。

そしてさらに、日本における出入国制度は、1951年に公布された出入国管理令を出発点として今年で65年を経過しますが、テロの水際対策のとりでである法務省所管の出入国審査管理行政等をより厳正にしていくために有益である施策の実施はこれまで考えられず、現在に至っている点に触れました。そして、アメリカの現状ということで、入国時については、諸税、審査料等の合計が4190円となっており、9.11以降、様々なテロ対策を打ち出し、関連の立法も行われ、その中でも、テロ直後の2001年10月26日に制定されたアメリカ愛国者法が中心となりましたが、関連の最終報告書を見てみますと、9.11の実行犯がアメリカの難民庇護制度や出入国管理制度の隙をついて入国し、ハイジャック機に搭乗したこと等が報告され、入国審査等の失敗であったとも結論付けられていたことを述べました。

そこで私は、入国時において税や審査料等を徴収し、国際テロ等に対処するために使われているというアメリカの現状等を見た中で、安倍総理がおっしゃっておられる世界一安心、安全な国日本を実現されようと思われるのであれば、審査料等の徴収を今後検討されていってもいいのではないかと提案させていただいており、その使途については、日本国内における国際テロに対する水際対策やテロ行為未然防止対応策に資するものであるとの趣旨を是非酌み取っていただき、一考していただくよう、再度お願い申し上げました。

次に、出入国管理インテリジェンス・センターについて、岩城大臣は所信の中で、テロの未然防止を含む厳格な入国管理と観光立国推進に向けた円滑な入国審査を高度な次元で両立させる必要があるということを述べておられますが、外国人観光客を増やしつつ、テロリストの入国リスクを減らしていくことの両立を追求する施策を進めていくことは大変重要である旨を述べました。

そして昨年10月、法務省入国管理局に出入国管理インテリジェンス・センターが設置され、テロ関係者等に係る情報収集と分析を行い、水際対策を推進しているとのことですが、11月にはフランスのパリ連続テロ事件が発生するなど、テロ情勢は一層厳しさを増しているものと思う点に触れながら、インテリジェンス・センター設置から5か月余りが経過しましたが、テロ情勢の厳しさを踏まえ、本年5月の伊勢志摩サミット、そしてさらには2020年の東京オリンピック・パラリンピックの安全な開催等に向け、今後とも、インテリジェンス・センターの機能をより一層向上させて、テロの未然防止に全力を尽くしていただくことをお願い申し上げました。

そこで、同センターの設置によるこれまでの効果や実績及び、今後の機能強化の方向性はどのようなものであるのかについて伺いました。

岩城大臣からは、効果と実績についてであるが、インテリジェンス・センターにおいては、本年1月以降、航空会社等からPNRと呼ばれている乗客予約記録について電子的に報告を受け、その情報等を分析し、テロ関係者を含む出入国管理におけるハイリスク者の類型化を実施し、また、関係機関と連携を図り、テロ関係者等ハイリスク者の顔画像の収集を推進しており、これらの情報を空港等の水際の最前線に提供し、活用している。このように、テロの未然防止等のため出入国管理インテリジェンス・センターにおいて情報収集、分析を進めているところであるが、特に、水際対策における顔画像の活用は今後ますます重要になっていくものと考えており、上陸審査時に取得した顔画像と入国管理局が保有するいわゆるブラックリストに登載している顔画像を機械的に照合する顔画像照合機能の活用強化を推進していく所存である。

法務省としては、出入国管理インテリジェンス・センターの機能を最大限に発揮させ、伊勢志摩サミット、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の安全な開催に向けて貢献してまいりたいと考えているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、様々な対応策、施策等が充実してきていると思われ、我が国におけるテロの未然防止という極めて重要な目標の実現に向けて、政府一丸となってこうした取組を推進していただきたいとの旨を述べさせていただきました。

次に、報道によると、政府は、日本路線を持つEU加盟国の航空会社に対しまして乗客予約記録、PNRの電子データ提出を義務付けるために、近くEUと個人情報の取扱いを定めた協定の締結に向けた交渉に入る方針を固めたとのことであり、この目的は、欧州経由で入国を図る要注意人物を漏らさず捕捉し、テロ防止の水際対策を強化することが狙いであるようですが、テロ防止の水際対策を強化するために国際間の協定を結ぶなどの手続も必要ということですので、我が国としても、政府内の連携をより強化され、EUとの交渉を早期に開始していただきたいとの旨を述べつつ、大臣に、テロ防止の水際対策強化をするため、国際間及び政府内の連携強化の必要性について伺いました。

岩城大臣からは、出入国管理インテリジェンス・センターにおいてテロ関係者等ハイリスク者の特定、類型化を行い、空港等の水際の最前線で分析結果を活用することにより、水際対策がより実効性のあるものになると考えているので、国際間及び政府間の機関との情報連携を今後とも推進してまいりたい。また、欧州系の航空会社からPNRの報告を受けることについては、EU内の個人情報保護法制との関係で、我が国とEUとの間でPNRの報告を可能とする協定を締結する必要があるため、引き続き関係省庁と連携し、EUに対して働きかけを行ってまいりたいと考えているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、是非強力に進めていっていただきたいとの旨を述べさせていただき、質疑を終えました。


人種差別撤廃推進法案に関する参考人質疑

2016年3月22日(火)

  • 法務委員会2
  • 法務委員会1

法務委員会が開催され、「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策に関する法律案」について、4人の参考人の方々より御意見を聴取した後、質疑を行いました。

浅野善治 参考人(大東文化大学大学院法務研究科教授)からの御意見は、以下のとおりです。

今回の法律案の基盤としては、人種等を理由とする不当な差別行為は社会的に許されないということであるが、この認識自体は私の基本的な考え方と異なるところはない。しかし、その社会的に許されないということを実現していくために、何が許されない不当な差別行為であるかということと、許されない不当な差別的行為に対してどのような防止措置をとるかということを判断していくということが必要になる。

こうした判断を誰がどのように行っていくのかということが、重要な問題ではないかと考えており、不当な差別行為は何かとか、あるいはどのような防止措置をとっていくのかということを、公権力が裁量によって判断する方がいいのか、あるいは社会の自由な議論の中で判断していく方がいいのかということになるかと思われる。

今回の防止する法律を制定するというような場合に、事前に公権力を行使すべき場合を一般的に類型化して公権力の発動の要件を決めていくという場合においては、その具体的な権利侵害や社会の危険というものを十分に意識した慎重な検討というものが不可欠で、その対象が厳格に法律の中に規定されているということが必要になる。

そういう観点から今回の法案を見ると、第3条であるが、規制の対象としたい不適切な行為にとどまらず、それが必要以上にどの範囲まで広がってしまうのかということからいくと、どこまでが限界になるのかということが必ずしも明確になっていないのではないかとの懸念を感じる。

特に、不当な差別を確実に防止するということが基本原則で定められており、その中で公権力に対して積極的、主体的な責務を課すということになっているので、公権力に何をさせるのか、あるいは公権力の発動の制限というものをどのように考えているのかについては、法律案の審議の中で十分な検討が必要になるのではないかと思う。

このような観点から、最後に、人種等を理由とする不当な差別の解消ということで、公権力に何が求められているのかということをまとめると、まずは、現行法でも対処可能な様々な措置があることから、現行法の適切な運用がなされることがまずもって重要ではないかと思う。

現在、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律も制定されており、さらに、刑法の罪も含めて具体的な様々な措置もあるので、現行法では何が足りずにどのような不都合が生じているのかということをまず具体的に検証して、その足りないところが、何が必要なのか、公権力はそこで何を補っていかなければいけないのかというようなことを慎重に検討して、法律案の必要性を考えるということが適切ではないかと思う。

例えば、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律を改正して、今回の人種等を理由とする不当な差別の撤廃に向けた配慮というものをそこで明確に規定するということも一つの方策として考えられるのではないかと思う。

いずれにしても、こうした新しい法律の制定を検討しようとする場合には、公権力をどのように発動させるかというような点を十分に慎重に検討し、公権力の発動の限界を明確にさせることが必要ではないかという感想を持っている。

次に、スティーブン・ギブンズ 参考人(外国法事務弁護士)からの御意見は、以下のとおりです。

アメリカ憲法、特に修正第1条の視点から日本のヘイトスピーチ法案については、まず、結論からいうと、仮にヘイトスピーチ法案をアメリカ最高裁判所の判断に委ねることになったとしたら、法案第3条第1項の特定の者について、その者の人種等を理由とする侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動を禁じる条文及び同条第2項の不特定の者について人種等共通の属性を理由とする不当な差別的言動を禁じる条文は、アメリカ憲法修正第1条に抵触して違憲とされることは明確である。実際、アメリカが人種差別撤廃条約に加盟したときには、1つの条件として、条約のヘイトスピーチ関連の条項を除外した。

アメリカ憲法修正第1条は何かというと、その根本的な考え方は、国家が国民にいわゆる正しい思想や発言を押し付けることや、国家が不適切とされている思想、発言を禁じ、処罰することは憲法上できないというものである。修正第1条は、ヨーロッパの絶対君主制や宗教迫害から逃げるために大西洋を渡った建国の父たちの基本的な価値観を反映していると言える。

今回の法案第3条第1項及び同条第2項は、先ほど述べたとおり、アメリカ憲法修正第1条に抵触して違憲と考えるが、それらの規定に表れている問題点として、2つほど申し上げると、1つは、条文には非常に曖昧で主観的な解釈によって意味が大きく異なる文言が含まれていることである。侮辱という文言は刑法で使用されていて、その意義が明確化されていると聞いているが、その他の嫌がらせ、迷惑、不当、その他の差別的言動などについて、どこまで言っていいのかは極めて不明確である。

もう1つは、条文に曖昧な文言が含まれていることと関係するが、重要な政治社会問題に関して活発な、そして率直な議論ができなくなったりすることも容易に想像できる。

また、法案第3条のような禁止規定が仮に設けられたとしても、この規定は実際のところ救済を定めていないものと理解しており、仮に誰かが条文に引っかかる差別的言動を行ったとしても、警察も被害者も法的には何もできないような結果になる。先ほど述べたような、曖昧で率直な議論ができなくなることは大きな問題であるが、救済のない禁止規定を設けることにどれほどの意味があるのか疑問を感じる。

次に、金 尚均(きむ さんぎゅん) 参考人(龍谷大学法科大学院教授)からの御意見は、以下のとおりです。

人種差別を規制する法律がないという日本の法事情の中、2000年頃から外国人、とりわけ在日韓国・朝鮮人を標的とする誹謗中傷やインターネット上の書き込み、そして公共の場でのデモや街宣活動といったものが目立ち始めた。それは、自らの姿を隠すこともなく公然と拡声器などを用いて差別表現を並べ立て、罵詈雑言並びに誹謗中傷を繰り返すものである。その表現は攻撃的、凶悪的、排除的であり、しかも、駅前や繁華街などにおいて参加者並びに一般の人々に対して差別をあおり、賛同者を集めようとする極めて扇動的な差別行為である。

人種差別は、社会において支配的な勢力を持つマジョリティーがマイノリティーに対して攻撃を行い、マイノリティーが人権の主体であることを否定し、社会から排除するという、看過できない、まさに人間の尊厳の侵害である。

人種差別を規制する法律では、差別を禁止する規定を盛り込むことにより、司法、立法及び行政の三権の実務において、人種差別による被害とその危険性の理解を促進することができる。さらに、被害があるにもかかわらず適切な対応を取ることができないままでいた立法、法の適用及びその執行の実務の在り方を、人間の尊厳の保護の見地から見直す重要な契機となり得る。

人種差別を撤廃する実質的な担い手は社会に生きている私たち人間であり、私たちで構成される社会の自己解決能力である。この平等の実現の追求を支えるのがまさに法律であると考えるべきであり、結果的に差別をする側を擁護することになる行政実務を変えるためにも、法律の制定が早急に求められるものと考える。

なお、人種差別禁止規定の制定に関し、特定個人に対する人種差別に焦点を狭めるべきではない。なぜなら、人種差別はある属性によって特徴付けられる集団そのものに向けられるわけであり、たとえそれが個人に向けられる場合であっても、それはその人の属性、すなわち集団を理由に不当な扱いを受けるからである。まさに、ヘイトスピーチがこれに当たる。

次に、被害実態調査については、社会における人種差別思想を正確に把握し、適切な立法並びに施策を推進する前提として制度的かつ定期的に実施すべきである。

人種差別は一定の集団とその構成員である諸個人を社会から排除ないし否定しようと仕向けるものであり、人種差別は個人に対する害悪であるだけではなく、特定の集団そのものの否定、つまり社会における共存の否定である。

人種差別は、人間を傷つけるだけではなく、社会そのものも傷つけるということを改めて強調しておきたい。一定の集団又は構成員に対する差別と排除によって、その構成員の人権の享受を阻害し、しかもこれを同時に正当視、当然視する社会環境を醸成する、このような危険な事態が人種差別なのである。

他方で、人種差別は日本社会の民主制をも損なう。民主主義という決定システムは、一人一人の個人が社会の構成員として対等かつ平等な地位が認められ、社会の諸活動に参加するということが保障されなければならない。人種差別を野放しする社会は、社会の構成員の中の一部の人々を不当に排除し、二級市民扱いし、ひいては人間であることを否定することにより、多様性や差異を認めない社会となり果て、共に生きる社会、すなわち共生社会を否定することになる。これはまさに、日本社会の民主主義の自壊であるということを忘れてはならない。

次に、崔 江以子(ちぇ かんいぢゃ) 参考人(社会福祉法人青丘社 川崎市ふれあい館職員)からの御意見は以下のとおりです。

私が生まれ育ち暮らす川崎市では、2013年から12回にわたりヘイトデモが行われてきた。そして直近の2回、2015年11月8日と2016年1月31日のデモは、その前に十回行われたデモとは大きく意味が違うものであった。11月8日は、駅前周辺で行われていたヘイトデモが川崎区の臨海部、在日コリアンの集住地域に向かってやってきた。私たちの町、桜本は、日本人も在日もフィリピン人も日系人も、誰もが違いを尊重し合い、多様性を豊かさとして誇り、共に生きてきた町である。その共に生きる人々の暮らしの場に、その思いを土足で踏みにじるかのようにヘイトデモが行われた。川崎に住むごみ、ウジ虫、ダニを駆除するためにデモを行いますと出発地の公園でマイクを使って宣言をし、ヘイトスピーチをしながら私たちの町へ向かってきた。このヘイトデモに対し多くの人が抗議した結果、桜本の町には入らなかったが、とても大きな傷を残した。

そして、1月31日に再びヘイトデモが予告され、集合場所の公園やデモに許可を出さないでほしいと行政機関にお願いしても、不許可とする根拠法がないのでできないと断られた。あの日のことをお話しするのはとても厳しくつらいものであり、それは1月31日は過ぎたが、まだそこに暮らす人間にとっては終わった話ではなく、続いている話だからである。また来るぞと言ってその日のデモは終わったが、悪夢のような時間であった。

ヘイトデモをする人たちの良心を信じ、差別をやめて共に生きようとラブコールを送ってきたけれど、たくさんの警察に守られながら、一人残らず日本から出ていくまでじわじわと真綿で首を絞めてやるからと、デモを扇動した人が桜本に向かってくる。韓国、北朝鮮は敵国だ、敵国人に対して死ね、殺せと言うのは当たり前だ、皆さん堂々と言いましょう、朝鮮人は出ていけなどと叫ぶ人たちが私たちの町へ警察に守られて向かってきた。

その後、3月16日に法務局へ人権侵犯被害申告を行ったところであるが、差別の問題に中立や放置はあり得ず、これを止めるか否かである。現状、国は差別を止めていない。それは残念ながら、差別に加担していることになる。ヘイトスピーチを違法とし、人種差別撤廃に国と地方公共団体が責任を持つ法案を是非成立させてほしいと心から願う。

桜本の若者、子供たちは、また来てしまうかもしれないヘイトデモに対して、共に生きよう、共に幸せにというメッセージを記した。この思いを私たち大人がしっかり受け止め、このメッセージが届かずに再び傷つき、涙を流すことがないような社会をつくるためにも、何よりも国が、中立ではなくヘイトスピーチをなくす側に立つことを宣言し、差別は違法とまず宣言をしてほしい。そのために、まず今回の法案をすぐに成立させてほしいと思う。

以上のような参考人の方々からの御意見を受け、私からはまず、本法律案が日本国憲法及びあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の理念に基づき、人種等を理由とする差別の撤廃のための施策を総合的かつ一体的に推進するため、差別等を理由とする差別の禁止等の基本原則を定めるとともに、人種等を理由とする差別の防止に関し、国及び地方公共団体の責務、基本的施策その他の基本となる事項を定めようとするものであり、昨年5月22日に民主党・新緑風会、社会民主党・護憲連合、無所属議員より本院へ提出され、6月24日に法務委員会に付託されたこと、そして、8月4日に発議者からの趣旨説明を聴取させていただいた上で、6日に発議者及び政府に対する質疑が行われた旨を述べました。

そして、本法律案が提出にされるに至った経緯及び趣旨、また我が国が加入してから20年以上が経過した人種差別撤廃条約を踏まえた内容が本法案の各規定に具体的にどのような形で盛り込まれているのか、そして本法律案が我が国から人種差別を根絶していくためにどのような役割を果たすのか、また政府として人種差別撤廃条約への加入を受けての国内法整備を新たに行おうという考えがあるのか等について質疑を行った旨を述べました。

次に、委員会での質疑において、人種差別を根絶していくために本法律案がどのような役割を果たすのかについて発議者に伺ったところ、本法律案は基本的には理念法であり、人種差別が違法であることを明らかにする具体的な処分あるいは手続を定めてはいないが、本法律案が成立した後、国や地方公共団体において人種差別をなくすための措置を講じることにより、人種差別を許さないという施策が次第に浸透していくことにより具体的な効果を発揮していくことが期待される旨の御答弁をいただいたことに触れながら、本日御出席いただいた参考人の皆様におかれては、法制化の前に国として人権教育の強化や啓発活動を通じて社会全体の意識を向上させていくことが必要であるとお考えになられる方、また本法律案を早期に成立させるべきとお考えになられる方には、今後この法案の審議が深まり、広がりを見せ、そして成立した場合、我が国から人種差別を根絶していくためにどのような役割を果たすことができるとお考えになられるのかについて、参考人の方々より順次、御意見を伺いました。

浅野 参考人からは、理念法といっても今回の法案では、3条、4条、5条と基本原則を、具体的には3条では具体的に禁止する行為が、4条では確実に人種等を理由とする差別が防止されなければならないことが定められており、さらにその上で、6条で国と地方公共団体の責務ということで、人種等を理由とする差別の防止に関する施策を総合的に策定し、実施しろと言っており、基本原則が達成されるようなことを、あらゆることをやりなさいということ、これを国と地方公共団体の責任として位置付けているので、一体何が行われるのかについては全く限定がないことになる旨の御指摘がありました。

そして、人権教育、人権啓発については、どんな状況であろうと積極的にやらなければいけないと思っているが、さらに、その上で、具体的な規制のイメージが出るような法律というものが更に必要になるのかならないのかといったときに、例えば命の危険を感じるということがあるとすれば、その命の危険を感じるようなものだけを切り取って規制すればいいのかなと思うが、そうすると、例えば現行のあらゆる刑罰の規定もあるけれども、そういったものがまず動くことが、一つの大きな動きになるのではないかと思う。例えば、本当にひどい状況が生まれてくるのであれば、現行法の処罰規定が適用されていくということがあるとすれば、そういうデモが行われればこういう処罰規定が動くんだということがはっきりするわけであるし、そうすると、またそれで一つ大きな効果になるのではないかという感じがする。非常にひどいデモがあっても何にも誰も動いてくれないじゃないかというところが、今日の参考人の御意見の中から感じたが、そういうときに、例えば現行法の規定がきちんと動いて処罰がきちっとなされるということがあると、また変わってくるんじゃないかなという感じもするし、そういったことも含めて、一体どのような形で新法を検討していったらいいのかということになると、慎重に検討していく必要があるのではないかとの御意見をいただきました。

次にギブンズ 参考人からは、英語で、ゼア・イズ・ノー・ライト・ウィズアウト・ア・レメディー、救済のない権利はそもそも権利ではないということで、この法案はそういうような中途半端な訳の分からないものになっているかなと思われるとともに、特に、これは条約を実行するためにこれから実施する法律であって、海外から、実施したときは、この法律は骨抜きでしたねと逆に批判されるリスクもあるのではないかと思うので、最初からこれは、理念であればそれをより明確にした方がいいのではないかと、法律の専門家として思うとの御意見をいただきました。

次に金(きむ) 参考人からは、今回の法案はいわゆる理念法というところで非常に弱いという批判があるが、これを機に例えば被害実態調査を国が行うということは、非常に意味があり、現在は、民間の研究者が高校生を対象に被害実態調査をしているが、これは国がやらないからであり、それは、人種差別実態というものが、あるものがなかったことにされてきた、これが今の日本社会の現状であるとの指摘をされたうえで、これを変える第一歩というふうに今回の法律を位置付けると、単に救済がない、ないしは刑事規制がないというようなこととはまた別の議論が、その意義として生まれてくるかと思うとの御意見をいただきました。

次に崔(ちぇ) 参考人からは、国が中立ではなくてヘイトスピーチをなくす側に立つことを宣言して、差別は違法だとまず宣言してほしい、そして、まずこの法案をすぐにでも成立させてほしいとの御要望とともに、差別は悪い、では、その悪い結果をそのまま放置するのではなくて、悪い状態を回復するための手段として、そして根絶のためにこの法律の議論をしていただきたいとの御意見をいただきました。

参考人の方々からの御意見を受け、議員立法によって本法律案が本委員会で審議されているということは、やはり人種差別は許されるべきことではない、よくないことであるということであり、現在、日本にはそうした人種差別を規制する法律がないということに関しましては、法律を作るという意味では前進をしてきているのではないかと思うとともに、日本には人種差別があるということを認めることになるから法律を作らないのか、それとも、日本には人種差別がないからそうした法律を作る必要はないとお考えになられているのかという質疑を政府に対してさせていただきましたが、本日賜りました参考人の皆様からの御意見を参考にさせていただきながら、今後より良い審議を深めていけたらいいと思っている旨を申し述べ、質疑を終えました。


平成28年度政府開発援助関係経費に関する委嘱審査

2016年3月22日(火)

  • ODA特別委員会2
  • ODA特別委員会1

政府開発援助等に関する特別委員会が開催され、平成28年度政府開発援助関係経費に関する委嘱審査ということで、岸田外務大臣等に対して質疑を行いました。

まず、我が国はこれまで、途上国の皆さんが持っている能力を十分に発揮できるような国づくりを支援していくため、開発協力を行ってきました。我が国は自助努力という考え方を重視しておりまして、これを支援するため、人づくりに力を入れてきたものと承知している旨を述べました。

そして、我が国の途上国に対するスポーツ支援はJICAの皆さんが大きな役割を果たしてくださっており、政府においては2013年9月、国際オリンピック委員会総会でのプレゼンテーションにおいて、スポーツ分野における我が国の政府の国際貢献策としてスポーツ・フォー・トゥモロープログラムを発表されたことに触れつつ、このSFTは、2014年から2020年までの7年間で、開発途上国をはじめとする百か国以上の国において1千万人以上を対象に、世界のより良い未来のために、未来を担う若者を始め、あらゆる世代の人々にスポーツの価値とオリンピック・パラリンピックムーブメントを広げていく取組であること、このプログラムを政府として着実に実施していくということは、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会に向けた我が国の国際公約の一つであることを述べました。

そこで、スポーツへの支援は、社会そして経済インフラの整備などとともに大変重要であると考えますが、岸田大臣の御所見を伺いました。

岸田大臣からは、御指摘のように、このスポーツ・フォー・トゥモロー、SFTプログラムは、2020年の東京大会に向けた我が国の国際公約であり、ODAによるスポーツ分野への支援は大変重要だと認識しており、開発協力大綱においても、重点課題の一部である、人々の基礎的生活を支える人間中心の開発を推進するために必要な支援の分野の一つとして掲げている。外務省としても、SFTの柱の一つであるスポーツを通じた国際協力及び交流をしっかり推進して、東京オリンピック・パラリンピックの開催と成功に向けて、スポーツ分野の支援を一層推進していかなければならないと考えるとの御答弁をいただきました。

次に、途上国に対するスポーツ振興支援の取組に関しては、スポーツ庁の予算におきまして、スポーツ・フォー・トゥモロー等推進プログラムの一部として、戦略的二国間スポーツ国際貢献事業が設けられており、この事業はJICAと協力し、学校体育カリキュラム等の策定支援、そして途上国のスポーツ環境の整備、さらにはスポーツイベントの開催支援などを行っていることに触れながら、平成28年度予算を見てみますと、2億6300万円が計上されていますが、具体的な支援内容としては、外務省の無償資金協力による施設整備や機材の供与、そして指導者の派遣、招聘などの技術協力、さらにはJICAボランティアなどにより実施されているという現況を指摘したうえで、ODAによる途上国へのスポーツ振興支援の取組は現況どのようなものかについて伺いました。

外務省からは、JICA、国際交流基金との協力の下に、ODAを用いて様々な協力を進めてきており、幾つか例を申し上げると、まず2014年1月にスポーツ・フォー・トゥモローの第一号案件として、我が国のNPO法人と協力しながら、安倍総理からコートジボアールの柔道・武道連盟に柔道着100着を手渡ししたり、ペルーに派遣されたシニア海外ボランティアの方が現地で障害者スポーツプロジェクトを立ち上げ、同プロジェクトの一環として、短期ボランティアとして派遣された学生の方々と一緒に障害者スポーツに関する講習、スポーツ大会を開催した例もあるし、さらに、草の根文化無償資金協力により、エクアドル国内の2つの野球場のフェンスや芝生の整備を行った例など、たくさんの例が既にあるとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、コートジボアールへの柔道着の提供については、柔道界でもニュースになっており、今後もそうした取組により、スポーツをする方の増加等につなげてほしい旨を述べました。また、JICA北海道の主催により札幌で、スポーツ国際協力の意義や幅の広さ、そしてスポーツがなせる可能性の大きさについて考えるという機会として、スポーツフォーラムが開催され、スポーツで創る平和と未来というテーマでJICAボランティアの方々によるパネルディスカッション等が行われたことに触れ、国民の皆さんにも、国によるスポーツ支援が今どのように行われているのかということを御理解いただくという意味で、今後こうした取組を日本各地で是非開催していただきたいということをお願いしました。

次に、オリンピック・パラリンピック参加国の増加についてということで、オリンピック・パラリンピックへの参加は、人づくり、国づくりの点で大きな意義があり、我が国が目指す人間の安全保障の実現に寄与するものであると確信している旨を述べたうえで、開発協力の観点からも、世界のできるだけ多くの国々の選手たちが2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会、さらにはこれからの大会に参加できるように、我が国のODAによる更なる支援、そして予算額を拡充していくべきという考えについて、岸田大臣の御所見を伺いました。

岸田大臣からは、外務省としては、SFTプログラムの中に3本の柱があるが、そのうちの1つである、スポーツを通じた国際協力及び交流の推進に特に取り組んでいるところであり、既に2014年から昨年9月までの間に80万人以上を対象に協力を実施したところであり、開発協力大綱においても、スポーツ分野への支援は重視されている。引き続き、SFTの公約の達成に向けたODAによる支援にしっかり取り組んでいきたいと考えており、厳しい財政状況ではあるが、必要な予算はしっかり確保するという思いで努力をしていきたいとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、大臣から、必要な財源は確保していくという大変力強いお言葉をいただきましたので、今後も是非頑張っていただきたいと申し上げ、質疑を終えました。


法務及び司法行政等に関する質疑

2016年3月10日(木)

  • 法務委員会質疑4
  • 法務委員会質疑2

法務委員会が開催され、岩城法務大臣による大臣所信に関して質疑を行いました。

冒頭、岩城大臣が、昨年10月に第3次安倍改造内閣の発足に伴い、法務大臣に就任されたこと、また大臣は、いわき市長を2期務められ、地方自治にも精通されているとともに、第1次安倍改造内閣では内閣官房副長官、そして参議院の議院運営委員長等の要職を歴任されていることに触れつつ、また、翌11日で発災から五年目を迎える東日本大震災の被災地復興に尽力されていることについて、心から敬意を表しました。

そして岩城大臣は大臣就任時に、安倍総理から法務行政の課題としての指示を受けたこと、すなわちそれは、1つ目に、司法制度改革の推進、2つ目に、きめ細やかな人権救済の推進、3つ目に、世界一安全な国日本をつくるため、犯罪被害者の支援、そして刑務所等出所者の再犯防止や社会復帰支援、組織犯罪対策など、社会を明るくしていくための施策の総合的な推進、そして4つ目に、我が国の領土、領海、領空の警戒警備について関係大臣と緊密に連携して情報収集を行うとともに、事態に応じて我が国の法令に基づき適切に対処するとの内容であったことについて触れました。

そこで、岩城大臣は就任以降、法務行政を推進されていますが、法秩序の維持、そして国民の権利擁護を通じて、国民生活の安全、安心を守るための法的基盤の整備という重大な使命を帯びている法務行政のトップとして、今後、これをどのように推進していこうと考えておられるのか、その課題と展望について伺いました。

岩城大臣からは、それぞれの地域ごとに法務行政の実情あるいは法務行政への期待も異なるものであるので、これらをまずしっかりと把握し、国民の皆様にとってより身近で頼りがいのある法務行政を目指していきたいと考えている。これは、法務大臣就任以来、私が繰り返し申し上げてきたところでもある。また、法務行政は非常に多くの、そして様々な分野の民間の方々のお力や地方自治体の御協力に支えられていることに感謝申し上げ、一層そのことを大事に思い、協力関係をより広め、深めていきたいと考えている。そして、こうした民間のボランティア的な活動に携わっている方々の後継者が育っていくような環境を整えていくことが自分の使命でもあると思っている。こうした思いの下、これまで各地の規模の大きなところから小さなところまで、機関あるいは現場、そういった施設などを視察し、職員や民間協力者の方々、あるいは首長を始めとする地方公共団体の方々と意見交換を行い、様々な御意見をいただいた。例えば、被災地の皆様方からは、住宅再建、町づくりの前提となる登記所備付け地図の作成や、風評に基づく差別的取扱いなどの人権問題への対応を期待する声を伺った。また、空海港を有する地方公共団体からは、急激にその数を増している訪日外国人を安全かつ円滑に受け入れるための人的、物的基盤の整備を求める声もあった。また、再犯防止に取り組んでおられる民間の協力者の方々からは、更なる支援の強化を含め、国との一層緊密な連携を図ってほしいという御要望もいただいている。こうしたことから、法務省が国民の皆様方から多くの期待を寄せられていることを改めて実感したので、その期待にしっかりと応えていかなければいけないという思いを一層強くしたところである。今後も、所信で申し上げたことを迅速、確実に実践し、国民の皆様にとって安全、安心な生活を守る基盤を確固たるものにするために努めてまいりたいと考えているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、やはり法務行政は多岐にわたる諸課題が多くあるため、岩城大臣におかれては大臣就任後、積極的に視察等も行われていますが、先程触れた総理からの指示は国民生活にとって大変重要な課題ばかりですので、法務行政のトップとして、是非その先頭に立って、より良い方向に向けていっていただきたいとの旨を述べさせていただきました。

次に、厳格な水際対策の徹底と円滑な入国審査の両立の現状と課題についてということでまず、政府は、現在、訪日外国人旅行者数を2020年に2千万人にする目標を掲げていますが、2015年の外国人旅行者数は9月中旬には昨年実績の1341万人を上回り、年間総数では1973万人を超え、2千万人に迫る勢いで、過去最多であった昨年を約632万4千人、率にして47.1%も上回った現況であることに触れました。そして、このように2020年を待たずにその目標達成が確実となったために、新たな目標が必要だと判断され、昨年10下旬、官房長官が講演の中で、外国人旅行者の誘致について、首相を議長に、新たな目標に向かって進む態勢を近いうちにつくりたいとの考えを明らかにされた翌11月には総理を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」が設置され、新たな目標設定に向けての検討が進められているいうこと、また、観光庁のまとめでは、外国人が旅行中に日本国内で使ったお金も、前年が約1兆4493億円であったものが約3兆4771億円に増加し、初めて3兆円を超えて過去最高となったことについても触れながら、外国人観光客の経済効果は大変大きいことから、外国人観光客を増やしつつ、また、テロリスト等の入国を防ぐため、国際空港・港湾等において法務省の入国管理局が、出入国審査等の水際対策を的確に推進していくことがテロ等への脅威に対する重要な役割を果たせるとの思いを述べました。そこで、港湾等における出入国審査における現状と課題について、訪日クルーズ客増加に対応するため、2014年には改正入国管理法が成立・公布され、クルーズ船の外国人乗客に係る入国審査手続の円滑化のための措置が昨年1月1日から施行され、約1年が経過しましたが、港湾における入国審査の現状について伺いました。

法務省からは、2014年の入管法改正において、法務大臣が指定するクルーズ船の外国人乗客を対象として、個人識別情報の取得や外国人入国記録、いわゆるEDカードの記載内容を簡素化するなど、簡易な手続で上陸を認める船舶観光上陸の許可制度を創設し、これが昨年1月1日から施行され、運用がちょうど1年以上たったところで、昨年1年間におけるクルーズ船による外国人の入国者総数は約111万6千人である。このうち約96%に当たる約107万2千人は、創設した船舶観光上陸許可によって入国しており、運用開始から1年で実に多くの方々に利用していただいている現状である。その結果、審査時間がどのように変わったかということであるが、クルーズ船の入港が最も多いのは博多港で、そちらで少し調べたところを例に挙げると、2014年までは、乗客数が約1600人の船舶の場合におおむね150分程度の審査時間を要していたが、新制度を運用した2015年中では、乗客数がそれより多い約2400人くらいの船舶の場合でもおおむね80分程度で審査を終了するなど、以前と比較しても審査時間が大幅に減少しているところであるとの御答弁をいただきました。

次に、昨年の外国船クルーズの寄港回数のランキングでは、1位が博多港の245回、2位が長崎港の128回、三位が那覇港の105回、4位が石垣港の79回、そして5位が鹿児島港の51回と、九州、沖縄の港が上位五港を占める結果となったことに触れ、このように寄港回数が九州、沖縄に集中しているのは中国発のツアーの多さからのようだと伺いましたが、更に新たな航路が開かれれば、地方の港への寄港も始まるでしょうし、クルーズ船の大型化により、港の施設の整備も必要となってくる旨を述べました。そして、「観光立国に向けたアクション・プログラム2015」では、クルーズ100万人時代実現のための受入環境の改善が掲げられていましたし、クルーズ船による外国人観光客は今後ますます増加していくものと考えられることから、港湾からの入国、日本への入国時における検疫、そして入国審査、また動物検疫、植物検疫、税関検査がどのように行われているのかについて、空港においては検疫から税関検査までの手続が一連の流れとして行われていますが、港湾から日本に入国する場合では、港湾にターミナルがある場合とない場合のケースがあり、それぞれどのような入国審査等が行われているのか、港湾にターミナルがない場合には船の中に乗り込んで入国審査等が行われているとも伺っていますが、その場合、空港からの入国時と同じように、検疫、また入国審査、そして動物、植物の検疫、さらには税関等がきちんと行われているのかということについて、関係省からの説明を求めました。

法務省からは、御指摘のように、海の港、海港というが、その場合、専用の旅客ターミナルのあるところとないところがあり、まず、旅客ターミナルが設置されている港については、ターミナルの中に上陸審査場があり、そこには審査用のブースが設置されており、これは空港と同じようなものである。そのブースの中に設置された機器を用い、順番としては、検疫の方を通ってこられたお客様から空港と同じように上陸許可の申請を受けて、同じように審査をしてお通りいただいているということになる。旅客ターミナルがない場合、実は旅客ターミナルがあってもクルーズ船が大き過ぎて遠くに着くような場合もあり、要するに旅客ターミナルが使えない場合という意味になるが、この場合には、入国審査官が船内の適当な場所をお借りして、そこに携帯、持ち運びできる審査用の端末を臨時に置いて、言わば臨時の審査用のカウンターをつくるわけであり、それができるともうあとは同じで、検疫の方を終わられたお客様がいらっしゃって通常の審査をしていくということになるので、基本的には空港でも海港でも、審査をする場所に若干の違いはあるが、審査の内容や手順は同じことになっているとの御答弁をいただきました。

次に、厚生労働省からは、検疫の扱いについては、クルーズ船が着くと、まず検疫官が乗船して、症状のある方がいらっしゃるかどうかということの聞き取りを行う。しかし、その上で、ターミナルがある港ではターミナル、それからターミナルがない港あるいは船内で行う場合は、船内でサーモグラフィーの前を通っていただいて体温測定をし、それから検疫官の呼びかけ、それからあとは必要に応じて問診や検査を行うということであるとの御答弁をいただきました。

次に、農林水産省からは、動植物の検疫については、畜産物あるいは植物等を所持されている方は、入国審査の後に速やかに申し出ていただくということになる。そして、現物とか書類のチェック等の検査を行うわけだが、検査の場所については、ターミナル等が設置されていればもちろんそこで、設置されていない場合には、検疫官が船に乗り込み、そこで適切に実施しているところであるとの御答弁をいただきました。

次に、財務省からは、税関においても、入国審査が終了した旅客の皆様に対して、客船ターミナルの検査ブースがある場合には、迅速な通関を確保しながら、不正薬物やテロ関連物資などの密輸阻止のために必要な検査を実施しているところあり、こうした流れは、船内で検査を実施する場合にも同様であるとの御答弁をいただきました。

これらの答弁に対しまして、報道等を見て、こうした外国人観光客がクルーズ船から降りてきてすぐにバスに乗り込み、そしてすぐ観光へ向かうというようですがというようなお声や、きちんと、船から降りてきて入国審査は済まされているのだろうか、しているのだろうかというようなお声をたくさん伺ったので、この機会に質問させていただいた旨を述べました。そして、こうした一連の手続または審査というのは、テロの脅威への対策又はテロだけではなく、ジカ熱やエボラ出血熱等の感染症対策として感染者が我が国への入国を未然に防止していくためにも、これは船内、ターミナルにおいてもしっかりと行われるべきものである旨も併せて述べました。

次に、今後、クルーズ船による外国人観光客の増加に対し、法務省としてどのような対策を考えておられるのかについて伺いました。

法務省からは、クルーズ船がだんだん大型化し、入港の回数も増えていることから、多くの審査官をここに充てて、円滑にかつ確実な審査を行っておくことが重要だと思っているが、クルーズ船の場合には定期的に入ってこないということと、1回当たり3千人、4千人の規模もあり、これは、飛行機10機、20機分が一遍に来るということでもあるので、一遍に大量の審査官を投入する、しかも常設に置いておけないので、結局、応援派遣をうまく機動的に回すということの対応になってくる。そのような意味で、2013年には既に福岡入管局に17人、2014年度には東京入管局に6人、これは全国的に機動的に応援で回せる人員の確保、増員の措置を得ている。また、本年度においては、年度途中、昨年7月に入国審査官35人の緊急増員をいただいたが、そのうち福岡入管局に配置した10人が、これはクルーズ船への対応も含めた地方空海港に機動的に派遣する要員ということで付けていただいている。さらに、2016年度政府予算案においては、特に沖縄地域に入港するクルーズ船対応を中心に考え、那覇支局の方に10人の増員を計上している。法務省としては、今後とも、クルーズ船による訪日外国人旅行者数の推移を踏まえつつ、入出港に合わせて機動的に審査要員を派遣する体制を整備し、クルーズ船乗客に対する円滑と厳格を両立させた出入国審査に努めてまいりたいと考えているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、外国人観光客の急増に対応するために、入国審査官の増員が図られておりますが、外国人観光客の急増には追い付いていないのではないかと思っている旨を述べました。そして例として、昨年8月に、広島港五日市埠頭にクルーズ船の乗客約4千人が上陸した際に、広島入管は5県の審査官約28人を集めて対応しましたが、審査終了までに約2時間半掛かったということがあり、クルーズ船の滞在時間は10時間程度というのが多く、観光消費のある商店などからは、円滑な入国を望む声が大変強く出されたという事例を挙げました。

次に、2015年度に引き続き2016年度も、入国審査官は増員される方向ですが、人的体制の整備だけではなく、例えば公海上の外国籍船舶内での臨船審査を行うことなどの方策等について検討を行うべきだと思いますが、これに対する所見を伺いました。

法務省からは、待ち受けて審査するだけだとどうしても限界がある場合もあるので、あらかじめ審査官を外国の出発地に派遣して、クルーズ船に乗り込んで公海上で個人識別情報の提供を受けるなど、日本に来てから行う審査の一部を事前的に準備的なことを船の上でやるという海外臨船審査の実施に向けて準備をしているところであり、具体的に申し上げると、公海上とはいえ外国籍のクルーズ船内においてそのような準備作業を行うということから、その船籍国の方の同意を得るという必要があろうということで、その同意を求める手続を順次進めているところである。そして現在、既に一部の国からはそれに同意する旨を受けているので、まずはそれら船籍国のクルーズ船から海外臨船審査を行えるよう、船会社等との協議を進めてまいりたいと思っているとの御答弁をいただきました。

この答弁に対しまして、現状は日本の港に着いてから審査官が搭乗していくというような形が取られていますが、実際に外国の港に行って、そこから入国審査官の方たちが搭乗されて、そこから入国審査等を行っていくというような方法が検討されているということであり、そうなると、非常に大変なことであると思いますが、船籍国の同意を得るという意味では、お互いの国がこうしたテロ等への脅威に対して、より良い方向に向かうということが第一であると思うので、積極的な推進と、より良い方向に向けていっていただきたいということをお願い申し上げ、他にも質問通告させていただいておりましたが、時間となったので、今回の質疑を終えました。